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クレンペラー(Otto Klemperer) |ベートーベン:交響曲第7番イ長調 作品92
ベートーベン:交響曲第7番イ長調 作品92
クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1955年10月4〜6日録音
Beethoven:交響曲第7番 イ長調 作品92 「第1楽章」
Beethoven:交響曲第7番 イ長調 作品92 「第2楽章」
Beethoven:交響曲第7番 イ長調 作品92 「第3楽章」
Beethoven:交響曲第7番 イ長調 作品92 「第4楽章」
深くて、高い後期の世界への入り口
「不滅の恋人」は「アマデウス」と比べるとそれほど話題にもなりませんでしたし、映画の出来そのものもいささか落ちると言わなければなりません。しかし、いくつか印象的な場面もあります。(ユング君が特に気に入ったのは、クロイツェル・ソナタの効果的な使い方です。ユング君はこの曲が余りよく分からなかったのですが、この映画を見てすっかりお気に入りの曲になりました。これだけでも、映画を見た値打ちがあるというものです。)
それにしても、「アマデウス」でえがかれたモーツァルトもひどかったが、「不滅の恋人」でえがかれたベートーベンはそれに輪をかけたひどさでした。
第9で、「人類みな兄弟!!」と歌いあげた人間とは思えないほどに、「自分勝手」で「傲慢」、そしてどうしようもないほどの「エキセントリック」な人間としてえがかれていました。一部では、あまりにもひどすぎると言う声もあったようですが、ユング君は実像はもっとひどかったのではないかと思っています。
偉大な音楽家達というものは、その伝記を調べてみるとはっきり言って「人格破綻者」の集まりです。その人格破綻者の群の中でも、とびきりの破綻者がモーツァルトとベートーベンです。
最晩年のぼろ屑のような格好でお疾呼を垂れ流して地面にうずくまるベートーベンの姿は、そのような人格破綻者のなれの果てをえがいて見事なものでした。
不幸と幸せを足すとちょうど零になるのが人生だと言った人がいました。これを才能にあてはめると、何か偉大なものを生み出す人は、どこかで多くのものを犠牲にする必要があるのかもしれません。
この交響曲の第7番は、傑作の森と言われる実り豊かな中期の時期をくぐりぬけ、深刻なスランプに陥ったベートーベンが、その壁を突き破って、後期の重要な作品を生み出していく入り口にたたずむ作品です。
ここでは、単純きわまるリズム動機をもとに、かくも偉大なシンフォニーを構築するという離れ業を演じています。(この課題に対するもう一つの回答が第8交響曲です。)
特にこの第2楽章はその特徴のあるリズムの推進力によって、一つの楽章が生成発展してさまをまざまざと見せつけてくれます。
この楽章を「舞踏の祝祭」と呼んだのはワーグナーですが、やはり大したものです。
そしてベートーベンはこれ以後、凡人には伺うこともできないような「深くて」「高い」後期の世界へと分け入っていくことになります。
忘れ去られるには惜しい一連のモノラル録音
クレンペラー&フィルハーモニア管とのベートーベンと言えば、57年〜61年にかけてステレオ録音されたシリーズを思い浮かべるのが一般的です。そして、それらがクレンペラーが残した最良のベートーベンであることも事実です。
しかし、そのステレオ録音の前に、同じコンビで3番、5番、7番だけがモノラルで録音されていたことを知る人は少ないようです。
ステレオ録音による全集が収録される前にモノラルで3曲だけ録音されていたというのは、今から考えると何とも中途半端な話です。
しかし、EMIが「ステレオ録音」に対して懐疑的だった事を思い出せば、以下のような構図は読み取れると思います。
おそらくは、EMIにとっての黄金のコンビとも言うべきクレンペラー&フィルハーモニア管によるベートーベンの交響曲全集を彼らはモノラルで録音を始めたのでしょう。55年当時、すでに「ステレオ録音」なる「怪しげな技術」もあらわれていたのですが、そんなものを彼らは歯牙にもかけなかったはずです。
