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ワルター(Bruno Walter)|ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
ベートーベン:交響曲第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
ブルーノ・ワルター指揮 コロンビア交響楽団 1958年1月13日,15日,17日録音
Beethoven:交響曲第6番 「田園」 ヘ長調 作品68 「第1楽章」
Beethoven:交響曲第6番 「田園」 ヘ長調 作品68 「第2楽章」
Beethoven:交響曲第6番 「田園」 ヘ長調 作品68 「第3~5楽章」
標題付きの交響曲
よく知られているように、この作品にはベートーベン自身による標題がつけられています。
第1楽章:「田園に到着したときの朗らかな感情の目覚め」
第2楽章:「小川のほとりの情景」
第3楽章:「農民の楽しい集い」
第4楽章:「雷雨、雨」
第5楽章:「牧人の歌、嵐のあとの喜ばしい感謝の感情」
また、第3楽章以降は切れ目なしに演奏されるのも今までない趣向です。
これらの特徴は、このあとのロマン派の時代に引き継がれ大きな影響を与えることになります。
しかし、世間にはベートーベンの音楽をこのような標題で理解するのが我慢できない人が多くて、「そのような標題にとらわれることなく純粋に絶対的な音楽として理解するべきだ!」と宣っています。
このような人は何の論証も抜きに標題音楽は絶対音楽に劣る存在と思っているらしくて、偉大にして神聖なるベートーベンの音楽がレベルの低い「標題音楽」として理解されることが我慢できないようです。ご苦労さんな事です。
しかし、そういう頭でっかちな聴き方をしない普通の聞き手なら、ベートーベンが与えた標題が音楽の雰囲気を実にうまく表現していることに気づくはずです。
前作の5番で人間の内面的世界の劇的な葛藤を描いたベートーベンは、自然という外的世界を描いても一流であったと言うことです。同時期に全く正反対と思えるような作品を創作したのがベートーベンの特長であることはよく知られていますが、ここでもその特徴が発揮されたと言うことでしょう。
またあまり知られていないことですが、残されたスケッチから最終楽章に合唱を導入しようとしたことが指摘されています。
もしそれが実現していたならば、第五の「運命」との対比はよりはっきりした物になったでしょうし、年末がくれば第九ばかり聞かされると言う「苦行(^^;」を味わうこともなかったでしょう。
ちょっと残念なことです。
田園と言えばこの録音が長らく決定盤としての位置を占めていました。
ワルターと言えばこの最晩年のコロンビア響との録音が真っ先に思い浮かぶ人が大部分でしょう。私がクラシック音楽などというものを聞き始めた30年ほど前は、田舎のレコード屋さんでもワルター&コロンビア響との録音は並んでいました。おまけに、新譜は2800円、再発でも2000円という時代に、ワルター&コロンビア響のレコードは1500円の廉価盤として発売されていました。当時、これより安いのは1300円のエンジェルシリーズ(EMI)だけでしたから、ホントに有り難い存在でした。
もちろん、この最晩年の録音が功成り名を遂げた巨匠の手すさびの芸であり、ワルター本来の持ち味が発揮されておらず、そして、その様な満足のいくものでない録音が彼を代表する演奏として後世残ったことは、必ずしも幸せとは言えないのではないかという声があることも事実です。さらに言えば、このコロンビア交響楽団という名前で臨時編成されたオケが50人程度の小編成であり、その「小ささ」を覆い隠すために、いらぬエフェクトをかけて発売されたことの「罪」も指摘されます。
しかし、その様な「マイナス面」は決して否定できないものの、それでも、このような形でステレオ録音が残ったことは、幸せだったと言わざるを得ません。
何故ならば、これら一連の録音にはいくつかの不満が残ったとしても、それをきっかけとしてニューヨークフィルとのモノラル録音や戦前の録音にも触手を伸ばし、その事によってこの稀代の巨匠の真の凄さに気づくきっかけになったからです。もしも、このきっかけとなるコロンビア響との録音がなければ、いったいどれほどの人が彼のモノラル録音に注目したでしょうか。その事を思えば、やはりこの一連の録音は、ワルターにとって幸せだったと言うべきでしょう。
さて、いろいろと言われるコロンビア響との録音ですが、その特徴をひと言で言ってみれば、「サラサラ流れる」音楽だと言っていいでしょう。このコンビによる録音の中でも名盤の誉れの高いこの「田園」もその例外ではありません。実に端正に気持ちよく横へ横へと音楽は流れていきます。そして、歌わせるべきところは品良く歌わせています。弦楽器群の美しさも特筆ものです。
