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マリー=クレール・アラン(Marie-Claire Alain) |J.S.バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582(J.S.Bach:Passacaglia in C minor, BWV 582)
J.S.バッハ:パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582(J.S.Bach:Passacaglia in C minor, BWV 582)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1961年12月5日~8日録音(Marie-Claire Alain:Recorded December 5-8, 1961) J.S.Bach:Passacaglia in C minor, BWV 582 [1.Prelude]
J.S.Bach:Passacaglia in C minor, BWV 582 [2.Fuga]
自由な形式によるオルガン曲の概要
バッハのオルガン作品は膨大な量に上るのですが、それらを大雑把に分ければ概ね以下の3つにぶ分類されるようです。
コラールに基づく作品
自由な形式による作品
教育のための作品
コラールに基づく作品は教会オルガニストとしての本務を果たすためのものであり、約200程度の作品が知られています。
教育用の作品は、おそらくは子ども達のために書かれたと思われる作品群で、6つのトリオ・ソナタが最も有名です。
それに対して、自由な形式によるオルガン作品は、バッハという音楽家の音楽的な思考力とオルガンという楽器に対する名人芸の発露が封じ込められた作品群だといえます。それ故に、このジャンルに対する取り組みは生涯にわたって続けられ、それを辿ることでバッハという音楽家の作曲技法がいかに発展していったかが反映されています。
ただし、それらの全てを詳述する能力は私にはありませんので、概略だけでも記しておければと思います。
パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV.582
バッハの数あるオルガン作品の中で一つ選べ(無理な注文であるのは承知の上で)と言われれば、ウーンと少しばかりうなった後で徐にこのパッサカリアを選ぶのがユング君という人です。
バッハの創作活動は彼の現世における職務と深く結びついていますから、オルガン作品の大部分はオルガン奏者として採用されたヴァイマール時代に集中しています。
バッハはわずか18才でアルシュタットの教会のオルガニストに採用されますが、それはこの教会に新しく設置された新造オルガンの試験演奏で人々をあっと驚かせるような演奏を披露してその実力を認めさせたからです。そして、この教会での実績をひっさげて、彼が次のステップアップの場に選んだのがヴァイマールの宮廷でした。
このヴァイマール時代はオルガン奏者としての前半と楽長に昇進した後半に別れます。前半の職務はオルガン奏者ですから、バッハを代表するようなオルガン作品はこの時代にその大部分が創作されています。楽長に昇進してからは毎月一回の教会カンタータの上演が彼の義務となりますから、数多くのカンタータが彼の手から生み出されます。
と言うことは、バッハのオルガン作品の大部分はアルシュタットのオルガン奏者に採用された18才(1703年)から、ヴァイマール宮廷の楽長に昇進する29才(1714年)までの時期に集中していると言うことです。もちろん、晩年におけるオルガン作品もあるのですが、私たちがよく知っている有名なトッカータやこのパッサカリアなどは全てこのヴァイマール時代の作品です。
しかし、これは驚くべき事だと言わねばなりません。
まさに、この巨大な建築物を思わせるような作品が、20代の若者の手から生み出されたとは!!
はたして、これに匹敵するほどの「巨大さ」を持った作品が他にどれほど存在するでしょうか?
専門書などをひもとけば、この作品についての詳細な分析を見ることができます。
曰く、この作品は20の変奏から成り立っており、それらは5つずつが一つのグループを形成している。
曰く、それらの5つのグループは2-1-2という3つの部分に分かれている。
曰く、全体はさらに1~10変奏の第1部分と11~15変奏の第2部分、16?20変奏の第3部分に分かれている。そして、第3部分は巨大な第1部分の圧縮された再現になっている・・・などなど。
しかし、そう言う難しいことは分からなくても、この作品が数学的とも言えるほどの緻密な設計の上に成り立っていることは聞けばすぐに了解できるはずです。
そして、そう言う緻密に積み上げてきた営みが、最後の最後の休止符によって断ち切られ、そこから世界の姿が一変するようにしてハ長調に転調して終結に向かう部分は圧倒的と言うしかありません。
やはり、バッハのオルガン作品で一つ選べと言われれば、やはりこのパッサカリアです。
多彩な音色が魅力
マリー=クレール・アランはアラン家の4人兄弟の末っ子として1926年8月10日にサン=ジェルマン=アン=レーで生まれました。このアラン家というのは大変な音楽一家であり、父であるアルベール・アランはオルガン奏者兼作曲家であり、兄のジェアンとオリヴィエも同様にオルガン奏者兼作曲家でした。
ですから、彼女もまた当然のようにオルガンを父から学び、パリ音楽院でマルセル・デュプレ、モーリス・デュリュフレから学びました。
まさにサラブレッドとも言うべき経歴です。
そして、アランはその生涯において「バッハ・オルガン作品全集」を3回も録音すると言う偉業を成し遂げています。まさに、フランスを代表するオルガニストであり、同時代でいえばドイツのヘルムート・ヴァルヒャと肩を並べる存在だったと言ってもいいでしょう。
しかし、この二人は紡ぎだす音楽の雰囲気はずいぶんと異なっています。
ヴァルヒャのバッハは一言でいえば重々しく聞こえます。それは言葉をかえれば「深い」ということになるのでしょうか。
それに対してアランの演奏を特徴づけるのは「多彩な音色」であり、その多様性ゆえに華やかで表現の幅が「広い」ということです。
まあ、世間一般でいえば芸術というのは「深い」ほうが価値を持ち、「華やか」というものはそれよりは一段低い価値しかないとみなされるものです。それが、「神とバッハへの信仰告白」であるオルガン作品ならば、断然「深さ」のほうこそ価値あるものということになるのでしょう。
しかし、アランの演奏を聞きこんでいくと、ふと気づかされます。
オルガンってどうしてあのように多彩な音色を実現できるのかという、ごく初歩的な「はてな?」です。オルガンというのは言ってみればリコーダーみたいなもので、空気を吹き込んで音を鳴らしています。ですから、普通に考えれば音色などは変化するはずはないのです。
しかし、パイプ・オルガンというのは大変なもので、舞台から見えるだけでも多くのパイプが林立しているのですが、その奥に数千本のパイプが並んでいます。
その何千本ものパイプにはそれそれ一つの音程、一つの音色が割り振られているのです。
そして、それらのパイプを組み合わせて多様な音色を作り出すのは演奏者の仕事であり、「レジストレーション」と呼ばれています。
それだけでも大変な作業なのですが、もう一つパイプ・オルガンは持ち運びができず、おまけに、一つずつのパイプ・オルガンには個性のあるというハードルがあります。つまりは、同じ作品であってオルガン奏者は演奏する会場に出向いて、そのオルガンの響きを確認しながら組み合わせを決めていかなければならないのです。
つまりは、アランの多彩な音色によるバッハというものは、ただ華やかに演奏するというだけでなく、その背景にはとてつもない献身とエネルギーが注ぎ込まれているのです。
ここで紹介している最初の全集録音だけで9か所の教会が使われています。その一つ一つの教会や大聖堂のオルガンは独自の音色を持っています。
その独自の音色を持つオルガンに対して一つずつ、譜面を通してバッハと真摯に向きあうことによってあの多彩な音色が引き出されているのです。
華やかで豊かな色彩を描き出すためにはとてつもない献身とエネルギーがもとめられるのです。
ヴァルヒャのバッハ演奏が素晴らしいことは言うまでもありませんが、重くて深いだけがバッハではないのです。
アランのバッハが軽いなどと決めつける前に、ぜひともじっくりと向き合ってみてください。
この演奏を評価してください。
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いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
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