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名録音を聴く~今週の一枚(最新の20件)

名録音を聴く~今週の一枚(一覧表示)



レスピーギ:ローマの松

フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1959年10月24日録音

未だ暗さから抜けきっていない薄明かりの中を静かに行軍するローマ軍団の凄みが最弱音の世界で描かれ、そこにやがて朝の光が差しむとそのローマ軍団の甲冑が黄金に燦然と輝く場面への転換の見事さは「まあ聞いてください」と言うしかありません。
そして、このクオリティが、ほとんど一発録りに近い形で実現しているところに、このコンビの恐るべき実力を見せつけられる思いがします。


ラヴェル:ボレロ

ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1956年1月23日録音

この56年録音のリビング・ステレオは楽器の響きをクリアにとらえていて素晴らしいのですが、曲の冒頭と最後のクライマックスとの間のダイナミックレンジは比較的狭めに設定されているようです。
オーディオマニアには物足りないかもしれませんが、一般家庭のオーディオ機器では、このくらいの設定の方が気持ちよく音楽が聴けるのではないでしょうか。


シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 op.43

ポール・パレー指揮 デトロイト交響楽団 959年1月17日録音

作曲家でもあったフルトヴェングラーは他人の作品であっても、それを自分が納得がいくように自由に操って見せました。それに対して、、同じく作曲家でもあったパレーは作品に対して「指揮者は余計なことはするな!」というスタンスを取り続けていました。
しかし、パレーはフルトヴェングラー的なものとは真逆の位置で突っ切っる事で怖ろしいまでのパワーに満ちた音楽が存在出来ることを彼は証明して見せました。
この作品でいつも問題となるのは最終楽章の構成の弱さなのですが、パレーはシベリウスを疑うことなくシベリウスが成し遂げようとした「交響的営み」を実現することに全力を傾注します。そう言うパレーのチャレンジをマーキュリーの録音は見事にとらえきっています。


プロコフィエフ:ヴァイオリン協奏曲第2番 ト短調 Op.63

(Vn)ヤッシャ・ハイフェッツ:シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1959年2月23~25日録音

ヴァイオリン演奏に関しては何も言うことはないでしょう。そこには、この作品に必要な完璧な美しが存在するだけであり、その「美」をこの録音は見事にとらえきっています。もちろん、それを支えるミンシュの指揮とボストン響の伴奏は、陳腐な言い回しで申し訳ないのですがまさに「自家薬籠中」のものだと言うしかないほどに見事なものです。


R.コルサコフ:交響組曲「シェエラザード」 作品35

フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1960年2月8日録音

この録音は明らかにライナーの意志と言うよりはレーベル(RCA)側の意向で実現したものと見るべきでしょう。それでは、そのレーベルの意向とは何かと言えば、おそらくはステレオ盤の魅力を世に広めるための「広告塔」として、つまりは「Living Stereo」シリーズの「目玉」として、このコンビによる「シェエラザード」が必要だったのでしょう。
ですから、録音のクオリティに関しては何の文句もつけようがありません。


ムソソルグスキー:展覧会の絵(ラヴェル編曲)

フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1957年12月7日録音

シカゴ交響楽団と言えば、なんと言っても金管楽器群のパワーが特筆されます。これは、彼らの本拠地であるオーケストラホールの残響が極めて短く、その短所を補うためにやむなく「強力」になったという言い伝えもあるのですが、トランペットの「アドルフ・ハーセス」に代表されるような名手がずらりと並んでいます。このブラスセクションの威力は「展覧会の絵」のような作品だと、たっぷりと堪能することができます。


ムソルグスキー:交響詩「禿山の一夜」

ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1962年録音

この録音はRCAからリリースされたのですが実際に録音に携わったのはDeccaの録音陣であり、エンジニアはケネス・ウィルキンソン(Kenneth Wilkinson)だったのです。そして、数多くの優秀録音を残したウィルキンソンにとっても、このレイホヴィッツとの録音はとびきり優秀な一枚だったのです。そして、そう言う極めつけの優秀録音が生み出す迫力のあるオーケストラの響きゆえに「The Power Of The Orchestra」というタイトルが閃いたのかもしれません。まさにオーディオ・マニア御用達の録音です。


マーラー:交響曲第4番 ト長調

クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団 (S)エリーザベト・シュヴァルツコップ 1961年4月録音

マーラー自身が思い描いていたであろう音楽の世界とは全く異質な世界であることも事実です。しかし、作品というものは創作者の手を離れてしまえば一人歩きを始めます。
おそらく、マーラーは想像もしなかったと思うのですが、この古典的均衡をもって構築された交響曲は、それはそれなりに立派なものです。そして、自然な響きを的確に捉えたEMIの録音はバルビローリの第9番の録音に通じていく原型がこの時期からすでにあったことを証明しています。


エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 作品38

(Cello)ジャクリーヌ・デュ・プレ:ジョン・バルビローリ指揮 ロンドン交響楽団 1965年8月19日録音

演奏に関しては今さら何も付け加える必要もないほどに有名な録音です。しかし、意外とふれられないのは録音の優秀さです。
EMIの録音はあまり宜しくないというのはオーディオ・マニアの間では「通説」になっているのですが、それはEMIの録音にはオーディオ。マニアを喜ばせるような様相が少ないからなのでしょう。しかし、この録音はこの極上の自然さがそのままバルビローリとデュ・プレの演奏の素晴らしさを再現するために貢献しています。音楽ソフトというものは録音の素晴らしさではなくて音楽の素晴らしさを伝える事が目的なのですから、これこそがもっとも理想的な「録音」の姿かも知れないのです。


ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 作品88

イシュトヴァン・ケルテス指揮 ロンドン交響楽団 1963年2月22日~26日録音

このケルテスの演奏はドヴォルザークのスコアが語りかけるものを大切にすることで、シンフォニストとしてのドヴォルザークを聞き手に提示してくれます。そして、そのケルテスの意志は「実演」ではあり得ないような「鮮明」さを追求する「Decca」録音によって大きな恩恵を受けているように思えます。


バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽, Sz.106

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1960年11月9日~11日録音

ともすれば鋭角的で厳しい表情になりがちなバルトークの作品を、ある意味では妖艶ささえ感じる表情で仕上げているあたりはさすがはカラヤンです。そして、そう言う演奏を捉えた録音なのですが、録音会場となったベルリンのグリューネヴァルト教会の空間情報を自然な形で誇張なく拾い上げています。
EMIはオーディオマニアからは「音が悪い」と烙印を押されてきました。それだけに、左右だけでなく前後上下に音場がひろがり、その三次元空間の中にキッチリと打楽器群が定位する生々しさは、「いったいどうしたんだ!」と言いたくなるほどの見事さです。また、その空間上にかっちりと定位した打楽器の生々しさも特筆ものです。
さらに、低弦楽器のお腹にずしりと響く力強さも遠慮なくおさめられています。


ベートーベン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 作品37

バーンスタイン指揮 (P)グレン・グールド コロンビア交響楽団 1959年5月4日録音

バーンスタインという指揮者を一つの触媒として、あれこれのピアニストを聞き比べてみるのはなかなかに知的興奮を引き起こしてくれます。
同じ若手でも、行儀良くバーンスタインの指揮下に収まっていたアントルモンやグラフマン、同じ若手でも最後は喧嘩別れしたグールド、そして19世紀の余光をまとったゼルキンの偉大さ!!
ただし、録音的にはこのグールドと組んだものが最も優れているのは、バーンスタインにとっては皮肉な結果となっているのかもしれません。


バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽, Sz.106

フリッツ・ライナー指揮 シカゴ交響楽団 1958年12月28日~29日録音

ライナーの演奏はハンガリーの「民族性」のようなものとは遠く離れたところで成り立っているように聞こえます。この「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽」の精緻な表現はこの時代における一つの到達点と言ってもいいほどの優れものです。
そして、その精緻さをこの優秀録音は十全にすくい上げています。そして、その優秀さは、この演奏が蒸留水のようなものになってしまう愚に陥っていないことを、言葉をかえれば、同じ民族性を持った人にしか表現できないようなものを音楽の奥底に沈めている事も明らかにしています。


ヤナーチェク:シンフォニエッタ

ジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1965年10月15日録音

この録音は「Columbia」がプロモーション用のLPという形でバルトークの「管弦楽のための協奏曲」とカップリングして販売店に配布されました。
おそらくは、録音のステレオ化に後れをとった「Columbia」が、自らのステレオ録音の優秀さをアピールするのが目的だったのでしょう。
一般的にセル&クルーブランド感の録音は今ひとつパッとしないと言われるのですが、なかなかどうして、これは実に見事な録音クオリティを誇っています。そして、このコンビの録音が硬くて冷たいと言われた原因の多くが粗悪な国内盤に起因していた事に思い至らせてくれる録音でもあります。


グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16

(P)アルトゥール・ルービンシュタイン:アルフレッド・ウォーレンステイン指揮 RCAビクター交響楽団 1956年2月11日録音

この演奏を聴いていて感じたのは、やはりルービンシュタインというのは現場型の人だという思いです。
例えば、アラウのように叙情を精緻に積み重ねて情念に至るとすれば、ルービンシュタインはそんな悠長なことはしていません。いや、そんな悠長なことをしてれば聴衆は厭きてしまうかもしれません。
ですから、彼は直裁にピアノの響きに情念を込めます。おそらく、それがこの時代のアメリカなのでしょう。
演奏そのものには色々意見はあるかもしれませんが、そういうにピアノの響きに情念を込めたルービンシュタインの素晴らしい響きは見事に収録されています。この時代の録音としては極上の部類にはいるでしょう。


ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 作品26

Vn.ハイフェッツ サー・マルコム・サージェント指揮 ロンドン新交響楽団 1961年5月14日&16日録音

厳密に聞けば、このブルッフの協奏曲に関しては50年代の録音の方がハイフェッツらしいのでしょうが、それでも10年後のこの録音もまたハイフェッツ以外の何物でもありません。そうなると、ステレオ録音のメリットの方が大きいと言うことで、さらにそれが極めて優秀な録音だと言うこともあって、これがハイフェッツの代表盤と言わざるを得ないでしょう。ちなみに、同じ顔ぶれで録音したスコットランド幻想曲も素晴らしい演奏と録音です。


ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15

(P)カーゾン セル指揮 ロンドン交響楽団 1962年5月30日~6月1日録音

カルーショーはどこかで、「カーゾンの繊細な音の素晴らしさを録音でとらえるのは空を飛ぶ鳥をつかまえるより難しい」と語っていたそうです。伝え聞くところによると、この録音の時のセルとカーゾンの関係は最悪だったそうで、プロデューサーのカルーショーもかなり気をもんだとのことです。
しかしながら、出来上がった演奏と録音は最高のできばえというのですから、本当に音楽というものは、そして、とりわけコンチェルトというカテゴリは不思議なものです。


グリーグ:ピアノ協奏曲 イ短調 作品16

(P)アルトゥール・ルービンシュタイン:アルフレッド・ウォーレンステイン指揮 RCAビクター交響楽団 1961年3月10日録音

音楽的に言えば、あまりにも逞しいルービンシュタインのピアノは、北欧のリリシズムが欲しいリーグの音楽とはどこかそぐわない感じはあるのですが、録音としては見事な形に仕上がっています。
ピアノとオケがそれぞれに十全に鳴りきりながら、尚かつ両者が絶妙なバランスを実現しています。
60年代初頭のRCA録音ですから、基本的には最小限のマイクセッティングで録音されているはずです。ですから、ここで聞くことのできるバランスは、まさにスタジオにおいて鳴り響いていた物を見事なまでにすくい上げた物なのです。


コダーイ:「ハーリ・ヤーノシュ」組曲

アンタル・ドラティ指揮 ミネアポリス交響楽団 (ツィンバロン)トーニ・コーヴェス 1956年11月録音

コザートたちの録音に「低域がどこまで延びているか」とか、「ダイナミックレンジがどうだ」のと言うことは不要とは思うのですが、それでも最も多彩なオーケストレーションが施された第6曲の「皇帝と廷臣たちの入場」の迫力には素晴らしいものがありますし、最後の最後のとどめのように振り下ろされるバスドラムの一撃も見事なものです。
その辺りも、己の再生システムの立ち位置をはかる上では意味のある部分だといえるかもしれません。


ベートーベン:ヴァイオリンソナタ 第9番 イ長調「クロイツェル」 Op.47

(Vn)ジノ・フランチェスカッティ (P)ロベール・カサドシュ 1958年5月12日~14日録音

フランチェスカッティの美音がたっぷり楽しめる録音なのですが、カサドシュのピアノも芯まで鳴りきっています。
しかし、何よりも素晴らしいのは、そのその二人のやり取りがまるで目の前で演じられていたかのごとき音場空間が実現されていることです。これが1958年の録音なのですから驚いてしまいます。
オーディオをやるものにとっては、この程度の編成の音楽ならば実演とニアイコールの世界を生み出したいと願うものですが、その願いを叶えるために挑戦する甲斐の録音だといえます。





[2020-06-05]

ガーシュイン:ラプソディー・イン・ブルー
(P)ユージン・リスト:ハワード・ハンソン指揮 イーストマン=ロチェスター・オーケストラ 1957年5月録音

[2020-06-04]

ベートーベン:交響曲第6番ヘ長調 作品68「田園」
クレメンス・クラウス指揮:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1952年3月29日録音

[2020-06-03]

ハイドン:交響曲第92番 ト長調「オックスフォード」
マックス・ゴバーマン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1960年~1962年録音

[2020-06-02]

プシホダ小品集
(Vn)ヴァーシャ・プシホダ:(P)シャルル・セルネ、(P)イツコ・オルロヴェツキー 1924年~1957年録音

[2020-06-01]

モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番ハ短調 , K.491
(P)リリー・クラウス:スティーヴン・サイモン指揮 ウィーン音楽祭管弦楽団 1965年5月13日~15日録音

[2020-05-31]

ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 Op. 115
(Cl)レジナルド・ケル:ブッシュ四重奏団 1937年10月10日録音

[2020-05-30]

ウェーバー:舞踏への勧誘 op.65 (バレエとしては「薔薇の精」というタイトル)
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:フィルハーモニア管弦楽団 1954年3月3日録音(ディアギレフへのオマージュ)

[2020-05-30]

ドビュッシー:「牧神の午後への前奏曲」
イーゴリ・マルケヴィチ指揮:フィルハーモニア管弦楽団 1954年6月3日録音(ディアギレフへのオマージュ)

[2020-05-29]

ハイドン:交響曲第60番 ハ長調「うかつ者」 Hob.I:60
マックス・ゴバーマン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1960年~1962年録音

[2020-05-28]

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第5番 ト長調 Op.55
(P)スヴャトスラフ・リヒテル:ヴィトールド・ロヴィツキ指揮 ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団 1958年9月録音