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シャーンドル・ジェルジ(Gyorgy Sandor) |バルトーク:15のハンガリー農民歌, Sz.71(Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71)
バルトーク:15のハンガリー農民歌, Sz.71(Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71)
(P)ジェルジ・シャーンドル:1951年1951年9月12日録音(Gyorgy Sandor: Recorded on September 12, 1951) Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [1. Rubato (D minor, 26 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [2. Andante (D dorian, 47 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [3. Poco rubato (Fo phrygian, 13 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [4. Andante (Fo dorian, 16 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [5. Scherzo. Allegro (C dorian, 47 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [6. Ballad (Theme with variations). Andante (G dorian, 43 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [7. Allegro (C dorian, 51 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [8. Allegretto (G dorian, 24 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [9. Allegretto (A mixolydian, 16 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [10. L'istesso tempo (B dorian, 32 bars)]Bartok:15 Hungarian Peasant Songs [
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [11. Assai moderato (A dorian, 36 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [12. Allegretto (A minor, 21 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [13. Poco piu vivo (D dorian, 18 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [14. Allegro (A major, 39 bars)]
Bartok:15 Hungarian Peasant Songs, Sz.71 [15. Allegro(Bm mixolydian, 103 bars)]
バルトークが民俗音楽の研究を通じて得た成果が結実した曲集です
この作品では、民謡のメロディを単に伴奏するのではなく、メロディそのものから和声(ハーモニー)を導き出すというバルトークの手法がより緻密になっています。
民謡が持つ音階(教会旋法など)に合わせ、伝統的なドミナント進行を避け、4度構成和音や不協和音を巧みに配置しています。
「哀歌」で見られるような、暗く深い響きから、後半の舞曲で見られる鋭く輝かしい響きまで、ピアノ一台で表現される色彩が非常に豊かです。
特に、第6曲の「古い主題によるバラードと変奏」は白眉と言えます。
ひとつの悲劇的な主題が、変奏されるたびに表情を変え、力強く、時には絶望的な高まりを見せます。
バルトークが民俗音楽の中に見た「人間の根源的な感情」が凝縮された傑作です。
また、第7曲から最後までは、メドレーのように連続して演奏されることが多いセクションです。
特に第14曲や第15曲の「バグパイプ(ドゥダ)」を模した左手の持続音(ドローン)や、打楽器的な連打は、バルトークのピアノ語法の真骨頂。最後は圧倒的な熱狂の中で幕を閉じます。
この曲集は15の短い曲で構成されていますが、性格ごとに大きく4つのグループに分けられます。
古い哀歌:第1~4曲
非常に内省的で、ハンガリーの古い層の民謡に基づいた悲歌。
このセクションは、ハンガリーの最も古い層に属する「パルランド・ルバート(話し言葉のような自由なリズム)」の歌に基づいています。
第1曲(Rubato): 低音域で重々しく始まり、深い悲しみを湛えた曲です。
第2曲(Andante): 1曲目よりは少し動きがありますが、依然として内省的。民謡の節回しを装飾音で再現しています。
第3曲(Poco rubato): 祈りのような、あるいは嘆きのような旋律が、バルトーク特有の「少し濁った、しかし透明感のある和音」で彩られます。
第4曲(Andante): 哀歌の締めくくり。静かに、しかし力強い意志を感じさせる終止を迎えます。
スケルツォ:第5曲
第5曲(Scherzo - Allegro):曲集の中で唯一独立したスケルツォです。前4曲の沈鬱な空気を一変させる、悪戯っぽく、トゲのあるリズムが特徴。
拍子が頻繁に入れ替わり、聴き手を翻弄するようなユーモアがあります。
バラード:第6曲
第6曲(Ballade -主題と変奏):この曲集の精神的な支柱です。古い悲劇的な物語を歌った民謡を主題に、変奏が繰り返されます。
最初は淡々と物語が始まりますが、徐々に和音が厚くなり、最後にはピアノの全音域を使った圧倒的なフォルテッシモへと到達します。
民俗的な素材が、ベートーヴェンの変奏曲にも匹敵するようなドラマチックな芸術作品へと昇華されています。
古い舞曲:第7~15曲
第7曲(Allegro): 軽快なステップで始まる舞曲。
第8曲(Andante): 少し落ち着いた、歩くようなテンポの踊り。
第9曲(Allegretto): スタッカートが効いた、小気味よいリズム。
第10曲(L'istesso tempo): 前曲のリズムを引き継ぎつつ、色彩が変わります。
第11曲(Assai moderato): 重厚な和音の響きが特徴的。
第12曲(Allegretto): 優雅さと野性味が同居する旋律。
第13曲(Poco allegretto): 少しひねったリズムが心地よい小品。
第14曲(Allegro):
バグパイプ(ドゥダ)の音を模した左手の持続音が鳴り響き、村の広場での狂宴を思わせます。
第15曲(Allegro molto):フィナーレ。目まぐるしく動く右手のパッセージと、強烈なシンコペーション。
最後は最高潮のテンションのまま、鮮やかに全曲を閉じます。
バルトークの精神的な継承者
シャーンドルはブダペストのリスト音楽院でバルトークにピアノを、ゾルターン・コダーイに作曲を学びました。考えてみれば、これは凄いことです。
さらに、バルトークから直接指導を受けた数少ない門下生の一人だと言うことで、彼ほどバルトークの演奏スタイルや音楽思想を身につけたものはいませんでした。
バルトークのピアノ音楽と言えば暴力的で打楽器的なものと誤解されがちです。
しかし、シャンドールはその様な当時の風潮に異を唱え、バルトークが重視していた「歌」と「柔軟性」を示してみせませした。
シャーンドルの演奏を聞いていて、まず感心させられるのは透明度の高い響きです。
彼は自身の演奏哲学を「On Piano Playing(ピアノ演奏の技術)」という著書にまとめるほど、科学的かつ合理的なアプローチを重視していました。
シャーンドルの演奏は、指の力だけで弾くのではなく、腕や肩の重さを効率よく鍵盤に伝えるスタイルでした。
非常に速いパッセージや激しい打楽器的フレーズでも、体全体がリラックスしており、無駄な動きがありませんでした。そのため、長時間の演奏でも音が濁る事はなく常にクリアな輪郭を保ちました。
その事が声部の完璧なバランスとして結実していて、バルトークの音楽の構造を明瞭に聞き取らせてくれます。
また、ハンガリー語を母国語としていたのですから、バルトークの音楽の根っこにあるハンガリー語特有のアクセントやリズムの把握の仕方も完璧だったようです。
バルトークならではの鋭いリズムの中にも、民謡のようなしなやかな旋律線を描き出す手腕はシャンドールならではのものでした。まさに、シャンドールこそがバルトークの「最も忠実な代弁者」だったのです。
そして、二人の親密な関係はバルトークがナチスの台頭を逃れてアメリカへ亡命した後も続きました。
バルトークの葬儀にはわずか10名ほどしか参列者がいなかったのですが、その10名の中にシャーンドルの姿もありました。彼は、師であるバルトークが最も苦しい時期に寄り添いました。
そして、バルトークの「精神的な継承者」として演奏活動を続け、ピアノ作品の全曲録音を二度にわたって行いました。
シャンドールを聞かずしてバルトークは語るなかれ・・・と言っても、言い過ぎではないかと思います。
この演奏を評価してください。
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