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バッハ:二声のインヴェンション BWV 772-786

(P)マルセル・メイエル 1948年1月3〜9日&25日録音



Bach:二声のインヴェンション 「第1番」

Bach:二声のインヴェンション 「第2番」

Bach:二声のインヴェンション 「第3番」

Bach:二声のインヴェンション 「第4番」

Bach:二声のインヴェンション 「第5番」

Bach:二声のインヴェンション 「第6番」

Bach:二声のインヴェンション 「第7番」

Bach:二声のインヴェンション 「第8番」

Bach:二声のインヴェンション 「第9番」

Bach:二声のインヴェンション 「第10番」

Bach:二声のインヴェンション 「第11番」

Bach:二声のインヴェンション 「第12番」

Bach:二声のインヴェンション 「第13番」

Bach:二声のインヴェンション 「第14番」

Bach:二声のインヴェンション 「第15番」


一所懸命に励むものは誰でも、このぐらいにはなれるのだ。

いったいどれほどの子どもがピアノの前に座ってこの作品を嫌々演奏したことでしょう。しかし、その責任は決してバッハにあるのではなくて指導者の側にあります。

バッハは偉大な音楽家である同時に、類い希な教育者でもありました。どこかで読んだ話では、日本の某女性ピアニストは弟子を取らない理由として「下手なピアノを聞くと自分まで下手になる」とのたまったそうですが、バッハは決してその様なことは言いませんでした。
それどころか、弟子に音楽を教えることは、彼にとっては作曲や演奏と同じくらい重要なことであり続けました。そして、その様な教育活動のために、弟子の課題に合わせた練習曲を山のように作りました。それは、この2声と3声の練習曲だけでなく、フランス組曲やイギリス組曲、パルティータ、そしてピアノの旧約聖書とも称される平均率グラヴィーア曲集も、基本的には弟子たちの教育のために作曲されたものです。
それは、ロマン派の時代に大量に生み出された無味乾燥な練習曲とは全く異なるものでした。そして、その事は、シンプルな上にもシンプルな2声のインヴェンションにおいてすら、高い音楽性によって指の運動にとどまらない価値を持っていました。

しかし、それはバッハという「偉大な音楽家」が生み出したものだから音楽的にすぐれていたという簡単な話ではなく、まさに「献身」といっていいほどの情熱と誠実さをもって教育に取り組んだからこそその様なすぐれた作品に昇華したのだと言うことを見落としてはいけません。
その事は、この作品集の末尾に
「まず2声部をきれいに弾き分けるだけでなく、さらに上達したならば、オブリガートの3声部を正しくそして上手に処理」するという指の運動だけでなく、同時に、
「優れた楽想(インヴェンション)を得るだけでなく、それらを巧みに展開すること、そしてとりわけカンタービレの奏法を身につけ、それとともに作曲の予備知識を得る」ことを目的としていると述べていることからも明らかです。
つまり、バッハにとってのグラヴィーアの練習とは単なる指の運動ではなくて、それと同時に音楽に対する認識を深めるものでなくてはいけなかったのです。

そして、バッハは成果の上がらない弟子たちに常にこう語っては励ましていたそうです。
「わたしは一所懸命に励んだのだ。一所懸命に励むものは誰でも、このぐらいにはなれるのだ。」

子どもたちに指の運動だけを教えるのではなくて、そこにこめられたバッハの精神も伝えることができれば、どれほど多くの子どもたちが救われることでしょう。

<二声のインヴェンション BWV 772-786>
インヴェンション 第 1 番 ハ長調 BWV 772
インヴェンション 第 2 番 ハ短調 BWV 773
インヴェンション 第 3 番 ニ長調 BWV 774
インヴェンション 第 4 番 ニ短調 BWV 775
インヴェンション 第 5 番 変ホ長調 BWV 776
インヴェンション 第 6 番 ホ長調 BWV 777
インヴェンション 第 7 番 ホ短調 BWV 778
インヴェンション 第 8 番 ヘ長調 BWV 779
インヴェンション 第 9 番 ヘ短調 BWV 780
インヴェンション 第 10 番 ト長調 BWV 781
インヴェンション 第 11 番 ト短調 BWV 782
インヴェンション 第 12 番 イ長調 BWV 783
インヴェンション 第 13 番 イ短調 BWV 784
インヴェンション 第 14 番 変ロ長調 BWV 785
インヴェンション 第 15 番 ロ短調 BWV 786

