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ミュンシュ(Charles Munch) |ベルリオーズ:劇的交響曲「ロミオとジュリエット」
ベルリオーズ:劇的交響曲「ロミオとジュリエット」
ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 マーガレット・ロッジェーロ(メゾ・ソプラノ) レスリー・チャペイ(テノール) ハーヴァード・グリー・クラブ ラドクリフ合唱協会 (合唱指揮:G.ウォーレス・ウッドワース) 1953年2月22・23日録音
Berlioz:劇的交響曲「ロミオとジュリエット」 第1部
Berlioz:劇的交響曲「ロミオとジュリエット」 第2部
Berlioz:劇的交響曲「ロミオとジュリエット」 第3部
ベートーベンは死にました・・・。
ベルリオーズと言えば有名なわりには「幻想交響曲」以外となるとあまり代表作が思い浮かばないという不思議な人です。しかし、それは「幻想」以外にすぐれた作品を書かなかった「一発屋」だったからではありません。そのことは、この劇的交響曲と名付けられた「ロメオとジュリエット」を聞くだけで納得がいくはずです。そして、同時に幻想以外の作品が何故にポピュラリティを持ち得なかったのかも見えてきます。
この作品の圧倒的な迫力は、その編成の大きさに依存している部分が大きいことは聞けばすぐに納得いきます。ベルリオーズの指示に従えば、この作品を演奏するためには、アルト・テノール・バスの独唱者が3人とソプラノ・テノール・バス各2部の合唱団が必要です。そしてオケの方も弦楽5部にそれぞれ15-15-10-14-9が最低必要だと記しています。要は大きければ大きいほどいいと言うことで、打楽器群もティンパニーを2対要求するなど本当に巨大な編成となっています。さらに、作品の規模も大きなモノで普通に演奏して1時間半は必要とします。
つまり、ベルリオーズの主要作品というのはとてつもなく巨大なモノであり、それ故に現在であっても全曲が演奏される機会は少なく、その事がベルリオーズ作品が広く認知されることの障壁となっているのです。
しかし、古典派の音楽の枠をはるかに突き抜けたこれらの作品こそがベルリーズの真骨頂でした。
彼の最初の歌劇作品であった「ベンヴェヌート・チェッリーニ」が大失敗で終わると、そのショックでベルリオーズは寝込んでしまいます。しかし、その失敗の年の暮れに彼は幻想交響曲を再演する機会を得、さらにその演奏を聴いたパガニーニが彼の中に眠る才能に感激して励ましの手紙を送ることになります。その手紙は「ベートーベンは死にました。再び彼に命を与える者はベルリオーズその人より他にありません」という言葉で始まるものでした。さらに、パガニーニは手紙だけでなく「尊敬と好意のしるし」として2万フランもの大金を添えました。世上、パガニーニはお金にきたない吝嗇家と言われてきていますが、このエピソードは心の片隅にとどめておいていいでしょう。彼が送った2万フランは歌劇の失敗で経済的苦境にあった>ベルリオーズを救い、さらに彼の励ましは新たな創作への意欲をかきたて、それらはこの偉大な作品「劇的交響曲 ロメオとジュリエット」に結実するのです。
作品そのものについては今さら何も書き加える必要はないでしょう。あまりにも有名なシェイクスピアの戯曲を圧倒的な音楽的構築物として完成させています。
この作品は劇的交響曲と名付けられていますが、古典派の交響曲とは全く異なる代物です。しかし、歌劇的な雰囲気は全くありませんし、いわゆるオラトリオとも違います。そう言う意味では、ベルリオーズ自身が名付けたように、交響曲の世界に新たな地平を切り開いた「劇的交響曲」としか名付けようがないのかもしれません。
<第1部>
・序奏 喧嘩; 騒動; 公爵の仲裁(オーケストラ)
・プロローグ 眠っていた古いにくしみが(合唱)
・プロローグ 忘れようがないはじめての熱狂よ!(コントラルト・ソロ)
・プロローグ まもなくロメオは物思いに沈みこんで(合唱)
<第2部>
・ロメオひとり(オーケストラ)
・哀しみ(オーケストラ)
・遠くから聞こえてくる音楽の集いと舞踏会のさざめき(オーケストラ)
・キャピュレット家の饗宴(オーケストラ)
・静かに晴れた夜(オーケストラ & 合唱)
・愛の情景
・マブの女王または夢の妖精(スケルツォ)(オーケストラ)
<第3部>
・ジュリエットの葬送(オーケストラ)
・キャピュレット家墓所のロメオ(オーケストラ)
・祈り
・ジュリエットの目覚め
・愛しあう二人の死
・終曲 なんだと!ロメオが戻った!(合唱)
・終曲 わたしが不思議をといて進ぜよう(叙唱)
・終曲 かわいそうな御子たちを悼んでわたしは泣く(エール)
・終曲 ではお誓いなさい、神聖な御印にかけて(誓い)
ベルリオーズ・チクルスの端緒となった録音
世間的にはほとんど知られていない大作を取り上げるというのは勇気がいることです。しかし、50年代のクラシック音楽界にはその様な「勇気」が至る所に満ちていました。
いや、ここで「勇気」という言葉を使うのは不適切かもしれません。なぜなら、「勇気」という代物は「憤怒(いかり)が少々、虚栄心が少々、強情がたっぷり、それにありふれたスポーツ的楽しさが加わったというだけ」(サン=テグジュベリ)のものらしいからです。
流行というものが川の流れの表面に現れる泡や飛沫の形を追っかけるものだとすれば、不易とはその底を流れるものを見すえることなのかもしれません。おそらく50年代には、そんな流行に流されることなく不易なるものを追いかけるゆとりがあったと言うことなのでしょう。
そして、聞き手の方もその様な骨太い提案を受け入れる度量がありました。ボストン響とミュンシュによるこの録音は好意を持って受け入れられ、それがきっかけとなって歴史的なベルリオーズ・チクルスが始まることになります。そして、この翌年からミュンシュ=ボストン響によってベルリオーズの大曲・管弦楽曲が次々に録音されていくことになります。現在に伝わる一連の名盤が生み出されることになったのでした。
そう言う意味でも、この録音が締める歴史的意味は大きいと言えます。
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