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シゲティ(Joseph Szigeti) |モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.481
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.481
(Vn)ヨゼフ・シゲティ (P)ジョージ・セル 1955年3月23日~25日録音 Mozart:Violin Sonata in E-flat major, K.481 [1.Allegro molto]
Mozart:Violin Sonata in E-flat major, K.481 [2.Adagio]
Mozart:Violin Sonata in E-flat major, K.481 [3.Allegretto]
後期の三大ソナタ:K.454、K.481、K.526
「三大ソナタ」という呼び方は一般的ではありあせんが、モーツァルトのこのジャンルにおける最後の貢献としてこの3作品を指摘することができますから、あえてこのようなネーミングをしてみました。
この3作品は、K.376?K.380のように、何らかの目的を持ってまとめて作曲されたわけではありません。
K.454については、モーツァルトは父親に宛てた手紙でふれていますからその成立状況はよく分かっています。そして、それはモーツァルトの「天才伝説」を彩るエピソードの一つでもあります。
この作品は、当時ウィーンを訪れていたストリナサッキというヴァイオリニストのために作曲されたもので、それをモーツァルトとの競演で演奏しました。しかし、演奏会当日までにはヴァイオリンのパートしか楽譜が完成しなかったために、モーツァルトは白紙の楽譜を前にピアノを演奏したというのです。・・・恐るべし、モーツァルト!!
次のK.481については成立事情に関しては何も分かっていません。おそらくは出版目的の小銭稼ぎだったと思われますが、これもまた作品の「価値」とは間の関係もない話です。
この作品の第1楽章には「ジュピター」のモチーフ「ドレファミ」が出てきます。モーツァルトはこのモチーフがよほど気に入っていたようで、彼の作品には何回も顔を出します。
そして、最後のK.526は、おそらく「ドン・ジョヴァンニ」の作曲中に書かれたものと思われます。クロイツェル・ソナタの先駆けとも呼ばれるこの作品については、アインシュタインによる次の賛辞ほど相応しいものはありません。
「この曲においてモーツァルトはヴァイオリンソナタの分野でも完璧な《諸様式の調和》に到達し得ている。」
「緩徐楽章では、あたかもすべての善人に生存の苦い甘みを味わわせようと、父なる神が世界の一瞬だけいっさいの運動を停止させたかのような、魂と芸術との均衡が達成されている。」
ヴァイオリンソナタ第41番 変ホ長調 K.481
第1楽章:Molto allegro
第2楽章:Adagio
第3楽章:Allegretto
50年代中頃における新即物主義のモーツァルトを代表するような録音
50年代の中頃にシゲティは二人のピアニストを相棒としてかなりまとまった数のモーツァルトのソナタを録音しています。
しかし、この録音に関しては不思議なことだらけで、何よりも録音の日時が「50年代中頃」としか記されていないものが多くて、全く持ってはっきりしないのです。そして、録音日時がはっきりしないのですから、初出年も全く持ってはっきりしないという、こういうサイトをやっているものにとっては実に困った音源なのです。
それでも、その演奏のクオリティが取るに足らないものであれば、パブリックドメインになったことにも気づかれることなく静かに消えていったとしても仕方がないのですが、50年代中頃における新即物主義のモーツァルトを代表するような録音なのですから困ってしまうのです。
ただし、私が困ると感じると言うことは、同じように困ると感じる人が他にもたくさんいると言うことで、その結果としてその「謎」は少しずつ明らかになると言うことも意味します。
まず、録音日時に関してはザックリですが以下のようだったことが明らかになりました。
(Vn)ヨゼフ・シゲティ (P)ジョージ・セル 1955年3月23日~25日録音
ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.454
ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.481
セルは偉大な指揮者だったのですが、ピアニストとしての腕も本職と変わりませんでした。一つ一つの音の粒立ちが明確ですし、その明確な音が流れるように紡がれていく様は、指揮者としてのセルが目指した音楽のありようと全くの相似形です。
そして、この録音が翌年に「Mozart Bicentennial Commemorative Issue 1756-1956 」の1枚としてリリースされています。
つまりは、このシゲティの録音は1956年のモーツァルト生誕200年記念として計画されたものなのです。
そして、残りの大部分はミエチスラフ・ホルショフスキーをピアニストとしてむかえて録音されました。
(Vn)ヨゼフ・シゲティ (P)ミエチスラフ・ホルショフスキー 1955年4月、5月、10月録音
ヴァイオリン・ソナタ ハ長調 K.296
ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.301
ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.302
ヴァイオリン・ソナタ ハ長調 K.303
ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K.304
