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シャルル=マリー・ヴィドール:オルガン交響曲より第6番「Allegro」&第2番「Salve Regina」

(Org)マルセル・デュプレ 1957年10月録音



Widor:Organ Symphony No.2, Op.13 No.2 [4.Scherzo (Salve Regina)]

Widor:Organ Symphony No.6, Op.42 No.2 [1.Allegro]


ロマンティック・オルガンの機能を最大限に活用した空前絶後の音楽

「シャルル=マリー・ヴィドール」はフランスのオルガン奏者であり作曲家でもあったのですが、その名前を記憶している人は殆どいないのではないでしょうか。私もまた「マルセル・デュプレ」の録音を調べているときに初めてであった名前でした。
しかし、聞くところによると、彼のオルガン交響曲第5番の終楽章はヨーロッパの結婚式では定番のように使われるので、そのライン上に置いてけっこう多くの人に知られているそうです。
いってみれば、結婚行進曲でワーグナーやメンデルスゾーンの名前に出会うようなものでしょうか。

ヴィドールはオルガン製作を業とする一族に生まれ、幼い頃からその演奏の才能は際だっていたようです。
1863年にブリュッセル音楽院に留学し、その翌年には生まれ育ったリヨンに戻ってしまうのですが、既に超絶技巧を披露するオルガニストとしての腕前を獲得していました。そして、その名声はあっという間に広がり、ロッシーニ、マイヤベーア、リスト、サン=サーンス、フランクらと親交を結ぶとともに、1870年には、わずか25歳でサン・シュルピス教会の終身オルガニストに就任します。

ヴィドールは、それ以後64年もの長きにわたってこの地位にとどまり続け、彼の音楽活動の拠点となります。
そして、その事が彼の代表作となる「オルガン交響曲」を生み出す契機となりました。

この「オルガン交響曲」というのは基本的にはオルガン独奏による「オルガン・ソナタ」なのですが、より多彩な音色で交響的な響きを追求した作品に対して「交響曲」という名前がつけられるようになりました。
そして、そう言うオルガン作品が生み出された背景にはより多彩な音色が可能となった「ロマンティック・オルガン」の登場があげられます。

一般的にオルガンの鍵盤は強く押そうが弱く押そうが、ピアノのようにその事によって音量や音色が変化するものではありません。ですから、通常はきわめてモノトーンな感じの音楽になってしまいます。
そこで、それではつまらないと言うことで追加されたのが「ストップ」と呼ばれる演奏用の補助装置です。

オルガンはこの「ストップ」によって音の厚みを増すことで強弱の差を表現できるようになったのです。つまり、オルガンにおける音の強弱の差というものは基本的には音を足していく事によって実現しています。
さらに、スエル扉と呼ばれるものを開け閉めすることで音を小さくするという機能も追加されていきました。
つまりは、オルガン演奏というのは鍵盤を押すだけでなく、そう言う「ストップ」や「扉」なども操作しながら行う必要があるのです。

そして、より幅広い表現を求めて様々な「ストップ」が追加されていくようになるのですが、その終着点に位置するのが「ロマンティック・オルガン」と呼ばれるタイプのオルガンでした。
そこでは、ただ単に音量を増加するだけでなく、音色を混ぜ合わせる事で新しい音をつくったり、倍音を組み合わせる事が出来たり、果ては一つの鍵盤を押すだけで5つの音が出るようなものまで装備されていきました。

まさに「一人オーケストラ」みたいな楽器になっていったのですが、その最大規模を誇ったオルガンこそがヴィドールが終身オルガニストをつとめたサン・シュルピス教会のオルガンだったのです。
そのオルガンには100前後のストップが装備されていて、それはもう航空機のコックピットのような雰囲気になっていました。

その巨大なオルガンを自由に演奏するにはヴィドールのような超絶技巧が必要だったわけです。
そして、ヴィドールもまたその様なオルガンの機能を最大限に発揮できるような作品として10曲の「オルガン交響曲」を生み出したわけです。

10曲あるオルガン交響曲の中では第5番がもっとも多くの人の耳に馴染んでいるようなのですが、ロマンティック・オルガンの機能を最大限に使い切って、もはや人間技とは思えないような世界を実現したのは第6番のオルガン交響曲です。
ヴィドールはバッハの音楽をフランスに紹介するために力を尽くした音楽家でもあったので、その音楽はまさにバロック音楽を思わせるような雰囲気を持っているのですが、その巨大さはまさに人間世界の常識をこえるような巨大さを持っています。


とびきり優秀な録音によって空前絶後とも言うべきヴィドールの音楽を再現

ヴィドールは晩年になると教育活動に熱を入れ、とりわけパリ音楽院で教えたダリユス・ミヨーやマルセル・デュプレなどが特に有名です。特に、マルセル・デュプレはサン・シュルピス教会のオルガニストにも就任していますから、フランク、ヴィドールと受け継がれてきたフランスのオルガン演奏のもっとも正当な後継者とも言うべき存在です。

そんなマルセル・デュプレが50年代から60年代にかけてMercuryレーベルでまとまった録音を残しているのは実に幸運なことでした。
その中でも特に、彼の師であるヴィドールの作品を残してくれたのは実に有り難いことでした。それがたとえ、オルガン交響曲の第2番の第4楽章(Salve Regina )と第6番の第1楽章(Allegro)という中途半端な形であっても、そのとびきり優秀な録音によって空前絶後とも言うべきヴィドールの音楽のを再現してくれたのは有り難い話だったのです。

ただし、それを再生するのはオーディオ的にはとんでもない難物であることは言うまでもありません。
特にオルガン交響曲第6番のAllegroのとんでもない巨大さをものの見事に収録したMercury盤は「TAS Super LP List」において毎回最優秀盤を示す「BEST OF THE BUNCH」にリストアップされています。選ばれているアナログ・レコードのカタログ番号は「Mercury SR-90169」なっていますから、いわゆる「初期盤LP」と言うことになります。

このアナログ・レコードに収録され言えるのは以下の作品で、その中でこの「Allegro」だけを「BEST OF THE BUNCH」にリストアップしているというのがこのリストの辛いところでしょう。


  1. Charles-Marie Widor:Allegro (Organ Symphony No.6, Op.42)

  2. Charles-Marie Widor:Salve Regina(Organ Symphony No.2, Op.13)

  3. Marcel Dupre:Prelude And Fugue In G Minor, Op.7

  4. Marcel Dupre:Tryptique, Op.51



しかし、別のところでも書いたのですが、復刻盤のCDであってもその録音の凄さは十分に味わえます。難物ではあるのですが、チャレンジするには十分な相手だと言えます。

この演奏を評価してください。

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2023-07-19:大串富史





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