Home |
レオニード・コーガン(Leonid Kogan) |J.S.バッハ:2台のヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043(Bach:Concerto in D minor for two Violin and Orchestra, BWV 1043)
J.S.バッハ:2台のヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043(Bach:Concerto in D minor for two Violin and Orchestra, BWV 1043)
(Vn)レオニード・コーガンエ&リザヴェータ・ギレリス:ルドルフ・バルシャイ指揮 モスクワ室内管弦楽団 1959年録音(Leonid Kogan & Elizaveta Gilels:(Con)Rudolf Barshai Moscow Chamber Orchestra Recorded on 1959) Bach:Concerto in D minor for two Violin and Orchestra, BWV 1043 [1.Vivace]
Bach:Concerto in D minor for two Violin and Orchestra, BWV 1043 [2.Largo, ma non tanto]
Bach:Concerto in D minor for two Violin and Orchestra, BWV 1043 [3.Allegro]
3曲しか残っていないのが本当に残念です。
バッハはヴァイオリンによる協奏曲を3曲しか残していませんが、残された作品ほどれも素晴らしいものばかりです。(「日曜の朝を、このヴァイオリン協奏曲集と濃いめのブラックコーヒーで過ごす事ほど、贅沢なものはない。」と語った人がいました)
勤勉で多作であったバッハのことを考えれば、一つのジャンルに3曲というのはいかにも少ない数ですがそれには理由があります。
バッハの世俗器楽作品はほとんどケーテン時代に集中しています。
ケーテン宮廷が属していたカルヴァン派は、教会音楽をほとんど重視していなかったことがその原因です。世俗カンタータや平均率クラヴィーア曲集第1巻に代表されるクラヴィーア作品、ヴァイオリンやチェロのための無伴奏作品、ブランデンブルグ協奏曲など、めぼしい世俗作品はこの時期に集中しています。そして、このヴァイオリン協奏曲も例外でなく、3曲ともにケーテン時代の作品です。
ケーテン宮廷の主であるレオポルド侯爵は大変な音楽愛好家であり、自らも巧みにヴィオラ・ダ・ガンバを演奏したと言われています。また、プロイセンの宮廷楽団が政策の変更で解散されたときに、優秀な楽員をごっそりと引き抜いて自らの楽団のレベルを向上させたりもした人物です。
バッハはその様な恵まれた環境と優れた楽団をバックに、次々と意欲的で斬新な作品を書き続けました。
ところが、どういう理由によるのか、大量に作曲されたこれらの作品群はその相当数が失われてしまったのです。現存している作品群を見るとその損失にはため息が出ます。
ヴァイオリン協奏曲も実際はかなりの数が作曲されたようなですが、その大多数が失われてしまったようです。ですから、バッハはこのジャンルの作品を3曲しか書かなかったのではなく、3曲しか残らなかったというのが正確なところです。
もし、それらが失われることなく現在まで引き継がれていたなら、私たちの日曜日の朝はもっと幸福なものになったでしょうから、実に残念の限りです。
コーガンという人は相手との関係で最も音楽が上手く成り立つポイントを探って、そこへ全員を導いていこうとする
このバッハの協奏曲(2台のヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV 1043)を、指揮者とオケを違えた2種類の録音を発見しました。
ルドルフ・バルシャイ指揮 モスクワ室内管弦楽団 1959年録音
オットー・アッカーマン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1955年録音
ヴァイオリンの独奏はともにコーガンとエリザヴェータ・ギレリス(ギレリスの妹でコーガンの妻)です。
物事は比較することによって見えてくるものが多いのですが、これなどはその典型でしょう。
アッカーマンと言えば、私などはEMIレーベルで伴奏指揮者をつとめていたというイメージが強いのですが、ジョージ・セルに指揮を学び、ヨーロッパ各地の歌劇場で活躍した指揮者でもあったようです。そう言う意味では、「マエストロ」とは呼ばれなかったとしても、立派な「カペルマイスター(楽長)」であったことは間違いないようです。
それだけに、この低声部を豊かに鳴らした分厚い響きによるバッハというのは、50年代における常識的なバッハ像だったと言えるはずです。
それと、バルシャイ&モスクワ室内管弦楽団の響きを較べれば、それはもう「異世界」の響きだと言わざるを得ません。
もちろん、モスクワ室内管弦楽団の編成はフィルハーモニア管と較べればはるかに小ぶりでしょうから単純に比較は出来ませんが、それでもその精緻極まるアンサンブルは驚嘆すべきものです。
フィルハーモニア管の響きが悠々と流れる川の響きだとすれば、モスクワ室内管弦楽団の響きはその川が一瞬にして凍りついたような感覚におそわれます。
しかし、その冷たさがモーツァルトではどこか違和感として感じたものが、バッハだとそれを受容してしまいます。
モーツァルトは壊れやすく、バッハは壊れにくいと言われますが、その事をまざまざと見せつけられるような演奏です。
そして、もう一つ感心させられるのは、悠々と流れる川ならばそれに相応しいヴァイオリン演奏を披露し、それが凍りつけばそれに相応しいヴァイオリン演奏を披露するコーガンの驚くべき柔軟性です。
アッカーマンの指揮はふっくらとした響きでコーガンのヴァイオリンを包み込んでくるので、コーガンもまたその響きに相応しく丸みのある響きで造形していきます。
実は、コーガンはこのアッカーマンの伴奏指揮でモーツァルトのヴァイオリン協奏曲も録音しているのですが、そこでもアッカーマンの指揮はコーガンのヴァイオリンを実に暖かく包み込んでいます。
そうすると、バルシャイの指揮の時のようなナイフを突きつけるような響きはすっかり姿を消してしまっているのです。
