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ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77

(Vn)ヘンリク・シェリング ピエール・モントゥ指揮 ロンドン交響楽団 1958年録6月18日~20日録音



Brahms:Violin Concerto in D major, Op.77 [1Allegro non troppo]

Brahms:Violin Concerto in D major, Op.77 [2.Adagio]

Brahms:Violin Concerto in D major, Op.77 [3.Allegro giocoso, ma non troppo vivace]


ヴァイオリンを手にしてぼんやりと立っているほど、私が無趣味だと思うかね?

この言葉の前には「アダージョでオーボエが全曲で唯一の旋律を聴衆に聴かしているときに・・・」というのがくっつきます。
サラサーテの言葉です。(^^)
もっとも、その前にはさらに「ブラームスの協奏曲は素晴らしい音楽であることは認めるよ、しかし・・・」ということで上述の言葉が続きます。

おそらくこの言葉にこの作品の本質がすべて語られていると思います。
協奏曲と言う分野ではベートーベンが大きな金字塔をうち立てましたが、大勢はいわゆる「巨匠風協奏曲」と言われる作品が主流を占めていました。
独奏楽器が主役となる聞かせどころの旋律あちこちに用意されていて、さらに名人芸を披露できるパッセージもふんだんに用意されているという作品です。

イタリアの作曲家、ヴィオッティの作品などは代表的なものです。
ただし、彼の22番の協奏曲はブラームスのお気に入りの作品であったそうです。親友であり、優れたヴァイオリニストであったヨアヒムと、一晩に二回も三回も演奏するほどの偏愛ぶりだったそうですから世の中わからんものです。

しかし、それでいながらブラームスが生み出した作品はヴィオッティのような巨匠風協奏曲ではなく、ベートーベンの偉大な金字塔をまっすぐに引き継いだものになっています。
その辺が不思議と言えば不思議ですが、しかし、ブラームスがヴィオッティのような作品を書くとも思えませんから、当然と言えば当然とも言えます。(変な日本語だ・・・^^;)

それから、この作品は数多くのカデンツァが作られていることでも有名です。一番よく使われるのは、創作の初期段階から深く関わり、さらに初演者として作品の普及にも尽力したヨアヒムのものです。
それ以外にも主なものだけでも挙げておくと、


  1. レオポルド・アウアー

  2. アドルフ・ブッシュ

  3. フーゴー・ヘールマン

  4. トール・アウリン

  5. アンリ・マルトー

  6. ヤッシャ・ハイフェッツ



ただし、秘密主義者のヴァイオリニストは自らのカデンツァを出版しなかったためにこれ以外にも数多くのカデンツァが作られたはずです。
この中で、一番テクニックが必要なのは想像がつくと思いますが、ハイフェッツのカデンツァだと言われています。


偉大な指揮者のサポートを得て全身全霊でストイックに演奏しきっている

ピエール・モントゥー、ヘンリック・シェリング、そしてロンドン響と言う組み合わせでケネス・ウィルキンソンなどのDeccaのメンバーが録音を行ったというのは、考えてみれば珍しい事です。この背景にはアメリカのレーベルCapitolがそれまでのDeccaとの提携関係を破棄してEMIの傘下に入ってしまい、それに対抗するためにDeccaとRCAが提携関係を結んだという事情があります。
そのために、RCAと契約を結んでいる演奏家を起用してDeccaが録音を行うことが可能となったというわけです。そして、その提携関係はそれほど長くは続かなかったのですが、その幸運を十分に享受できたのがこの録音であることは言うまでもありません。

まずは悠然たるテンポとスケールで開始されるモントゥーによる導入部を聞くだけで、これが幸せな結果を招くであろう事は察しがつきます。
この時代のシェリングと言えばミュンシュ&ボストン響などと共演をしていて、それはそれで決して悪い演奏ではないのですが、それでもミュンシュという指揮者は喜んで合わせものの指揮をするような人ではありません。もっとも、例えばシェリングと共演したヤイコフスキーの協奏曲などを聞くと世間で言われるほどひどいわけではないのですが、それでもかなり好き勝手に振る舞っていることは否定できません。

当然のことながら、ソリストにとってはいささか迷惑な部分もあるのですが、取りあえずちゃんと合わせましたよ!と言うようなオケよりはやり甲斐はあるでしょう。
しかし、それと比べれば、モントゥーの指揮はノーブルなシェリングの響きを優しく包み込むように、実に愛おしげにサポートしています。おそらく、これほど見事にソロ楽器をサポートしているオーケストラ演奏というのは希有の部類にはいるのではないでしょうか。
そして、そのあまりの「厚遇」に逆に緊張してしまったのか、シェリングの方が常にも増して生真面目な演奏に徹してしまったのがいささか残念と言えば残念だったのかもしれません。

しかし、それは逆から見れば、そう言う偉大な指揮者のサポートを得て、それこそ全身全霊でストイックに演奏しきったともいえるのであって、それ以上のものを求めるのは野暮というものかもしれません。
また、シェリングはこの後に、ドラティ&ロンドン響やハイティンク&コンセルトヘボウなどとも録音を重ねているので、ともすればこの古い録音這わすわれられがちになっています。
しかし、それら以上にこの録音は忘れてはいけないことだけは間違いありません。

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