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名演奏を聴く~今週の一枚(最新の20件)

名演奏を聴く~今週の一枚(一覧表示)



ハイドン:交響曲第104番 ニ長調 Hob.I:104 「ロンドン」

イーゴリ・マルケヴィチ指揮:ラムルー管弦楽団 1959年12月録音

「凄絶」という表現をせざるをえないほどの唯一無二の演奏
これはラムルー管にしてみれば誇りともすべき、そして名誉ともなるべき演奏であり録音です。
まさに「凄絶」なハイドンです。ただし、ハイドンの交響曲に「凄絶」という形容詞が誉め言葉になるのかどうかは分かりませんが、それでもそう表現せざるをえないほどの唯一無二の演奏です。


パウル・ヒンデミット:交響曲「画家マティス」

ウィリアム・スタインバーグ指揮 ピッツバーグ交響楽団 1956年10月15日~16日録音

この作品の背景として存在したであろう抑圧されたものの感情が痛いほどに聞き手に迫ってきます。聞くものの心臓に突き刺さってくるようなトライアングルの響きがあちこちに明滅する光景は、それはそのまま、苛立ちと不安にさいなまれつつあるナチス政権下のドイツにおけるユダヤ人の日常であるかのようです。
しかし、その事は抑圧されたものの感情ドラマとして演出されるのではなく、ヒンデミットがスコアに託した思いを、何も足さず何も引かず、またオーケストラにも余分な響きを盛ることもせず、ひたすらまっすぐにヒンデミットの代弁者であろうしたことによって成し遂げられています。
そして、その音楽を通して聞き手が様々な感情を抱いてくれるとしたら、それは演奏者である自分ではなくて、音楽を生み出したヒンデミットの貢献だと主張しているような演奏です。


マリア・カラス~狂乱の場

(S)マリア・カラス:ニコラ・レッシーニョ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 フィルハーモニア合唱団 1958年9月24~ 25日録音

狂乱の場はコロラトゥーラにとっては一番の聞かせどころを提供してくれるアリアなのですが、最も困難を強いるアリアでもあります。何故ならば、その「狂乱」が悲劇的であり、陰惨であればあるほど、軽く転がすだけのコロラトゥーラでは見事なまでの三文芝居になってしまうからです。
しかし、そこで重みのあるドラマティックな声で歌い上げることが出来れば、それがどれほど阿保みたいなストーリーであっても、そこに真の悲劇が立ちあらわれます。
その意味で、このアルバムは真に価値のある一枚です。


モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K364

ルドルフ・バルシャイ指揮&Viola (Vn)ダヴィッド・オイストラフ モスクワ室内管弦楽団 1959年3月22日録音

室内管弦楽団を徹底的に鍛え上げた鬼のトレーナーとしての側面と、腕利きのヴィオラ奏者としての側面が一つの録音で確認できるモーツァルトの「ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K.364」です。その演奏精度の高さは時代の壁をはるかに突き抜けていすま。
さらに注目すべきは、ヴァイオリン独奏がオイストラフという事です。
モーツァルトの音楽をここまで厳しく描き出す必要があるのかと言われそうなのですが、オイストラフの美音が丁度いい中和剤になっています。


チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.35

(Vn)ティボール・ヴァルガ:J.M.オーバーソン指揮 ティボール・ヴァルガ音楽祭管弦楽団 1965年録音

この録音にはベルリンフィルやウィーンフィルをバックにしたときのような徹底的に磨き込まれた完成度はありません。
そしかし、音楽とは不思議なものです。この録音からは「音楽をすることの喜び」がひしひしと伝わってきます。
この演奏を聞けば、「音楽を美しく演奏」することと、「美しい音楽を演奏」することは似ているようで、根本的に全く異なることに気づかせてくれます。


モーツァルト:交響曲第29番 イ長調 K.201 (186a)

グィード・カンテッリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1955年5月28日~31日&8月18日録音

ここでのカンテッリのモーツァルトの何と軽やかなこと!!
そして、この心地よい疾走感!!これぞまさしく「Allegro moderato」なのです。
これを聞けば、これ以外のテンポ設定は考えられないと思ってしまうほどに、見事なまでにツボにはまっています。
そして、後は、この心地よさが一つの牽引力となって一気呵成に全体像を描ききってしまいます。


ブラームス:交響曲第2番 ニ長調 作品73

シャルル・ミュンシュ指揮 ボストン交響楽団 1955年12月5日録音

カラヤンはどこかでこんなことを言っていました。
自分が興奮してメンバーも興奮するのは三流の指揮者、自分は冷静でメンバーが興奮するのは二流の指揮者、自分もメンバーも冷静で客が興奮したときに一流の指揮者
ここで聞くことのできるブラームスは、まさにこの指揮者もオケも冷静でありながら聞き手を興奮させる一流の芸です。
それが誰の耳にもはっきりと分かるのがコーダに向けてオケと指揮者が驀進していく場面でしょう。音楽が盛り上がっていけばいくほど、指揮者もオケも冷静になっていくのが手に取るように分かります。


