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チャイコフスキー:交響曲第7番 変ホ長調(ボガティレフ編)

ユージン・オーマンディ指揮 フィラデルフィア管弦楽団 1962年録音



Tchaikovsky:Symphon No.7 in E-flat major [1.Allegro brillante]

Tchaikovsky:Symphon No.7 in E-flat major [2.Andante]

Tchaikovsky:Symphon No.7 in E-flat major [3.Vivace assai]

Tchaikovsky:Symphon No.7 in E-flat major [4.Allegro maestoso]


チャイコフスキーのメロディ・ーメドレー

チャイコフスキーの交響曲第7番と聞いて「何じゃそれ?」と思われた方も多かったでしょう。
チャイコフスキーの交響曲は第6番までで、その初演からわずか9日後にチャイコフスキーはこの世を去っているのです。この突然の死は長く「自殺」と考えられいましたが、最近ではコレラおよびその余病である尿毒症、肺気腫による心臓衰弱が死因だと言われています。

とにかく、どちらにしても、初演から亡くなるまでの9日間の間に「第7番」の交響曲なんて書けるわけがないのです。
と言うことで、この交響曲は第6番の「悲愴」の後に続く交響曲ではなくて、第5番の交響曲を完成させた後に着手しながらも放棄された交響曲をベースにした作品なのです。

チャイコフスキーはこの作品を作曲しているときに「この交響曲の究極の本質は、人生である」と語っていたようなので、この未完成の作品は「交響曲 人生 変ホ長調」等とよばれていたそうです。チャイコフスキーはこの作品について「この交響曲の究極の本質は、人生である。第1楽章は、仕事に対する衝動や情熱、それに自信。短くしなければならない(挫折の結果としての最後の死)。第2楽章は愛、第3楽章は落胆、第4楽章は死(やはり短く)」と述べていたそうです。
そう言えば、「悲愴」に関してもそのテーマに関して何も語ろうとしなかったチャイコフスキーなのですが、ただ一言「人生について」と述べていました。
その意味では、この二つの交響曲はは同じテーマを取り上げたものだと思われるのですが、そのテーマを掘り下げるにはどこか本質的に訂正不可能なものを感じて最初の作品は放棄され、新たに第6番の交響曲に取り組むことになった言うことなのでしょう。

後に、チャイコフスキーはこの放棄した作品をピアノ協奏曲(第3番)に仕立て直そうとしたのですが、それもまた突然の死によって未完となっています。
と言うことで、結果として完成されたのは第1楽章「アレグロ・ブリランテ」だけでした。

ところが、それでは勿体ないと言うことか、1950年代にロシアの作曲家セミヨン・ボガティレフがこの曲を4楽章の交響曲として編曲し、「交響曲第7番変ホ長調」として発表しました。
実は、この作品はチャイコフスキーの弟子であったタネーエフによって緩徐楽章と終楽章のスケッチを補筆と編集が加えられてピアノと管弦楽のための「アンダンテとフィナーレ」として出版されていました。
ボガティレフはこのタネーエフの「アンダンテとフィナーレ」にさらに手を加えて第2、第4楽章とし、さらに第3楽章にはチャイコフスキーの「ピアノのための18の小品」作品72の第10曲「幻想的スケルツォ」を管弦楽編曲したものを用いました。

つまりは、チャイコフスキーが「この交響曲の究極の本質は、人生である」と述べた言葉などは全く無視をして、いわば耳あたりのよいチャイコフスキーのメロディーメドレーになっていると言われても仕方のない「完成版」だったのです。よって、今もってこの「ボガティレフ版」の評判はあまりよろしくありません。
ところが、オーマンディがフィラデルフィア管とこの「ボガティレフ版」の交響曲第7番を録音したので、一気に世に知られるようになりました。しかし、専門家の間ではやはり評判は悪くその後オーマンディに続く人はほぼ皆無だったようです。


「序曲1812年」のような世界

それにしても、オーマンディというのはよく言えばレパートリーがとんでもなく広い指揮者であり、悪く言えばゲテモノ食いとも言えるでしょう。
あのウェーベルンの「夏の日」なんてのはオーマンディがいなければ世に出なかったでしょうし、このチャイコフスキーの交響曲第7番に至っては、ほとんど後に続く人もいなかったのですから、偉大と言えば偉大です。

そして、実際に聞く方もかなりのゲテモノ趣味ではあると思うのですが、聞いてみれば見事なフィラデルフィアサウンドでこの上もなくゴージャスな世界が広がっているで、それはそれで十分に楽しめます。
おそらく、オーマンディはほとんど知られていないけれども、フィラデルフィアのオケの機能をフルに発揮するのに相応しい作品を渉猟していたのでしょう。そして、その結果見つけ出されたのがウェーベルンの「夏の日」であり、このチャイコフスキの交響曲第7番だったのかもしれません。

そして、さらに感心させられるのはただただ「華麗」なだけでなく、すこしでも立派な交響曲に聞こえるようにあれこれ手を加えているようなのです。どうせ、もとがかなりいい加減な補筆版なのですからそう言う配慮は大歓迎です。
その結果として、ただただ華麗なだけのチャイコフスキー・メドレーで終わることなく、そこからさらに一押ししてスペクタクルな世界にまで盛りあげているのです。
ある人はこの録音をある意味で「序曲1812年」のような世界だと記していましたが、まさに言い得て見事です。

そして、こういう音楽を何ら恥じることなく堂々とやってみせるオーマンディも偉いのです。

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