ヴァイオリン・ソナタ イ長調 K.305
ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 K.306
ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 K.376
ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調 K.377
ヴァイオリン・ソナタ 変ロ長調 K.378
ヴァイオリン・ソナタ ト長調 K.379
ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 K.380
ヴァイオリン・ソナタ イ長調 K.526
詳しい日時はこれ以上は不明なのですが、この3ヶ月の間に13曲のソナタが録音されています。
ところが、どうしたわけかこの録音がお蔵入りをしてしまうのです。
お蔵入りをする理由の大部分は演奏家サイドがNGを出すことが原因ですから、この場合はシゲティかホルショフスキーかと言うことになります。しかし、シゲティに関して言えばすでにセルとの共演の録音はリリースしていますし、後でも詳しく述べますが、この録音は彼がやりたいように演奏した録音になっていますから、シゲティがNGを出したとは考えられません。
だとすれば、ホルショフスキーが何らかの不都合、もしくはわだかまり、または不満を感じたためにお蔵入りをしたと考えるのが妥当なようです。
この1956年のモーツァルト生誕200年を記念した一連の録音は、モーツァルトという音楽家に対する評価を根底から覆しました。
もちろん、分かっている人にとっては自明のことだったのですが、それでも一般なモーツァルトへの認識といえば、「子ども向けの愛らしい音楽を書いた人」という域を出るものではありませんでした。
しかし、この生誕200年を記念して数多くの録音が世に出ることによって、一般の聞き手も、はじめて「音」として彼の業績を概観できるようになり、その結果としてモーツァルトに対する認識は一変したわけです。
そう言う意味では、1956年はモーツァルト・ルネッサンスの年だったと言えるのです。
そして、シゲティもまたその様な意気込みを持ってこの録音に臨んだことは明らかです。
セルとの録音では少しばかりの遠慮も感じるのですが、ホルショフスキーとの録音ではやりたい放題です。
それはもう、ヴァイオリンというナイフを使ってモーツァルトのソナタの中心に秘められている水晶のようなコアを削り出そうとするような演奏です。そう言えば、セルとの録音に関して、「もう少し音を優美に紡ぎ出すボーイングの技術がほしい」などと書いたのですが、かえすがえすも阿呆なことを書いたものです。
ここでのシゲティはその様な「美しい」モーツァルトなどにはなんの興味もなく、この一見すればシンプルで愛らしいだけに見えるソナタの中に、どれほどの深い感情が秘められているかを削りだそうとしていたのです。
そして、録音もまたその様なシゲティの思いに寄りそうかのように、ヴァイオリンをかなりオンマイク気味にしてクッキリと録音しています。
そして、その傾向はセルとの共演よりもホルショフスキーとの録音で顕著です。
つまりは、そこでは明らかにピアノは脇にまわっているのです。
ところが、その脇にまわっているピアノは、自分が主になる場面では優美に歌い出そうとする姿がはっきりと見て取れます。
もちろん、概ね、ピアノはヴァイオリンを立ててはいるのですが、それでも、作品に対する解釈という点では二人はそれほど一致していないようにも聞こえるのです。
もちろん、真相は藪の中で、真実は最後まで分からないのでしょうが、結果としてホルショフスキーとの録音は1968年まで塩漬けされることになったようです。
さらに言えば、そうしてリリースされた録音も、すでにステレオの時代に入っていたために疑似ステ化されて発売されるという「落ち」までついてしまいました。
そして、もしもEPA協定などにかかわって著作権の保護期間が今年中に延長されれば、今後20年間はパブリックドメインにもならないので、実質的に永遠に日の目を見なくなる可能性もあります。
つくづく運のない録音だったようです。
この演奏を評価してください。
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よせられたコメント 2020-11-16:コタロー シゲティとセルとの共演によるモーツァルトのヴァイオリン・ソナタはわずか2曲だけですが、モーツァルト生誕200年の1956年にリリースされたために、結果的にパブリックドメインとしてこのサイトで陽の目を見ることができたのは幸運でしたね。
シゲティのヴァイオリンの虚飾を排した演奏も素晴らしいですが、セルのピアノの上手なことは驚嘆に値します。彼の指揮ぶりと同様、音楽のバランスを見事に整えています。ピアニストとしてのジョージ・セルの真骨頂を味わえる貴重な記録だと思います。この演奏は、まさにシゲティとセルとの一期一会の出会いがもたらした、かけがえのないものですね。 2022-02-24:はい、どーん いかにも古い、古色蒼然という言葉がぴったりくるもので、モーツァルトがこんな響きを想定したはずはありません。でも聞いているうちに「これしかない」という気持ちになってしまいます。
例えるなら、詩の朗読をNHKのアナウンサーの声で聞くのと、ベテラン俳優の声で聞くのとのちがいとでも言えましょうか。高音のかすれやテンポのぎこちなさまで心地よく聞こえます。楽器と身体がひとつになっているしるしのように思えるからです。こうなると冷静な批評とは言えませんが、…
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