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レイボヴィッツ(Rene Leibowitz) |ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:Orcheste de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on 1960)
Maurice Ravel:La valse
沈みゆく船
この音楽を聞いていると、いつもタイタニック号のイメージが浮かび上がってきます。
華やかな舞踏会が繰り広げられる豪華な客船、しかし、その船はまさに沈みゆこうとしています。
それでも、人々は、そんなことを夢にも思わずに踊り続けている。
パッと聞くだけなら、この上もなく華やかで明るいだけの音楽に聞こえます。でも、その音楽を聞いていると、その底に何とも言えない苛立ちのような不安感が流れています。それは、おそらくは上辺の華やかさと底辺の不気味さが妙に同居していて、その不気味さが華やかな音楽の合間に時々ぬっと顔を出すからでしょう。
こういう不気味さは結構コワイ。
そして音楽はラストに向けてやけくそのようにテンポを速めながら、最後は砕け散るように幕を閉じます。
よく言われるように、この作品にはラヴェル自身の第一次世界大戦への従軍とその後の心的外傷後ストレス障害(PTSD)が間違いなく反映しています。
ラヴェルはこの作品に対して次のような標題を掲げています。
渦巻く雲の中から、ワルツを踊る男女がかすかに浮かび上がって来よう。雲が次第に晴れ上がる。と、A部において、渦巻く群集で埋め尽くされたダンス会場が現れ、その光景が少しずつ描かれていく。B部のフォルティッシモでシャンデリアの光がさんざめく。1855年ごろのオーストリア宮廷が舞台である。
おそらく、氷河に衝突したのがフランツ・ヨーゼフ1世治下の1850年代であり、その結果としての沈没が第一次世界大戦であったという思いがあったのでしょうか。
でも、これが他人事とは思えない現状も怖いなぁ。
高い分析力と良い意味での「緩さ」が上手くマッチしている
レイボヴィッツの録音活動の少なくない部分を「リーダーズ・ダイジェスト」が占めています。
「リーダーズ・ダイジェスト」は月刊の総合ファミリー雑誌だったのですが、書店売りは行わずに会員制の通信販売というスタイルをとっていました。この販売方法とアメリカ至上主義の編集方針を貫くことでアメリカ最大の発行部数を誇る雑誌へと成長していきました。
そして、その会員制の通信販売というスタイルを生かしてレコード制作にも乗り出します。
しかし、基本的に「リーダーズ・ダイジェスト」は雑誌社ですから録音のノウハウなどは持ち合わせていないので、その制作はRCAに丸投げしていました。
その丸投げのおかげで、同じような販売方法をとった「コンサートホールソサエティ」と較べると格段に録音のクオリティが高いという思わぬ幸運をもたらしました。
ただし、その性格上、クラシック音楽の分野ではコアなファンではない人々を対象としたために、いわゆる「クラシック音楽名曲集」のようなものが主流でした。
実は、この事に長く思い当たらず、小品の録音ばかり押し付けられるレイホヴィッツはレーベルの中では軽くあつかわれすぎていると考えていました。
しかし、実際は彼にベートーベンの交響曲の全曲録音を依頼された事が異例の厚遇であり、本来の仕事はそう言う売れ筋の名曲小品の録音だったのです。
そして、そういう待遇に対してかつては「レイボヴィッツにとって名曲小品の録音ばかりが続くというのはそれほど楽しい仕事ではなかった事でしょう」などと書き、「しかし、食っていくためには必要な仕事だったのでしょう」などと記しておりました。
しかし、最近になってそう言う小品集をじっくりと聞いてみると考えが随分と変わってきました。
よくよく聞いてみると、一連の小品の中にはオーケストラ編曲したものが多く、それらの編曲が実に面白いのです。レコードには編曲者のクレジットはないのですが、間違いなくレイホヴィッツの手になるものでしょう。
さらには、管弦楽の小品もじっくり聞いてみるとあれこれと手が入っているようで、原典通りに演奏しているとは思えません。それもまたレイホヴィッツ自身が手を入れたのではないでしょうか。
つまりは、「楽しい仕事ではなかった」のではなく、逆に結構楽しんで、そして意外なほど真剣に取り組んでいたように思えてきたのです。
確かに、彼にあてがわれたオーケストラは「インターナショナル交響楽団」とか「ロンドン新交響楽団」、「パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団」などと言う「怪しげ」なものばかりです。
しかし、決して下手なオケではありません。
レイホヴィッツは本質的に「指揮者」ではなく「作曲家」でした。
同じような存在としてマルケヴィッチがいますが、彼の場合は「作曲もする指揮者」だったように思います。
両者はともに作品を分析する能力に関しては折り紙つきですが、その分析したものをオーケストラに明確に伝え、統率する能力に関しては大きな差があったと言わざるをえません。
マルケヴィッチの場合は自分が納得できる表現に辿りつくまでは容赦なくオーケストラを絞り上げますが、レイボヴィッツの指揮には良い意味での緩さがありました。
ですから、「インターナショナル交響楽団」とか「ロンドン新交響楽団」のような怪しげなオケも、レイホヴィッツのような指揮者ならば伸び伸びと楽しんで演奏できたことでしょう。そして、その楽しさにレイホヴィッツも乗っかって、「十二音技法の使徒」と呼ばれたほどの人物が、まるでポップスミュージックのようにクラシック音楽を演奏したのです。
ただし、忘れてはいけないのは、どれほど外連味にあふれた演奏であっても、そこにはしっかりと背筋が通っていることです。この二律背反しそうなことを見事に融合していることこそがレイホヴィッツの魅力です。
ですから、そういう楽しい音楽を聞き手に提供することは、決して「食っていくための仕方のない仕事」などではなかったはずです。
もっとも、現代音楽の作曲家にとっては「食っていくためにの必要な仕事」であった事も事実でしょうが…。
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