クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ジョゼフ・エガー(Joseph Eger)|ブラームス:ホルン三重奏 変ホ長調, Op.40(Brahms:Horn Trio in E-flat major, Op.40)

ブラームス:ホルン三重奏 変ホ長調, Op.40(Brahms:Horn Trio in E-flat major, Op.40)

(Hr)フランツ・コッホ :(Vn)ワルター・バリリ (P)フランツ・ホレチェック 1952年録音(Franz Koch:(Vn)Walter Barylli (P)Franz Holeschek Recorded on 1952)

Brahms:Horn Trio in E-flat major, Op.40 [1.Andante]

Brahms:Horn Trio in E-flat major, Op.40 [2.Scherzo. Allegro]

Brahms:Horn Trio in E-flat major, Op.40 [3.Adagio mesto]

Brahms:Horn Trio in E-flat major, Op.40 [4.Finale. Allegro con brio]


バルブのない古いタイプのホルンを想定

ブラームスは数多くの室内楽曲を残していますが、ホルンを用いたのはこの1曲だけです。ただし、彼はホルンの響きを好んだのは間違いなく、多くの作品(交響曲の1番や2番、ピアノ協奏曲の2番、そしてドイツ・レクイエム等)でホルンには大切な役割を与えています。
また、ブラームス自身も少年時代からホルンを吹くのが好きなようだったようで、愛する母のためにホルンをよく吹いていたというエピソードも伝えられています。

さて、彼がこのたった1曲だけのホルン・トリオを書く切っ掛けとなったのは、ハンブルグに在住して時に9月か12月の間だけデルモルトの宮廷楽奏者をと合唱指揮者を務めた事でした。そこで、宮廷楽団のコンサート・マスターだったバルゲールとの交流を深め、さらに優れたホルン奏者だったアウグスト・コルデストとの3人で室内楽演奏を楽しむようになったのです。

しかしながら、ホルン・トリオの作品というのはそれほど数は多くないのでついにはネタ切れをおこしてしまい、それなら自ら作曲しようと思い立って完成させたのがこのホルン・トリオでした。
しかしながら、作品が完成したのは彼がウィーンに居を構え、ジングアカデミーの指揮者に就任してからでした。そして、バーデン・バーデン近くの森や丘を散策しているときにこの作品の着想を得たと言います。さらには1865年1月に母を亡くしたことも大きな影響を与えたのかもしれません。

この作品のロマン的な美しさは際だっているのですが、その中でも第3楽章の哀愁に溢れる旋律は亡き母へのレクイエムのように聞こえます。
ピアノで始まり、そこにヴァイオリン、そしてホルンと対位法的に旋律が重ねられることで、その憂愁はより重厚なものになっていきます。
しかし、作品全体に漂う牧歌的な雰囲気にはバーデン・バーデンの自然が反映しています。とりわけ、第1楽章の冒頭でヴァイオリンが歌い出す旋律をすぐにホルンが受け継ぐ部分の伸びやかで牧歌的な雰囲気は作品背体の佇まいを決定しているように期にこえます。

なお、ブラームスはこの作品で使用するホルンはバルブのない古いタイプの楽器を想定しています。言うまでもなく、バルブのないホルンの演奏は技術的には難しいのですが、その豊かな音色がこのホルン・トリオには必須だと考えたようです。



これぞブラームス

これは紹介をし忘れていた音源の落ち穂拾いのようなものです。しかし、この落ち穂は意外なほどに素晴らしいものでした。
バリリのヴァイオリンがまずは聞き手の耳をとらえて離さないでしょう。そして、それをコッホのホルンが追いかけます。このホルンの響きのなんと素晴らしいこと!!

ブラームスはこのホルン三重奏曲のホルンにはヴァルブのないナチュラホルンを想定しています。

「ナチュラルホルン」とは円形に丸められた管にマウスピースをつけただけの、非常にシンプルな構造しか持っていません。
ですから、「ナチュラルホルン」は唇の振動を調節することだけでしか音程が変えられず、いわゆる「自然倍音」と呼ばれる音のみでしか演奏できません。そこでホルン奏者たちは、ベルの中に手をさしこむことで音程を変えるのですが、音程は極めて不安定です。しかし、その暖かくくぐもった音色は現在の「フレンチホルン」にはない魅力を持っています。

コッホのホルンはその音色は魅力的であっても極めて演奏の難しいナチュラホルンを使っています。
おそらく、このコッホのホルンとバリリのヴァイオリンがこのクオリティの音質で残ったことだけでも、この「落ち穂」は二重丸を飛び越えて花丸レベルのものでした。

さらに、ピアノのホレチェックがコッホとバリリにピッタリと寄りそって見事なバランスを支えてくれているのです。
この三人が実に雄弁にブラームスの心情を語っています。特に、亡き母へのレクイエムとも言うべき第3楽章は深い寂寥感に包まれながらも感情に溺れることのない演奏です。

聞き終わって、これぞブラームス!!と言いたくなる演奏です。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



5726 Rating: 3.9/10 (31 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2025-06-29:安達





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-10-16]

J.S.バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582(J.S.Bach:Passacaglia in C minor, BWV 582)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1961年12月5日~8日録音(Marie-Claire Alain:Recorded December 5-8, 1961)

[2025-10-14]

ワーグナー;神々の黄昏 第3幕(Wagner:Gotterdammerung Act3)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-13]

ワーグナー;神々の黄昏 第2幕(Wagner:Gotterdammerung Act2)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-12]

ワーグナー;神々の黄昏 第1幕(Wagner:Gotterdammerung Act1)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-11]

ワーグナー;神々の黄昏 プロローグ(Wagner:Gotterdammerung Prologue )
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)

[2025-10-08]

ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on August, 1961)

[2025-10-06]

エルガー:交響的習作「フォルスタッフ」, Op.68(Elgar:Falstaff Symphonic Study, Op.66)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1964年6月1日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 1, 1964)

[2025-10-04]

ブラームス:弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 Op.67(Brahms:String Quartet No.3 in B-flat major, Op.67)
アマデウス弦楽四重奏団 1957年4月11日録音(Amadeus String Quartet:Recorde in April 11, 1957)

[2025-10-02]

J.S.バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV.562(Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 562)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-30]

ベートーベン:合唱幻想曲 ハ短調 Op.80(Beethoven:Fantasia in C minor for Piano, Chorus and Orchestra, Op.80)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (S)テレサ・シュティヒ=ランダル (A)ヒルデ・レッセル=マイダン (T)アントン・デルモータ (Br)パウル・シェフラ 1957年6月録音(Hans Richter-Haaser:(Con)Karl Bohm Wiener Wiener Symphoniker Staatsopernchor (S)Teresa Stich-Randall (A)Hilde Rossel-Majdan (T)Anton Dermota (Br)Paul Schoffler Recorded on June, 1957)