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ラヴェル:夜のガスパール(Ravel:Gaspard de la nuit)

(P)ジーナ・バッカウアー:(語り)サー・ジョン・ギールグッド 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Read)Sir John Gielgud Recorded on June, 1964)

Ravel:Gaspard de la nuit [1.Ondine(Poem)]

Ravel:Gaspard de la nuit [1.Ondine(Music)]

Ravel:Gaspard de la nuit [2.Le gibet(Poem)]

Ravel:Gaspard de la nuit [2.Le gibet(Music)]

Ravel:Gaspard de la nuit [3.Scarbo(Poem)]

Ravel:Gaspard de la nuit [3.Scarbo(Music)]


難曲中の難曲

ラヴェルの特徴の一つは極限まで発達したコンサートグランドの性能を極限まで使い切っていることです。それはピアニストに対する挑戦とも言うべき内容をもっているのですが、聞き手にとってはその華やかな演奏効果はこの上もないヨロコビとなるものです。
そして、そう言う路線上における最大の収穫がこの「夜のガスパール」です。
この作品は、ラヴェル自身も認めているように、作曲当時に最も演奏困難な作品だと言われていたバラキレフの「イスメライ」を強く意識し、それを上回るような超絶技巧が必要な作品として構想されました。特に、第3曲の「スカルボ」は古今のピアノ曲の中でも難曲中の難曲として君臨しています。

さて、この作品集のタイトルとなっている「夜のガスパール」ですが、初めてレコード屋で見たときに「夜のバスガール」と読み間違えて、何だか出来の悪い演歌みたいなタイトルだなと思ったものです。こういう読み間違いは認知科学的には興味深いものがあるのかもしれませんが(^^;、まあ、阿房ですね。
この「夜のガスパール」というのは19世紀の初頭の詩人、アロイジウス・ベルトランの散文詩集「夜のガスパール:レンブラントとカローの想い出に贈る幻想」に由来しています。ベルトランは詩人としては全く評価されることがなく貧困の中で若くして世を去りますが、その後ボードレールやマラルメがその作品を散文詩の先駆者と位置づけた事によって彼への再評価が進む中でこの散文詩集も復刻されるようになります。
ガスパールというのはキリストの誕生を祝って駆けつけた東方3博士の一人の名前ですが、ベルトランはあえてこの人物を「悪魔」として取り扱ってるそうです。ただし、その辺この事は正直に申し上げてよく分かりません。図書館でこの詩集を手にとってパラパラと眺めてみたことはあるのですが、何を書いているのか、何を言いたいのか凡人のユング君には全く分かりませんでした。ただ、ガスパール=悪魔というのもそれほど単純な設定ではないようなのですが、ラヴェル自身は「『夜のガスパール』は悪魔の助けを得て書き上げられています。しかし、驚くにはあたりません。この詩の作者は、悪魔なのですから」と書いているそうです。
ですから、まあガスパール=悪魔でいいのではないかと思います。

第1曲《水の精(オンディーヌ)》
人間の男に恋をした水の精オンディーヌは窓のしずくとなって現れ、自分と結婚して湖の王になってくれと懇願する。しかし、男は、自分は人間の女性を愛すると答えてオンディーヌの願いを断ると、オンディーヌはくやしがってしばらく泣き、やがて大声で笑い、激しい雨の中を消え去る…という、何だか訳の分からない詩を下敷きにしているらしい。曲は、さざ波をあらわす32分音符が左右で入り組んでけっこうムズイ作品。

第2曲《絞首台》
絞首台のまわりで鐘の音に交じって聞こえてくるのは、夜の風か罪人のすすり泣きか、はたまた頭蓋骨から血のしたたる髪をむしっている黄金虫か・・・という、さらに訳の分からない詩が下敷きになっている。


第3曲《スカルボ》
スカルボとは子鬼で天井から飛び降りて、部屋の中を転げまわる、寝台のところに来ては騒々しく笑う無気味な存在だそうです。そんなスカルボが真夜中に何回も現れ、やがて青白くなって透き通って消えていった・・・という、これまた訳の分からない詩を下敷きにしている。
急速な連打音やアルペジオによる複雑な運指・・・等々、まさに難曲中の難曲です。


散文詩が読み上げられる

この録音ではアロイジウス・ベルトランの散文詩が読み上げられています。
これって、かなり珍しいのでしょうか。

オンディーヌ



私を眠りへと誘なう美しい調べを聞いた
それは誰かのささやきのようでもあった
しかし、その歌はやさしく悲しい声に乱された
シャルル・ブルニュ「ふたつの聖霊」より

聞いて、聞いて
私よ、オンディーヌよ
やさしい月の光がさす窓を
月光に輝く飾り硝子を
夜露のようにそっとたたくのは私

私こそは
白絹のようなしぶきに身をつつみ
美しい星空を映した静かな湖を統べる
水の乙女

たち騒ぐ波は水の精
すべての流れは私の王宮への径《みち》
私の王宮は
火と土と風のはざま
湖底にかくされた秘密

聞いて、聞いて
私の父は榛《はん》の若木の枝で水を従えるのよ
姉さまたちは白い波で
水蓮やグラジオラスが咲きみだれる
緑の小島をやさしく包み
釣人のように枝を垂れた
柳じいさんをからかっているわ

そしてオンディーヌは指輪を差しだした
この私に彼女の夫となるべく
水の宮殿で湖の王となるべく

しかし私は
限りある命の乙女を
愛していることを告げた
オンディーヌは
恨みがましく涙を流したかと思うと
嘲笑を私に浴びせかけた
そして水のなかへと
帰っていった
オンディーヌのたてたしぶきが
青硝子に白い跡を残した

絞首台



絞首台のあたりでうごめいているものは何だ?
「ファウスト」より

これは夜陰に吹きすさぶ北風か
それとも、吊るされた罪びとの溜息か

あるいは、吊るし木の足元をやさしく覆う
苔と枯蔓に隠れてなくこおろぎか

死者の耳もとで
獲物を求めて飛びまわる蝿の羽音か

しゃれこうべにしがみついて
血のこびりついた髪に絡みつく甲虫か

それとも縊れた首のまわりに
純白のスカーフを編む蜘蛛か

かなたの城壁から鐘をうつ音が響き
罪びとの亡きがらは
夕日のなかで
ゆらりと揺れた

スカルボ



ベッドの上にも、暖炉の上にも、
そして飾り棚の上にも姿はなかった
あのものは何処から忍び込んだのか
そして何処へ逃れたのか
「ホフマン夜話」より

幾度となく私は見た、やつ、スカルボを
金の蜜蜂を縫いとった瀝青色の旗印の
銀色の紋章のように月が輝く夜に

幾度となく私は聞いた
壁の暗がりでやつが漏らすあざけりの声を
ベッドのカーテンに爪をたてる音を

私は見た
やつが天井からするすると降りてきては
魔女の糸巻きさながら
一本足でくるくると
部屋の中を踊りまわるのを

やつは何処へ失せたのか
突然、あやしい小鬼がゴチックの鐘楼のように
月と私のあいだに立ちふさがった
金色の鐘がやつのとんがり帽子で揺れている

しかし、すぐにそいつの身体は蒼白に変った
不気味なろうそくのように
頭は燃えつきたろうそくのように
溶けて流れた
そして冷たく動かなくなった

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