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パウル・バドゥラ=スコダ(Paul Badura-Skoda)|モーツァルト:ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調, K.254(Mozart:Divertimento in B-flat major, K.254)
モーツァルト:ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調, K.254(Mozart:Divertimento in B-flat major, K.254)
(P)パウル・バドゥラ=スコダ (Cello)アントニオ・ヤニグロ (Violine)ジャン・フルニエ 1956年発行(Antonio Janigro:(P)Paul Badura-Skoda (Violine)Jean Fournier Released on 1956)
Mozart:Divertimento in B-flat major, K.254 [1.Allegro assai]
Mozart:Divertimento in B-flat major, K.254 [2.Adagio]
Mozart:Divertimento in B-flat major, K.254 [3.Rondo. Tempo di menuetto]
ハイドンからさらに前へ一歩薦めた作品

ヴァイオリンソナタがヴァイオリン助奏つきのピアノソナタであったように、ピアノ三重奏曲という形式であても基本は伴奏つきのピアノソナタでした。それは何もモーツァルトだけに限ったことではなく、同時代のハイドンやその他の作曲においても同様でした。
しかし、モーツァルトは自分自身もその様にとらえていながら、出来上がった作品を見ればピアノとヴァイオリンは同等のパートナーとして旋律と伴奏を分け合っています。さすがに、チェロはバス楽器として低声部を支えることに徹していますが、それでも時々ハッとするような重要なメロディラインを担当したりもします。
ディヴェルティメント(ピアノ三重奏曲第1番) 変ロ長調 K.254
モーツァルトは控えめに「ディヴェルティメント」と記しているのですが、本質的にはピアノ三重奏曲ですので、今日では一般的には「ピアノ三重奏曲第1番 変ロ長調 K.254」と記されることの方が多いです。
モーツァルトという人は基本が職業音楽家ですから、どこからか注文があったり、もしくは自らが演奏会を開くためか、つまりは何らかの需要があってはじめて作曲という行為を行います。ところが、この作品に関しては注文があった形跡もありませんし、何らかの演奏会で演奏された形跡もありません。
ですから、モーツァルトにしては珍しいことなのですが、おそらくは仲間内の楽しみのために書かれたものではないかと推測されています。
この作品でもヴァイオリンはそれなりの腕前は要求されますが、チェロに関して言えばバス楽器に徹していますので、これを削除してヴァイオリンソナタとして演奏してもほとんど不都合のない音楽になっています。さらに言えば、ヴァイオリンを削除しても音楽的損失はそれほど大きくはないように見えます。その意味では、「ピアノ三重奏曲≒伴奏つきピアノソナタ」と言う、この時代の常識に収まった作品です
モーツァルト自身は「ディヴェルティメント」と記した第1番を作曲してから、彼自身はこのジャンルから遠ざかります。ところが、1786年から1788年にかけて、おそらくは音楽愛好家の集まりで演奏することを目的として5曲もの三重奏曲が生み出されます。そして、それらは、伴奏つきのピアノソナタにしか過ぎなかった「K.254」とは異なって、三つの楽器の間で対話が交わされる三重奏曲へと進化してるのです。
準常設のピアノ・トリオ
ピアノ・トリオと言うものはなかなか難しいものです。パスキエ・トリオみたいな弦楽トリオよりは作品のレパートリーは多いのでしょうが、それでも常設で活動するとなるとなかなか難しいものがあるようです。
ボザール・トリオの様な存在は珍しくて、古いところではカザルス・トリオとか100万ドルトリオ等に代表されるようにリストの寄せ集めみたいなもスタイルが一般的でした。レーベルにしても作品が地味なだけに、ソリストのネームヴァリューでレコードを売るというのが一つの戦略だったのでしょう。
その意味では、このヤニグロ、スコダ、フルニエという組み合わせは常設ではないにしても、ソリストの寄せ集めというレベルをこえた準常設(そんな言葉はありませんが・・・)に近い存在だったような気がします。
有名な100万ドルトリオではハイフェッツとルービンシュタインの折り合いが悪くて争いが絶えず、その間にはさまれたチェロのフォイアマンが仲裁にはいるというのが良くあったというのはよく知られた話です。
まあ、それがソリストとしての意地みたいなものなのですから、争いが絶えないのは当然と言えば当然であり、そう言うぶつかり合いの中で生まれる音楽もまた楽しではあります。
しかし、落ちついた端正な佇まいで純度の高い演奏を聞きたいときにはいささか灰汁が強すぎます。
一人、一人にソリストとしての器量がありながら、その3人が常設のトリオのように息がピッタリ合った組み合わせとしてはヤニグロ、スコダ、フルニエという組み合わせは理想に近いのかもしれません。
おそらくこの3人を並べてみればこんな感じでしょうか。
スコダは若くしてカラヤンに見いだされて世に出て、イェルク・デームスやフリードリヒ・グルダとともに「ウィーン三羽烏」と呼ばれて人気を博しそれに相応しい実力を持っていたが、未だ若造。
ヴァイオリンのフルニエと言えば兄のチェリストであるピエール・フルニエの弟と言われることが多くていささか影の薄い存在です。そのためか世間ではソリストとしてもすこしばかり柔な雰囲気は否定できず等と言われるのですが、この組み合わせで聞かせる彼の演奏は十分に引き締まったものです。
そして、ヤニグロは当時「世界最高のチェリスト」と呼ばれるほどの実力と人気を持っていました。
位置関係から見れば誰がどう見てもヤニグロがリーダーなのです。しかしながら面白いのは、ピアノ・トリオというのは、モーツァルトなどが典型ですが、ピアノが主でありとりわけチェロは縁の下の力持ちという作品が多いのですが、ヤニグロはそう言う作品でも嫌な顔一つ見せず地味な仕事に徹していることです。
もちろん、それがシューベルトやブラームスのようにチェロが存分に活躍するような作品になっても、ヤニグロという人はトリオとしてのアンサンブルを優先して自分だけが目立とうという意志は全くなかったようなのです。
そして、この顔合わせで、ハイドン、モーツァルト、ベートーベンという古典派のピアノ・トリオから始まって、シューベルト、ブラームスからドヴォルザークあたりまで数多くの録音を残してくれているというのは有り難い話です。
この残された録音の多さがソリストの寄せ集めではなくて準常設のピアノ・トリオと言いたくなる所以なのです。
そのおかげで、このトリオの演奏は安心して聞いていることができます。そしかしながら、そう言う安心感は裏返してみれば突出した魅力には欠けると言うことでもあり、結果として圧倒的な支持を集めることは難しいと言うことでもあります。
例えばハイフェッツが仕切った50年代のピアノ・トリオの録音があまりにもザッハリヒカイトの方に傾いていたのとは好対照を成しています。もちろん、どちらが良いかなどと言う話はするつもりはありませんが、それでもこういう落ちついたゆったりとした佇まいの音楽が聞けるというのは有り難いことです。
彼らの演奏はどれをとっても端正でありながらも、録音も50年代初頭としては十分に優秀であり、ロマンティックなヨーロピアンテイストを堪能することが出来ます。
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