クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ヴィルヘルム・ケンプ(Wilhelm Kempff)|ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)

ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番 ト長調 作品58(Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58)

(P)ヴィルヘルム・ケンプ:フェルディナント・ライトナー指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1961年6月~7月録音(Wilhelm Kempff:(Con)Ferdinand Leitner Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on June-July, 1961)



Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58 [1.Allegro moderato]

Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58 [2.Andante con moto]

Beethoven:Piano Concerto No.4, Op.58 [3.Rondo. Vivace]


新しい世界への開拓

1805年に第3番の協奏曲を完成させたベートーベンは、このパセティックな作品とは全く異なる明るくて幸福感に満ちた新しい第4番の協奏曲を書き始めます。そして、翌年の7月に一応の完成を見たものの多少の手なしが必要だったようで、最終的にはその年の暮れ頃に完成しただろうと言われています。

この作品はピアノソナタの作曲家と交響曲の作曲家が融合した作品だと言われ、特にこの時期のベートーベンのを特徴づける新しい世界への開拓精神があふれた作品だと言われてきました。
それは、第1楽章の冒頭においてピアノが第1主題を奏して音楽が始まるとか、第2楽章がフェルマータで終了してそのまま第3楽章に切れ目なく流れていくとか、そう言う形式的な面だけではなりません。もちろんそれも重要な要因ですが、それよりも重要なことは作品全体に漂う即興性と幻想的な性格にこそベートーベンの新しいチャレンジがあります。

その意味で、この作品に呼応するのが交響曲の第4番でしょう。
壮大で構築的な「エロイカ」を書いたベートーベンが次にチャレンジした第4番はガラリとその性格を変えて、何よりもファンタジックなものを交響曲という形式に持ち込もうとしました。それと同じ方向性がこの協奏曲の中にも流れています。
パセティックでアパショナータなベートーベンは姿を潜め、ロマンティックでファンタジックなベートーベンが姿をあらわしているのです。

とりわけ、第2楽章で聞くことの出来る「歌」の素晴らしさは、その様なベートーベンの新生面をはっきりと示しています。
「復讐の女神たちをやわらげるオルフェウス」とリストは語りましたし、ショパンのプレリュードにまでこの楽章の影響が及んでいることを指摘する人もいます。
そして、これを持ってベートーベンのピアノ協奏曲の最高傑作とする人もいます。ユング君も個人的には第5番の協奏曲よりもこちらの方を高く評価しています。(そんなことはどうでもいい!と言われそうですが・・・)


この上もなく軽やかな(軽い?)ベートーベン

ソリストにはコンプリートする人としない人に別れるみたいな事を書いたことがあります。その二分法を適用すればケンプは典型的な「コンプリートする人」に分類されます。
しかし、そのコンプリートの仕方は一般的なコンプリートする人と較べれば随分と様子が異なっています。それは、誤解を恐れずに言えば、例えば世界で初めてベートーベンのピア・ソナタの全曲録音青したシュナーベルが「死ぬような思いをした」と吐露したような悲壮感がほとんど感じられないのです。

その事は、ほとんどの人がそれなりの時間をかけてコンプリートを完成させているのに対して、ケンプの場合は一気呵成に全曲録音をしているのです。
実際、ここで紹介しているベートーベンのピアノ協奏曲にしても1961年の6月から7月にかけて一気に録音を仕上げています。

ベートーベンのピアノ協奏曲の全曲録音ともなれば、普通はそれなりの意気込みというか気負いというか、そう言うものが漂うのが普通です。しかし、ケンプのこの全曲録音にはそう言う気負いのようなものは微塵も感じられません。
それどころか、どこにも力の入っていない、この上もない自然体で演奏に臨んでいます。結果として生み出される音楽は良く言えばかるみに溢れたベートーベンであり、悪く言えばあまりにも重量感に欠けた「軽いベートーベン」になっているのです。おそらく、ケンプ以外でこんなベートーベンを録音として世に出せる覚悟のあるピアニストはいないでしょう。

何度も繰り返して恐縮なのですが、ケンプは風に鳴る「エオリアンハープ」です。その風と「エオリアンハープ」は絶妙な調和を見いだしたときにはこの上もなく美しい世界を生み出します。そして、そう言う美しい瞬間はこの録音の中にいくつも見いだすことが出来ます。
しかし、それでも全体としてみれば、この演奏はあまりにも軽すぎて、そこに不満を感じる人がいても不思議ではありません。それよりも、オケの伴奏がそう言うケンプの軽やかさにピッタリと寄りそっていなければとても聞けたものでないことは容易に想像がつきます。

