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ギオマール・ノヴァエス(Guiomar Novaes)|ショパン:ノクターン Op.27&Op.32(Chopin:Nocturnes for piano, Op.27&Op.32)
ショパン:ノクターン Op.27&Op.32(Chopin:Nocturnes for piano, Op.27&Op.32)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)
Chopin:Nocturnes for piano, Op.27, No.1 in C sharp minor
Chopin:Nocturnes for piano, Op.27, No.2 in D flat major
Chopin:Nocturnes for piano, Op.32, No.1 in B major
Chopin:Nocturnes for piano, Op.32, No.2 in A flat major
劇的息吹と情熱と、そして壮大さ

ノクターンはロマン派の時代に盛んに作られたピアノ小品の一ジャンルです。
ロマン派の時代になると、厳格な規則に縛られるのではなく、人間の感情を自由に表現するような小品がたくさん作られ、当初はバガテルとか即興曲などと呼ばれていました。
その様ないわゆる「性格的小品」の中から「ノクターン」と称して独自の性格を持った作品を生みだしたのがイギリスのジョン・フィールドです。
フィールドはピアニストであり作曲家でもあった人物ですが、低声部の伴奏にのって高音部が夜の静寂を思わせるような優雅なメロディを歌う作品を20曲前後作り出しました。そして、このフィールドが作り出した音楽形式はショパンに強い影響を与え、彼もまた「ノクターン」と称する作品をその生涯に21曲も作り出しました。
初期の作品は「ショパンはフィールドから直接は借用はしていないが、その旋律や伴奏法をまねている」と批評されたりしていますが、時代を追うにつれて、フィールドの作品にはない劇的な性格や情熱が付け加えられて、より多様な性格を持った作品群に変貌していきます。
そして、、今日では創始者のフィールドの作品はほとんど忘れ去られ、ノクターンと言えばショパンの専売特許のようになっています。
後年、ショパン研究家として著名なハネカーは次のように述べています。
「ショパンはフィールドの創案になる形式をいっそう高め、それに劇的息吹と情熱と、そして壮大さを加えた。」
まさにその通りです。
ショパン:ノクターン Op.27
一般的に第7番と第8番と言われる二つのノクターンは「作品27」としてまとめられて1836年に出版されています。作曲されたのはおそらくその前年ではないかとする説が有力なようです。
- 第1番はショパンのノクターンの中でももっとも陰鬱な雰囲気を持った作品です。
そして、曲そのものはそれほど長くはないのですが、中間部にはベートーベン的な雰囲気もあってある種の雄大さも感じさせる作品です。ここにはショパンという希有のピアニストの天分が遺憾なく発揮され、この時代の一つの頂点とも言える作品と言っていいでしょう。
そして、この作品あたりからは、ノクターンという形式の創始者であるフィールドから完全に離脱して、ショパンならではの世界が現れてきています。
- 第2番に関しては多くの説明が必要ないほどに、有名な作品です。
おそらく、誰もが耳にしたことがある音楽であり、その魅惑的な旋律はショパンの中でもとびきりのものと言えるでしょう。
そして、こういう作品こそがテクニックだけではどうしようもないショパン作品の演奏の難しさを教えてくれます。
ショパン:ノクターン Op.32
この二つのノクターンがまとめられた「作品32」は比較的演奏される機会の少ない作品のようです。それは、作品27のように、聞けばすぐに魅了されるような音楽ではなくて、どこか穏やかな情緒を聞き手に対して親しく伝えようとする音楽になっているからでしょう。
- 第1番は旋律がしばしば中断され、その間に突然フェルマータが挿入され、そして、その後はカデンツァが一つの楽句を終わらせるという変わった構造を持っています。
そして、最後は非常に劇的なコーダで締めくくられます。
