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ワルター・バリリ(Walter Barylli)|J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調, BWV1041
J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調, BWV1041
(Vn)ワルター・バリリ:ヘルマン・シェルヘン指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1954年録音
Bach:Violin Concerto in A minor, BWV 1041 [1. no tempo indication(Allegro)]
Bach:Violin Concerto in A minor, BWV 1041 [2.Andante]
Bach:Violin Concerto in A minor, BWV 1041 [3.Allegro assai]
3曲しか残っていないのが本当に残念です。

バッハはヴァイオリンによる協奏曲を3曲しか残していませんが、残された作品ほどれも素晴らしいものばかりです。(「日曜の朝を、このヴァイオリン協奏曲集と濃いめのブラックコーヒーで過ごす事ほど、贅沢なものはない。」と語った人がいました)
勤勉で多作であったバッハのことを考えれば、一つのジャンルに3曲というのはいかにも少ない数ですがそれには理由があります。
バッハの世俗器楽作品はほとんどケーテン時代に集中しています。
ケーテン宮廷が属していたカルヴァン派は、教会音楽をほとんど重視していなかったことがその原因です。世俗カンタータや平均率クラヴィーア曲集第1巻に代表されるクラヴィーア作品、ヴァイオリンやチェロのための無伴奏作品、ブランデンブルグ協奏曲など、めぼしい世俗作品はこの時期に集中しています。そして、このヴァイオリン協奏曲も例外でなく、3曲ともにケーテン時代の作品です。
ケーテン宮廷の主であるレオポルド侯爵は大変な音楽愛好家であり、自らも巧みにヴィオラ・ダ・ガンバを演奏したと言われています。また、プロイセンの宮廷楽団が政策の変更で解散されたときに、優秀な楽員をごっそりと引き抜いて自らの楽団のレベルを向上させたりもした人物です。
バッハはその様な恵まれた環境と優れた楽団をバックに、次々と意欲的で斬新な作品を書き続けました。
ところが、どういう理由によるのか、大量に作曲されたこれらの作品群はその相当数が失われてしまったのです。現存している作品群を見るとその損失にはため息が出ます。
ヴァイオリン協奏曲も実際はかなりの数が作曲されたようなですが、その大多数が失われてしまったようです。ですから、バッハはこのジャンルの作品を3曲しか書かなかったのではなく、3曲しか残らなかったというのが正確なところです。
もし、それらが失われることなく現在まで引き継がれていたなら、私たちの日曜日の朝はもっと幸福なものになったでしょうから、実に残念の限りです。
気品に溢れたバッハ
ワルター・バリリと言えば、どうしてもバリリ四重奏団のリーダー、そして、ウィーンフィルのコンサート・マスターというイメージがまず浮かんでしまいます。なにじろ、1939年にはウィーン・フィルのコンサートマスターに昇格し(なんと、その時バリリは18歳!!)、1945年からはウィーン・フィルの首席奏者でバリリ四重奏団を結成します。しかし、1959年に右肘を痛めた事でカルテットの活動を動停をせざるを得なくなるのですが、その後もコンサートマスターとしての勤務は継続し、1966年から1969年まではをウィーン・フィルの楽団長を務めました。そして、1972年にウィーン・フィルを辞職した後は教育活動に尽力をして100歳をこえる長寿を全うした。
バリリこそは、まさにまさにウィーン・フィルの「顔」とも言うべき存在でした。
そのために、協奏曲でソリストをつとめた録音はほとんど残っていないようで、ソリストとしての活動の大部分は室内楽の分野に集中していました。
ですから、このバッハの協奏曲でソリストをつとめているバリリというのはかなり珍しいのではないでしょうか。
しかし、このバッハの二つの協奏曲を聞くとき、バリリというのが協奏曲のソリストとしてもいかに素晴らしい魅力を持っていたかと言うことに驚かされます。「上手い」というのは当然のことですが、何よりもその艶やかな響きには言いしれぬ「気品」が溢れています。
そして、当然の事ながらオーケストラの息もまたピッタリです。
さらに言えば、指揮をつとめるシェルヘンのサポートも見事なものです。
50年代の前半ですから、オーケストラの響きは分厚い低声部を支えにした伝統的な響きですが、細部の細部まで疎かにすることなく描き出しているので、決して鈍重になることはありません。貧血気味のピリオド楽器による演奏は言うまでもなく、キリリと引き締めることに価値を見いだしたその後の流れとも異なる、非常に貴重なウィーンフィルの響きと言えます。
それだけに、もっとたくさんの協奏曲でソリストをつとめて優れた録音を残してほしかったと思うのですが、おそらくそう言う方向に進もうとする前に右肘を故障してしまったのかもしれません。
1959年と言えば、バリリは未だ38歳の時なのですから、実に残念なことです。
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