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番 ト長調 K.216~オットー・アッカーマン指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1955年録音
おそらく、相手に合わせていかようにも変身できるというのは、その根っこに途轍もなく凄いテクニックを持っているからなのでしょう。そして、それほどのテクニックを持っているならば常にオレがオレがと前に出て来てもおかしくないのですが、コーガンという人は相手との関係で最も音楽が上手く成り立つポイントを探って、そこへ全員を導いていこうとするのです。
コーガンと言えば「ヴァイオリンの鬼神」なんて言われたりもしますし、その突き抜けた表現主義的な音楽の作り方をすることもあって恐そうに思えたりもするのですが、その内実はとってもいい人だったのではないかと思ってしまうのです。
この演奏を評価してください。
よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
5580 Rating: 5.5 /10 (26 votes cast)
よせられたコメント 2024-06-18:tomari 素晴らしいです
でも、2台のピアノのための協奏曲として同じ作品を良く耳にしています。
たしか、2台のピアノの... は3曲ありました。
同様な対応になっているかもしれないですね。
失礼しました。
【最近の更新(10件)】
[2024-11-04]
ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調, Op.90(Brahms:Symphony No.3 in F major, Op.90)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-11-01]
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調「冗談」, Op.33, No.2,Hob.3:38(Haydn:String Quartet No.30 in E flat major "Joke", Op.33, No.2, Hob.3:38)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月11日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 11, 1933)
[2024-10-29]
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番 ニ短調 Op.108(Brahms:Violin Sonata No.3 in D minor, Op.108)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1956年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1956)
[2024-10-27]
モーツァルト:弦楽四重奏曲第16番 変ホ長調 K.428(Mozart:String Quartet No.16 in E-flat major, K.428/421b)
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2024-10-25]
フランク:交響曲 ニ短調(Franck:Symphony in D Minor)
ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1940年1月8日録音(Dimitris Mitropoulos:Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on January 8, 1940)
[2024-10-23]
グリーグ:バラード ト短調, Op.24(Grieg:Ballade in G minor, Op.24)
(P)アルド・チッコリーニ:1964年12月29日録音(Aldo Ciccolini:Recorded on December 29, 1964)
[2024-10-21]
ワーグナー:トリスタンとイゾルデ~前奏曲と愛の死(Wagner:Prelude to Act1 und Isolde's Liebestod from Tristan und Isolde)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ロイヤル・フィルハーモニ管弦楽団 1955年4月録音(Artur Rodzinski:Royal Philharmonic Orchestra Recorded on April, 1955)
[2024-10-19]
ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73(Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73)
アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1952年9月29日&10月1日録音(Arturo Toscanini:The Philharmonia Orchestra Recorded on September 29&October 1, 1952)
[2024-10-17]
ハイドン:交響曲第104番 ニ長調 Hob.I:104 「ロンドン」(Haydn:Symphony No.104 in D major "London")
アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管弦楽団 1950年4月5日&7日録音(Andre Cluytens:Paris Conservatory Concert Society Orchestra Recorded on April 5&7, 1950)
[2024-10-15]
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ長調 Op.100(Brahms:Violin Sonata No.2 in A Major, Op.100)
(Vn)ミッシャ・エルマン:(P)ジョセフ・シーガー 1956年録音(Mischa Elman:Joseph Seger Recorded on 1956)