- 第2番はある意味ではもっとも演奏家たちから無視されている作品と言えます。
実際、ここにはショパンらしい独創性は乏しく、それどころかフィールドのノクターンを思わせるような部分が多いことは否定できないようです。それ故に全体としてはいささか退屈と言わざるを得ません。
しかし、主題の再現に微妙は表情を加えたり、中間分では半音高めて反復したりと、ある意味ではショパンの実験的な試みも垣間見られます。
考え抜かれた演奏
ギオマール・ノヴァエスはかなりまとまった数のショパン作品を録音しています。この時代を考えれば(今の時代も同じかも)当然と言えば当然なのかもしれませんが、やはり聞き手にとっては嬉しい事実です。
ノヴァエスは「ブラジルの偉大なピアニスト」といわれることもあり、「パンパスの女パデレフスキー」とよばれることも多かった人です。このパンパスとは言うまでもなく、ブラジル南部に広がる草原地帯のことです。幼い頃に育ったブラジルの風土や文化は彼女の心の奥深い部分に根を張っている事は否定できないでしょう。
しかし、10代半ばでパリに移り住み、パリ音楽院でイシドール・フィリップに学ぶ事でピアニストとしての基礎を固め、その後はアメリカを中心に、とりわけニューヨークを拠点に活動を行いましたから、音楽的には生まれ故郷のブラジルとの関わりはそれほど大きくはないと思われます。
ですから「パンパスの女パデレフスキー」という異名の「パンパス」の方は音楽的にはあまり影響はあたえておらず、重要なのは、「女パデレフスキー」の方でしょうか。つまり、彼女が19世のロマン主義的なピアニストを連想させる事の方が重要かもしれません。
つまりは、彼女の出発点はヴィルトゥオーゾ的ピアニストとしてのものであり、優れたテクニックで数多くの作品を楽々と弾きこなす存在だったと言うことです。
そして、何よりも丹念に旋律線を歌い込むピアニストで、それもまた同時に情緒過多になることなく無理のない歌い回しの枠を崩すことはありませんでした。
その前提として、彼女は考え抜くピアニストであったと言うことは忘れてはいけないでしょう。
確かに、彼女は実演において二度と同じようには演奏しなかったと言われるのですが、それは気のおもむくままに演奏したというのではなく、常に考え続けて、その考えたことを次のコンサートでは披露したと言うことなのです。
「考えるな、感じろ!」とはブルー・スリーの言葉ですが、クラシック音楽の世界では真逆で「感じるな、考えろ!」が基本とならなければいけません。感じるがままに演奏してものになるほどこの世界は単純ではありません。
ヴィルトゥオーゾ的ピアニストで「パンパスの女パデレフスキー」などという異名を奉られれば、いかにも感情のおもむくままにピアノを弾いていたような誤解を与えるのですが、彼女のベースは考え抜くことでした。
すでに紹介済みなのですが、セルやクレンペラーなどを従えて多くの協奏曲を演奏したり録音したのは、そう言う彼女の姿勢が高く評価されていたからです。
そして、録音されることを目的とした演奏であるならば、それまでの演奏活動の中で考え抜いた事の決算という意味をもっていたはずです。ですから、結果としてその演奏は高雅で情感溢れるものであり、時にはショパンのパッションが力強く描き出されたりもするのですが、かといってそれは鬼面人を驚かすようなものではありません。
そして、ショパンのように次から次へと新しい録音が登場してくるような世界では、その演奏が十分に魅力的であったとしても、その上に積み重なっていく大量の録音によっていつかは覆い尽くされ聞き手の視野から消えていくのが宿命みたいなものです。
おそらく、ショパンのような音楽は存命中のピアニストが一番有利なのでしょう。亡くなってしまえば、いつかは聞き手の視野から見えなくなっていくのが宿命です。もちろん、例えばコルトーのような例外はありますが。
それだけに、こういうサイトではそう言う埋もれた録音の山の中からノヴァエスのような存在を拾い出すのが大きな役割なのでしょう。
あらためて彼女のショパン演奏を聞けば、どれもこれも安心してショパンの世界に浸れる安定感と叙情性に溢れています。
この演奏を評価してください。
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