モーツァルト:交響曲第28番ハ長調K.200(189k)

ジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1965年10月1日~2日録音

このアンダンテ楽章をこれほど美しく演奏してみせた指揮者は他にはいませんし、さらに言えば、そう言うセルの意図に応えて、これほどまでに見事に素材の味わいを損なうことなく演奏してみせたオーケストラもありませんでした。
若い頃は、この楽章を聞くたびにため息をついては針をあげ、再びこの楽章の始まりの部分に針を落としたものです。


モーツァルト:ピアノソナタ第15番 ハ長調 K 545

(P)フリードリッヒ・グルダ 1965年2月録音

アレグロの第1楽章から細かい装飾音が施されているのですが、圧巻なのはアンダンテの第2楽章です。
グルダはモーツァルトが指示したとおりの反復を全て忠実に行っているのですが、その反復のたびにうっとりするような美しい装飾音を施していくのです。そして、その装飾音の追加はモーツァルトの歌う音楽をよりいっそう鮮やかに彩ることはあっても、決してモーツァルトの音楽を傷つけるようなことはないのです。


サン=サーンス:クラリネットソナタ 変ホ長調 OP.167

(Cl)レジナルド・ケル (P)ブロック・スミス 1957年5月27日録音

レジナルド・ケル と言えばすでに過去の人となっていますが、そのほんわかとした響きは今もってなかなかに魅力的です。モーツァルトやブラームスのクラリネット作品だけでなく、いろいろなクラリネット小品も録音していて、そう言う小品を次々と聞いていると、「仕事に行くのが嫌になってしまうような魅力」を持っています。
とりわけ、このサン=サーンスのソナタなどはその最右翼と言えるでしょう。


モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番 ニ長調 K.218

(Vn)ヨハンナ・マルツィ オイゲン・ヨッフム指揮 バイエルン放送室内管弦楽団 1955年9月4日録音

マルツィというヴァイオリニストは単色のパレットしか持たない人ではないことを、この協奏曲の両端楽章においてものの見事に証明してみせています。
あまりにも手垢のついた表現なのですが、まさにカミソリのごとき切れ味です。
とりわけ、カデンツァの部分では、驚くべき録音のクオリティの高さのおかげもあって、まさに名刀の切れ味です。


モーツァルト:交響曲第40番 ト短調 K.550

ルドルフ・バルシャイ指揮 モスクワ室内管弦楽団 録音年不詳(1963年初出)

この演奏と録音は今の耳から聞いてもいささかゾクリとするほどの凄みを持っているのですが、それをベームによるモーツァルト演奏がスタンダードだった時代に置いてみるという「思考実験」をしてみれば、それがただならぬ「凄み」を持った演奏であったことがよく分かるはずです。
そして、過去の演奏や録音、さらには評論の中には、その様な「思考実験」を経なければ正当に評価できないものもあるのです。
とりわけ、評価すべき対象が時代の制約を大きく超えようとしていたものに対しては、その様な手続きが絶対に必要なのです。


フンパーディンク:「ヘンゼルとグレーテル」組曲

ルドルフ・ケンペ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1961年1月録音

こういう短縮版を上演するときは、それを聞いてオペラを見たような気分になれるかどうかがポイントです。
そのためには、オペラ全体を俯瞰できるように「部分」を切り出してくることと、何よりもその「部分」だけで「全体」をイメージできるような「語り口の上手さ」が不可欠なものとなります。
そして、ケンペの場合は、その辺りがもう実に上手いのです。


シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D.821

(Cello)エンリコ・マイナルディ (P)グイド・アルベルト・ボルチアーニ 1950年10月8日~9日録音

マイナルディとボルチアーニによる「アルペジョーネソナタ」は、この作品のあちこちに花開くシューベルトの歌にとことんよりそった音楽になっています。マイナルディのチェロの響きはロストロポーヴィチと較べれば随分と地味ですから、全体的に何処かひなびた風情は否定できません。しかし、そう言うひなびた風情でシューベルトの歌を紡いでいくと、そこからいい知れないシューベルトの悲しみが浮かび上がってきます。


ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調 作品15

(P)グレン・グールド レナード・バーンスタイン指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1962年4月6日録音

これを「名演奏」と言っていいのかどうかは悩むのですが、バーンスタインとグールドが喧嘩別れし、さらにはグールドが実演からドロップ・アウトしてしまう切っ掛けとなった演奏と言うことでは一度は聞いてみる価値はあるでしょう。
バーンスタインはコンサートの開始に先立って、次のようにスピーチをして演奏をはじめたのです。
「それは私がこれまでに聴いたことのあるどの演奏とも全く違うもので、テンポは明らかに遅いし、ブラームスが指示した強弱から外れている部分も多々あります。実は私はグールド氏の構想に完全に賛成というわけではありません。」
しかし、実際に聞いてみればテンポは遅くはなく、全体としては常識的な範囲にとどまっています。