<三声のシンフォニア BWV 787-801>
シンフォニア 第 1 番 ハ長調 BWV 787
シンフォニア 第 2 番 ハ短調 BWV 788
シンフォニア 第 3 番 ニ長調 BWV 789
シンフォニア 第 4 番 ニ短調 BWV 790
シンフォニア 第 5 番 変ホ長調 BWV 791
シンフォニア 第 6 番 ホ長調 BWV 792
シンフォニア 第 7 番 ホ短調 BWV 793
シンフォニア 第 8 番 ヘ長調 BWV 794
シンフォニア 第 9 番 ヘ短調 BWV 795
シンフォニア 第 10 番 ト長調 BWV 796
シンフォニア 第 11 番 ト短調 BWV 797
シンフォニア 第 12 番 イ長調 BWV 798
シンフォニア 第 13 番 イ短調 BWV 799
シンフォニア 第 14 番 変ロ長調 BWV 800
シンフォニア 第 15 番 ロ短調 BWV 801


6人組の女神・・・?

Meyerは「メイエル」と読むそうです。私はすっかり「マイヤー」だと思って、いくらGoogleで検索をかけても出てこないので、かつて掲示板で「ほとんど忘れ去られたピアニストと言えます。」なんて書いてしまいました。(^^;汗汗・・・
しかし、よく調べてみると一部では熱烈なファンが存在するようで、例えば「クラシック名盤 この一枚」なんて本の中では何人かの人たちが熱いオマージュを送っています。

さらに調べてみると彼女には「6人組の女神」というニックネームがあったそうなのです。この「6人組」というのはルイ・デュレ、アルテュール・オネゲル、ダリウス・ミヨー、ジェルメーヌ・タイユフェール、フランシス・プーランク、ジョルジュ・オーリックの事で、フランス音楽の新しい夜明けを告げたグループとして「ロシア5人組」になぞらえて付けられたものです。
メイエルはこの6人組と深い親交があり、彼らの作品を積極的に取り上げました。もちろん、それ以外にもラヴェルやドビュッシーというフランス近代の作品が彼女の得意分野であり、それ以外にはラモーやクープランというフランスの古典作品を好んでいました。要するに、かなりの「ご当地主義」といえるレパートリーです。そして、クラシック音楽の王道(?)とも言うべきドイツ・オーストリア系の音楽は本当にごくわずかしか取り上げないという、この業界ではかなりの異色な存在だったようです。

ここで紹介しているラヴェルの録音は1954年の3月に一気にまとめて録音したもので、どの録音を聞いてもコンサートグランドの能力をフルに発揮したラヴェル作品に相応しい豪快な演奏です。
1897年生まれですからこの時メイエル57歳です。テクニック的には微塵の破綻もなく若々しい精神に満ちあふれています。ところが、この3年後に彼女は亡くなっています。原因は分かりませんが、録音がモノラルからステレオに切り替わるこの時期に亡くなったことが、そしてかなり偏ったレパートリーだったことが、後の彼女の忘却に結びついたことは間違いないでしょう。
もしも、あと数年長生きして(それでも70歳にもなりません!)、ある程度まとまった数のステレオ録音を残していれば、そしてモーツァルト演奏でも素晴らしい演奏を聴かせてくれたことを思えば、そのステレオ録音の中に独墺系の作品がいくつか混じっていれば、疑いもなく彼女の名前はハスキルなどと並んで評価されたはずです。何よりも、彼女にはハスキルがもっていなかったパワフルさがあふれています。
しかし、それはあまりにも贅沢な無い物ねだりなのでしょう。彼女の本質はどこまで行ってもフランス人です。そして、モノラル録音の時代とともにこの世を去ったのです。そんな彼女の業績が50年の時を経てパブリックドメインとなることで復活し、再びこの女性ピアニストに光が当たるようになったことを感謝すべきなのでしょう。

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