しかし、私たちはこれ以後、様々な「田園」を持つようになりました。ですから、今もってこれを決定盤と主張する気はありませんが、それもこの作品の演奏史において決して忘れてはいけない録音であることは事実です。
この演奏を評価してください。
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- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
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よせられたコメント
2009-08-28:Sammy
- 昔どこかで聞いてとても美しいと思ったこの演奏、こうして久々に聞いてみると、奏者の滑らかながらやや明るめで単調な音を解釈であれこれ表情付けして、全体を大きく歌いつつものっぺりとした統一感でまとめているような印象を受けました。
今回は一度通して聞いただけですが、他と比べてしまうとよし悪しあり、でもまあ一つのしっかりした個性ある演奏ではあるのだろう、というような複雑な印象を受けました。ばたばたせず流れに安定感があるのは年の功なのでしょうか。ここに温かさと安心感を感じていくならば、偉大な遺産、という評価になっていくのかもしれません。
2009-08-31:チョコ
- ついにこのステレオ初期の名盤が復活したとは喜ばしいかぎりです。LPからCD(最初は¥3500だったと記憶)を経て、私もワルターのモノ/ステレオ両方で全集を揃えました。
ユングさんが書いているように、小編成だとか批判はありましたが、よく歌った演奏です。
これは、フィラデルフィアとの旧録音を遥かに凌いでいるでしょう。
2009-09-02:うすかげよういちろう
- ついにこの録音がパブリックドメインに!感激です
ウチでもこの演奏がおおいばりで流せます(極小規模の飲食店経営してます)
第5楽章のうねりのような白熱の演奏にはただただ感服。
1楽章や2楽章の、ごく自然でありながらふわっとテンポを遅くするところなんか神業です。
2009-11-27:あんとん
- 私、この演奏今でも大好きです。
実家には今でもLPがあると思います。
聴き直してみても、永遠の名盤たる価値があると思いました。
2010-02-24:カンソウ人
- 中学生の頃、金持ちの友達がこのシリーズをたくさん買っていました。
おまけのLPは、リンツ交響曲の練習風景が裏表でした。
15分かそこら練習して、第1楽章テイク1となったようでした。
また15分かそこら練習して、第2楽章テイク1でした。テイク1は入っていませんでした。
最終練習だったのか、副指揮者にした練習させてあったのかは、分かりませんでした。
開放弦の注意と、「sing」という注意が印象に残りました。
あんまり練習時間を取れないからか、年齢と共に柔軟になったのか分かりません。
出来上がりは、締め付けの緩い自然な流れの演奏でした。
今聴くと、編成が小さいのは気になりませんね。
金沢や水戸のオケなど、散々室内オケの演奏を聞いたからかもしれません。
ロマン的な表情が、きれいな録音に捉えられていて、そこに違和感があるかも知れません。
そこが却って新しく感じるかもしれません。
名演奏と信じてきた演奏です。
演奏スタイルは、変わるだけではなく、一回りしてきたのでしょうか。
これが、パブリックドメインになったのも、不思議な因縁でしょうか。
柴田南雄さんが、全ての音源はパソコンを通じて手に入れる時代が来るであろう。
それが、実現しつつあるこの頃です。
簡単に廃版にする録音会社は、あてになりませんから、ありがたいです。
将来的には、国会図書館などの仕事かもしれません。
感想を送る楽しみは、無いでしょうね、そうなれば。
演奏スタイルが回ってきたのを感じて、電子技術の事も考えてしまいました。
2012-12-23:阿部 稔
- ワルターの霊魂が乗り移った演奏に、暫し我を忘れました。素晴らしい!
2014-07-10:宮脇浩一郎
- 今朝は何となく4時ごろから目覚めてしまい、たまたまNETをいじっているとこのサイトに当たり、とにかく、全て聞きたくなりましたが、まず小生の葬送行進曲と予てより決めている「田園」を選びましたら、突然、第2楽章から聞こえ出したのでまたびっくり。遥か半世紀以上前は最終楽章が最も好きでしたが、今は第2楽章です。
因みに、最近はクレンペラーを愛聴して、彼の無骨なエネルギーの発散を楽しんでいます。
今は、宝の山へ突然ぶち当たったような気持ちです。順次試聴させていただきたいが、よろしいでしょうか。
2015-07-05:yseki118
- ワルターの田園はオーディオチェックに使っています。
第1楽章の中間部分、低弦の心臓の鼓動のようなリズムに合わせてヴァイオリンが高まっていく部分が、いかに心を揺さぶって聴こえるかというのが基準です。ワルターの至芸を実感できる瞬間です。
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