ですから、これはケンプだけでなく指揮を務めたフェルディナント・ライトナーとの合作と言ってもいいほどの演奏です。
協奏曲の魅力と言えばソリストとオケとの切った貼ったの勝負にあることも事実であり、事実そう言う文脈の中で多くの名演が生まれてきました。しかし、ここにあるのはそう言う切った貼ったの世界ではなくて、それとは真逆の方にあるソリストとオケとの完璧な調和の中で生み出される世界なのです。

そう言うことで、ケンプも凄いのですが、あらためてフェルディナント・ライトナーという指揮者の名人的な職人芸にも拍手を送りたいのです。

それから、最後に付け加えておきたいのは、この音源は中古レコードなのですが、盤面の状態があまりよろしくなくてかなりパチパチノイズが混ざります。さてどうしたものかと思ったのですが、賛否両論があっても、それなりに興味深い録音なので敢えてアップすることにしました。そのあたりの音質に関してはご容赦ください。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



5238 Rating: 4.8/10 (154 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2026-06-30]

ハイドン:弦楽四重奏曲第69番 変ロ長調, Op.71, No.1 Hob.3:69(Haydn:String Quartet No.69 in B-flat major, Op.71, No.1 Hob.3:69)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1933年12月12日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on December 12, 1933)

[2026-06-28]

プロコフィエフ:ヴァイオリン・ソナタ第2番 ニ長調 Op.94(Prokofiev:Violin Sonata No.2 In D Major, Op.94)
(Vn)ダヴィド・オイストラフ:(P)ウラディーミル・ヤンポルスキー 1955年5月22日録音(David Oistrakh:(P)Vladimir YampolskyRecorded on May 22, 1954)

[2026-06-26]

ヘンデル:ヴィオラと管弦楽のための協奏曲(偽作)(Handel:Viola Concerto in B Minor)
ルドルフ・バルシャイ指揮&ヴィオラ:モスクワ室内管弦楽団 1959年録音(Rudolf Barshai:(Viola)Rudolf Barshai Moscow Chamber Orchestra Recorded on 1959)

[2026-06-23]

バッハ:教会カンタータ 「すべてはただ神の御心のままに」 BWV72(J.S.Bach:Alles nur nach Gottes Willen, BWV 72
ギュンター・ラミン指揮 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団 トーマス教会少年合唱団 (Org)ハンネス・カストナー (S)(A)トーマス教会少年合唱団よりソリスト (Bass)ハンス・ハウプトマン 1956年2月3日録音(Gunther Ramin:Gewandhausorchester Leipzig Thomanerchor Leipzig (Org)Hannes Kastner (S)Soloists from Thomanerchor Leipzig (A)Soloists from Thomanerchor Leipzigr (Bass)Hans Hauptmann Recorded on February 3, 1956)

[2026-06-21]

アイルランド民謡「ミンストレル・ボーイ」(Rose Plays the Minstrel Boy & Others)
(T)クリストファー・リンチ:(Cello)レナード・ローズ (Flute)ジョン・ワマー (Harp)ローラ・ニューウェル 1947年録音(Christopher Lynch:(Cello)Leonard Rose (Flute)John Wummer (Harp)Laura Newell Recorded on 1947)

[2026-06-19]

ハイドン:弦楽四重奏曲第66番 ト長調, Op.64, No.4, Hob.3:66(Haydn:String Quartet in G major, Op.64, No.4, Hob.3:66)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1937年11月16日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on November 16, 1937)

[2026-06-17]

ベートーベン:リギーニのアリエッタ「恋人よ来たれ」による24の変奏曲 WoO 65(Beethoven:24 Variations on Righini's Arietta Venni amore, WoO 65)
(P)アルフレッド・ブレンデル 1958年&1960年録音(Alfred Brendel:Recorded on 1958 & 1960)

[2026-06-15]

ボッケリーニ:チェロ・ソナタ第1番 イ長調, G.13(Boccherini:Cello Sonata No. 1 in A Major, G. 13)
(Cell)エンリコ・マイナルディ:(P)カルロ・ゼッキ 1952年録音(Enrico Mainardi:(P)Carlo Zecchi Recorded on 1952)

[2026-06-13]

ベートーベン:ピアノ三重奏曲第7番 変ロ長調 「大公」 Op.97(Beethoven:Piano Trio No.7, Op.97 in B-flat major "Archduke")
(Vn)ダヴィド・オイストラフ (P)レフ・オボーリン (Cello)スヴィヤトスラフ・クヌシェヴィツキー 1958年5月9日~10日&12日録音((Vn)David Oistrakh:(P)Lev Oborin (Cello)Sviatoslav Knushevitsky Recorded on May 9-10&12, 1958)

[2026-06-11]

フランツ・シュミット:ピアノ五重奏曲(Schmidt:Piano Quintet in G major)
バリリ四重奏団:(P)イエルク・デムス 1952年録音(Barylli Quartet:(P)Jorg Demus Recorded on 1952)