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アンドレ・クリュイタンス(Andre Cluytens)|ラヴェル:高雅にして感傷的なワルツ(Ravel:Valses nobles et sentimentales)
ラヴェル:高雅にして感傷的なワルツ(Ravel:Valses nobles et sentimentales)
アンドレ・クリュイタンス指揮 パリ音楽院管弦楽団 1962年4月録音(Andre Cluytens:Orchestre de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on April, 1962)
Ravel:Valses nobles et sentimentales [1.Modere]
Ravel:Valses nobles et sentimentales [2.Assez lent]
Ravel:Valses nobles et sentimentales [3.Modere]
Ravel:Valses nobles et sentimentales [4.Assez anime]
Ravel:Valses nobles et sentimentales [5.Presque lent]
Ravel:Valses nobles et sentimentales [6.Assez vif]
Ravel:Valses nobles et sentimentales [7.Moins vif]
Ravel:Valses nobles et sentimentales [8.Epilogue: Lent]
シューベルトをイメージしたようです

「高雅で感傷的なワルツ」というタイトルはラヴェル自身が語っているようにシューベルを意識したものです。シューベルトの「高貴なワルツ」や「34の感傷的なワルツ」が意識されていることは間違いありません。
オーケストラ用に編曲してバレエ曲に仕立てたときも「王政復古期、男心をまどわせる美女の客間」という設定を与えているように、この作品は一見すると回顧趣味に彩られているように見えます。
しかし、回顧趣味に見えるのは表面だけの話で、実際の「音」を耳にすると、その響きという点では実に斬新です。
私は和声の難しいことは分かりませんが、ラヴェルの商標とまで言われた長7度の幻想的な響きがあちこちで聞かれますし、「寒そうに肩をすぼめた羞恥心」と言われた2度の響きもあちこちに散りばめられています。
そこへ、中庸の速さで・・・なんて注意書きをされたりしているので、何だか曲によっては単調な音楽のように聞こえたりします。そう言えば、コルトーがこの作品について「レントラーの連続」と評した事にも納得がいくします。
個人的にはいささか取っつきにくさを感じる作品ではあります。
なお、この作品は8つの曲で構成されているのですが、それぞれが連続して切れ目なしに演奏されます。ただし、個々の曲の性格ははっきりしているので、連続した一つの曲のように聞こえることはありません。
- Modere - tres franc(中庸の速さで)
- Assez lent - avec une expression intense(十分緩やかに)
- Modere(中庸の速さで)
- Assez anime(十分に生き生きと)
- Presque lent - dans un sentiment intime(ほとんど緩やかに)
- Vif(十分活発に)
- Moins vif(活発さを感じて)
- Epilogue - lent(エピローグ 緩やかに)
希有の響き
「モノラルでも録音していたんだ」と最近になって気づいて大いに興味をそそられたと書きながら、肝心のステレオ録音の方の紹介が中途半端になっていることに気づきました。
「マ・メール・ロワ」に「ダフニスとクロエ」、そして、「高雅にして感傷的なワルツ」「スペイン狂詩曲」「道化師の朝の歌」等、ごっそりとぬけていたのですから笑ってしまいます。「とりあえず私の好きな「ボレロ」「ラ・ヴァルス」「亡き王女のためのパヴァーヌ」「クープランの墓」をまずは聞いてみました」と書いていたのですが、その内に興味が他に移り、その間にまだ紹介すべきステレオ録音が残っていることをすっかり失念し、自分の中ではとっくの昔に紹介済みだと思いこんでしまっていたようでした。
人間の思いこみは要注意ですね。
もう一度確認しておきますと、クリュイタンスは61年から62年にかけてラベルの主要な管弦楽曲をまとめて録音しています。英コロンビアはこれを4枚セットの箱入りとして発売したのですが、この初期盤は音の素晴らしさもあって今ではとんでもない貴重品となっているようです。
ただし、このセットは今も通常のCDとして簡単に入手が可能なので、歴史的名演と言われながらもその内容については簡単に検証できちゃうので、いろいろとエクスキューズがつく演奏となっています。
今回、この一連の録音をアップするためにあらためて聴き直してみたのですが、そのエクスキューズについて一言述べておく必要を感じました。
そのエクスキューズとは何かと言えば、最近になって「オケが下手すぎるといわれることに尽きます。
例えば、歴史的名演と言われるボレロなどを聞けばすぐに気がつくのですが、管楽器があちこちで音を外しています。酷いのになると「酔ったオジチャンが、ろれつがまわっていない」という極めて的確な評価が下されていたりします。
そうなんです、昨今の演奏と録音になれてしまった耳からすればあまりにも緩いのです。
そして、その事にはフランスのオケが持っている「あわせる気がない」という本質的な問題が絡んでいます。
フランスのオケというのは、プレーヤー一人一人の腕は確かです。しかし、彼らはその腕を全体のために奉仕するという気はあまり持ち合わせていません。
ですから、リハーサルをしっかりと積み上げて縦のラインをキチンと揃えることにはあまり興味を持っていませんし、そもそもそう言うことに価値を感じないのです。さらに言えば、現在でもフランスのオケのプレーヤーは事前にスコアに目を通すような「面倒くさい」事はやらないようで、慣れていない曲をやるときは変なところで飛び出したりしてもあまり気にしないそうです。
ですから、クレツキなどは「フランスのオーケストラの演奏は練習し過ぎてはいけない」とまでいっているほどです。練習で絞り上げるとやる気がなくなって本番で悲劇的なことを引き起こしてしまうことが多い、と言うのです。
その点で言えば、クリュイタンスという人はそう言うオケの気質を知り尽くして、それをコントロールする術を身につけた人でした。
俺が俺がと前に出たがる管楽器奏者を自由に泳がせながら、それをギリギリのラインで一つにまとめていく腕と懐の深さを持っていました。結果として、トンデモ演奏になる一歩手前で踏ん張りながら、そう言うフランスのオケならではの美質があふれた演奏を実現できました。
ですから、このコンビの録音を「オケの精度」という点だけで見てはいけません。
オケの精度などと言うものは練習で絞り上げればある程度のラインまではどこでも実現可能です。しかし、クリュイタンスとパリ音楽院管弦楽団のコンビが醸し出すこの響きの素晴らしさは、いわゆる「訓練」によって実現できるレベルものではありません。
「あっ、外した。また、外した!!」と思えば落ち着いて聞いていられないかもしれませんが、とりあえずはそう言うことは忘れて、この純度の高い、それでいてふくよかさを失わない希有の響きに身をゆだねれば、この演奏と録音の魅力に納得がいくのではないでしょうか。
そして、その事は録音会場に使われた「Salle Wagram(サル・ワグラム)」の響きの素晴らしさが貢献しています。この「Salle Wagram(サル・ワグラム)」は2005年の爆発事故で往事の面影はなくなってしまいましたが、オケの中で管楽器がクッキリと濁りなく響くことで有名でした。
パリ音楽院管弦楽団の名手たちが腕によりをかけて演奏している様子がはっきりととらえられているのはこの会場のおかげでもありました。
それからこんな事を書けば叱られるかもしれませんが、ラベルやドビュッシーの音楽は下からキチンと煉瓦を積み上げていくような音楽ではありませんから、多少アンサンブルの精度が落ちても気になりません。(気になるかな^^;)それよりは雰囲気勝負ですから、個々の楽器の響きの自由さと美しさこそが命だと思います。
今回追加で紹介する録音もまた、その様な美質に溢れた演奏であり、それらはこのコンビ故に成し遂げられた希有の響きによるラヴェル演奏というべきものです。
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