しかし、問題のスピーチがあったコンサートは3日目の演奏会であり、過去2日のコンサートでは第1楽章だけで40分以上もかかるほどの超スローテンポな演奏だった事は意外なほどに知られていません。
つまり、バーンスタインが切れるまでは、グールドは好き勝手に演奏していたのです。しかし、バーンスタインのスピーチを「腹を抱えて笑いながら聞いていた」はずのグールドは、この日に限っては遅めであっても常識の範囲に演奏してしまっているのです。
まあ、一度は聞いてみる価値はあるはずです。


ベートーベン:交響曲第3番変ホ長調 作品55 「英雄」

ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮 チェコ・フィルハーモニ管弦楽団 1959年3月録音

「悠々たる大河」を思わせるような表現になっているので驚かされました。
何といっても素晴らしいのは弦楽器の分厚い響きを主体としたチェコ・フィルの響きです。
そして、その響きは淀むこともなく、ましてや急ぐこともなく、川面はうねることもなく悠々と流れていきます。しかし、その一見すれば穏やかに見える川の流れには圧倒的なパワーが内包されているのです。


シベリウス:交響曲第2番 ニ長調 Op.43

ロベルト・カヤヌス指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 1930年5月27日~28日録音

今さらこんな古い時代の録音なんか止しにしてくれ!という言葉が聞こえてきそうです。
しかし、あらゆるシベリウス演奏はここから始まります。それは「スタンダード」などというものではなく、それ以上の「原点(origin)」とも言うべき存在なのです。大仰な言い方になりますが、どれほど古い録音であっても、シベリウスを愛するものであるならば、これは聞かなければいけない「義務」があるのです。


ラフマニノフ:13の前奏曲 作品32

(P)モーラ・リンパニー:1951年録音

この作品は現在のコンサートグランドピアノの能力の限界に挑戦するような部分があちこちに登場します。
そう言う音楽を完璧にねじ伏せているリンパニーも凄いのですが、その響きをほぼパーフェクトにとらえたDeccaの録音陣も素晴らしいとしか言いようがありません。

そして、こういう大昔のとんでもない録音にであうたびに、そんなとっくの昔に死んじまっている爺さん、婆さん相手にも勝負をしなければいけないクラシック音楽の演奏家はつくづく大変な稼業だと同情するのです。


ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調(原典版)

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1966年3月15日~19日録音

フルトヴェングラーがカラヤンのことを珍しく褒めたことがあったそうです。
「カラヤンが生み出すレガートはすばらしい。それが音楽においては最も難しいものだ。」みたいな内容だったと記憶しています。

なるほど、どんなに関係が悪くてもさすがはフルトヴェングラー、優れた音楽家として見るべきものは見抜いていたというわけです。そして、このブルックナーの9番を聞いていると、そう言うフルトヴェングラーの褒め言葉が思い出されてくるのです。


シューベルト:アルペジオーネ・ソナタ イ短調 D.821

(Cello)モーリス・ジャンドロン (P)ジャン・フランセ 1966年11月録音

チェロという楽器の美質を生かすという点においてはこのジャンドロンは最右翼に位置するでしょう。
しかし、この演奏を聞いて真っ先に感じたのはその様な「美しさ」ではなくて、その「美しさ」の背景から抑えようもなく浮かび上がってくる「悲しさ」でした。
もう、最初の音が出た瞬間からその「悲しみ」の色が体に染み込んできて、それが最後まで消えることありません。そして、ピアニストのジャン・フランセもまたシューベルトともに涙を流しています。





[2021-10-26]

モーツァルト:ピアノソナタ第13番 変ロ長調, K.333/315c
(P)ワンダ・ランドフスカ:1956年8月録音

[2021-10-25]

ブラームス:交響曲第4番 ホ短調, Op.98
ラファエル・クーベリック指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1956年3月24日~25日録音

[2021-10-24]

J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第1番 ヘ長調 BWV.1046
クルト・レーデル指揮 ミュンヘン・プロ・アルテ室内管弦楽団 1962年5月録音

[2021-10-23]

ヘンデル:合奏協奏曲, Op.6 第7番変ロ長調, HWV 325
アレクサンダー・シュナイダー指揮 アレクサンダー・シュナイダー室内管弦楽団 1966年1月録音

[2021-10-22]

ビゼー:カルメン組曲
アンソニー・コリンズ指揮 ロンドン交響楽団 1950年2月3日録音

[2021-10-21]

ブラームス:ピアノ協奏曲第1番 ニ短調, Op15
(P)クリフォード・カーゾン:エドゥアルド・ヴァン・ベイヌム指揮 アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1953年5月19日~6月1日録音

[2021-10-20]

モーツァルト:幻想曲ハ短調K.475+ピアノ・ソナタ第14番 ハ短調, K.457
(P)アンドレ・チャイコフスキー:1959年1月26日~28日録音

[2021-10-19]

ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第2集 作品72
カレル・アンチェル指揮 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1959年12月21日録音

[2021-10-18]

ドヴォルザーク:スラブ舞曲 第1集 作品46
カレル・アンチェル指揮 ウィーン交響楽団 1958年録音

[2021-10-17]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調 Op.111
(P)フリードリヒ・グルダ 1953年11月27日録音