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フルトヴェングラー(Wilhelm Furtwangler)|チャイコフスキー:交響曲第4番
チャイコフスキー:交響曲第4番
フルトヴェングラー指揮 ウィーンフィル 1951年1月8〜10日録音
Tchaikovsky:交響曲第4番「第1楽章」
Tchaikovsky:交響曲第4番「第2楽章」
Tchaikovsky:交響曲第4番「第3楽章」
Tchaikovsky:交響曲第4番「第4楽章」
絶望と希望の間で揺れ動く切なさ

今さら言うまでもないことですが、チャイコフスキーの交響曲は基本的には私小説です。それ故に、彼の人生における最大のターニングポイントとも言うべき時期に作曲されたこの作品は大きな意味を持っています。
まず一つ目のターニングポイントは、フォン・メック夫人との出会いです。
もう一つは、アントニーナ・イヴァノヴナ・ミリュコーヴァなる女性との不幸きわまる結婚です。
両方ともあまりにも有名なエピソードですから詳しくはふれませんが、この二つの出来事はチャイコフスキーの人生における大きな転換点だったことは注意しておいていいでしょう。
そして、その様なごたごたの中で作曲されたのがこの第4番の交響曲です。(この時期に作曲されたもう一つの大作が「エフゲニー・オネーギン」です)
チャイコフスキーの特徴を一言で言えば、絶望と希望の間で揺れ動く切なさとでも言えましょうか。
この傾向は晩年になるにつれて色濃くなりますが、そのような特徴がはっきりとあらわれてくるのが、このターニングポイントの時期です。初期の作品がどちらかと言えば古典的な形式感を追求する方向が強かったのに対して、この転換点の時期を前後してスラブ的な憂愁が前面にでてくるようになります。そしてその変化が、印象の薄かった初期作品の限界をうち破って、チャイコフスキーらしい独自の世界を生み出していくことにつながります。
チャイコフスキーはいわゆる「五人組」に対して「西欧派」と呼ばれることがあって、両者は対立関係にあったように言われます。しかし、この転換点以降の作品を聞いてみれば、両者は驚くほど共通する点を持っていることに気づかされます。
例えば、第1楽章を特徴づける「運命の動機」は、明らかに合理主義だけでは解決できない、ロシアならではなの響きです。それ故に、これを「宿命の動機」と呼ぶ人もいます。西欧の「運命」は、ロシアでは「宿命」となるのです。
第2楽章のいびつな舞曲、いらだちと焦燥に満ちた第3楽章、そして終末楽章における馬鹿騒ぎ!!
これを同時期のブラームスの交響曲と比べてみれば、チャイコフスキーのたっている地点はブラームスよりは「五人組」の方に近いことは誰でも納得するでしょう。
それから、これはあまりふれられませんが、チャイコフスキーの作品にはロシアの社会状況も色濃く反映しているのではとユング君は思っています。
1861年の農奴解放令によって西欧化が進むかに思えたロシアは、その後一転して反動化していきます。解放された農奴が都市に流入して労働者へと変わっていく中で、社会主義運動が高まっていったのが反動化の引き金となったようです。
80年代はその様なロシア的不条理が前面に躍り出て、一部の進歩的知識人の幻想を木っ端微塵にうち砕いた時代です。
ユング君がチャイコフスキーの作品から一貫して感じ取る「切なさ」は、その様なロシアと言う民族と国家の有り様を反映しているのではないでしょうか。
ライブのような熱気に満ちた演奏です
フルトヴェングラーのレパートリーの中では周辺部に属するもので、それ故にあまり注目を浴びない録音です。
しかし、51年という年はスタジオ録音でテープも用いられ始めたようで、飛躍的に音質がよくなっています。これはフルトヴェングラーを聴く上で注目しておいていい事実です。
つまりいかがわしい復刻盤は音質は貧弱ですが、このマスターテープからおこしたものはかなりの優秀録音だと言うことです。
と言うことで、ここでお聞きいただける録音ですが、半世紀も前のものとは思えないほどの素晴らしさです。
多少低域が不足してハイ上がりな気はしますが、そこまで注文するのは贅沢というものでしょう。
演奏もスタジオ録音とは思えないほどの熱気に満ちたものです。
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よせられたコメント
2010-04-09:せいの
- なんと切ない音楽でしょう・・・。1楽章、2楽章の切ないことはこの上ないです。ウィーンフィルの歌心たっぷりの弦楽器とフルトヴェングラーのじっくり歌わせる指揮で、切ない音楽に仕上がっています。1楽章中間部分の長調のワルツの部分でさえ、うつろな感じで切なさがにじんでいます。2楽章は究極の切ない音楽です。暖かい弦楽器が歌心一杯に歌い上げ、フルトヴェングラーも充分にオーケストラを歌わせています。落ち込んだときにこの2楽章で、どっぷりと切なさにつかるのも、一興かもしれません(笑)。3楽章は一転して、ウィーンフィルの魅力たっぷりの愉悦感にあふれる音楽になっています。中間部の木管楽器のなど、何とチャーミングなことでしょう。最終楽章はフルトヴェングラー特有のアチェランドが有効で、熱狂を味わえます。ただし、結構抑制が効いていて、あまり期待すると肩透かしを食います。全体に落ち着いた演奏で、倒れる前のフルトヴェングラーにしては珍しいなあ、という印象です。
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