しかし、時代はEMIの思惑を裏切って、録音の主流は「モノラル録音」から怪しげな「ステレオ録音」に移行していきました。EMIの録音スタッフは慌てたはずです。そこで、この全集をモノラル録音で押し切るのはさすがにまずいと判断して、途中からステレオ録音に切り替えたものと思われます。そして、時代が一気にモノラルからステレオに移行する中で、売れ筋の3番や5番がモノラルのままではまずいと判断して、再度ステレオによる録音がなされたものと思われます。
結果として55年に録音された3つのモノラル録音は実質的にお蔵入りとなり、長く忘れ去られた状態になってしまいました。
もちろん、憶測の域は出ませんが、大きくは外れていないでしょう。
しかし、あらためて一連のモノラル録音を聴き直してみると、忘れ去るには「惜しい」と思わせる魅力を持っていることに気づきます。
とりわけ、3番「エロイカ」に関しては明らかにモノラル録音の方優れているように思います。と言うか、クレンペラーによるベートーベン演奏の最良のものの一つといっていいほどの出来だと断言できます。
この、凄まじいまでの熱気とオーラを発するようなエロイカは、そうそう他で聞けるものではありません。
5番と7番に関しては、トータルで判断するとステレオ録音の方が優れていると言えそうです。
ひと言で言えば、モノラルの方が「軽い」演奏になっています。ただし、誤解の無いように言い添えておきますが、その「軽い」というのは、ステレオ録音の方が常軌を逸したほどの「重さ」を持っているからであって、ノーマルな人々による演奏と比べれば十分に重厚なベートーベンになっています。
特に7番に関しては、あの異常なまでの遅さと重厚さを持ったステレオ録音に違和感を感じる人ならば、かえってこの程度の方が気持ちよく聞けるのかもしれません。どちらにしても、一般的は判断基準からすれば立派な演奏です。
それからもう一つ、この時期のEMIのモノラル録音のクオリティの高さに関しては特筆しておくべきでしょう。
正直言って、初期のステレオ録音は音場を広げることに腐心しすぎて響きの薄いものがたくさんありました。そう言う下手なステレオ録音と比べれば、この時期のEMIのモノラル録音ははるかにクオリティが高かったと断言できます。
そして、彼らにすれば、モノラルによる録音スタイルを「完成」させたと言う自負があったからこそ「ステレオ録音」という新しい技術に懐疑的にならざるを得なかったのかもしれません。まさに「成功」は「失敗」への第一歩と言うことです。
とにかく、長く日の目を見なかったこれら一連のモノラル録音がパブリックドメインになることで再び日が当たるようになったことは喜ばしいことです。
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よせられたコメント 2025-08-17:cappucino 1955年の第7録音では、主セッションはモノラルでしたが、裏セッションとして別室でステレオ録音の実験が行われていました。しかし、音質的にはモノラル録音の方が明らかに優れたものでした。また、演奏的にもおそらくモノラルと実験ステレオは別テイクで、モノラル版の方が充実して聴こえます。
CD時代になって、EMIは1955年第3・5・7の録音をリリースしましたが、第7については実験ステレオ録音も別途リリースしました。
そして、その後のクレンペラーの公式ベートーヴェン全集では、第7は1955年実験ステレオ録音が採用されるようになりました。その後、1955年モノラル第7は、クレンペラー全集にも収録されず完全御蔵入りとなっています。実験ステレオより音質がいいのに、なぜでしょうか? 理由の一部は、第3楽章の編集ミスにあります。
編集ミスの例として、上記第3楽章の 3分50秒から10秒間聴いてみてください。
その後、1960年第7 (ステレオ) を第3楽章を 4分00秒から聴いてみてください。
http://www.yung.jp/yungdb/op.php?id=1554&category_id=2
両者を比較すると、1955年第7モノラル番の編集ミスがひとつ確認できます。
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