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ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番

P:ホロヴィッツ コーツ指揮 ロンドン交響楽団 1930年12月29&30日録音



Rachmaninov:ピアノ協奏曲第3番 「第1楽章」

Rachmaninov:ピアノ協奏曲第3番 「第2楽章」

Rachmaninov:ピアノ協奏曲第3番 「第3楽章」


難曲中の難曲

今では映画「シャイン」のおかげで、2番のコンチェルトよりも有名になってしまったかもしれません。なんといっても、古今東西のあらゆるピアノ協奏曲の中でこれほどまでに演奏が困難なものはちょっと思い当たりませんし、映画でもその点を強調して主人公はその困難さにとりつかれて精神に異常をきたしてしまうのですから、話題性は満点です。

しかし、どうなんでしょうか?最近のバカウマの若手連中なら誰でも弾きこなすのではないでしょうか。確かに難しいことは難しいでしょうし、とりわけ2種類あるカデンツァのうち「ossia」と呼ばれる方はとんでもなく難しいものです。それでも、演奏するだけなら何とかやり遂げるだけの能力は今の若手ならほとんどが身につけているのではないでしょうか。

それはさておき、この作品を聞けば、派手さはあるものの2番のコンチェルトで聞けたロシアの郷愁のようなものは後退していることに気づかされます。それは、この作品がラフマニノフのアメリカへの演奏旅行のために創作されたという経緯とも関係しているのかもしれません。当時のアメリカではとにかく派手な名人芸がもてはやされていましたから、この作品ではラフマニノフの芸人魂が爆発したかのような作品が出来上がってしまったのではないでしょうか。
とにかくピアノという楽器を使ってどこまで圧倒的に音楽を盛り上げることができるのかという課題に対する一つの模範解答がここにあることは間違いありません。
ただしなのです。
この作品に限ったことではないのですが、私には彼の作品に散漫でとりとめのない雰囲気を感じ取ってしまうのです。その散漫さが2番のコンチェルトでは影を潜めていたのが、ここでまたあふれ出してきたように感じられます。
ピアノの響きはどこまでも分厚くて重厚であり、それがここぞという場面ではクレッシェンドに続くクレッシェンドで音楽を圧倒的に盛り上げていくのですが、聞き終わった後になんと見えない空虚さを感じてしまいます。その芸人魂には感服するのですが、果たして歴史の審判に耐えて芸術作品として後世に残るのかと聞かれれば自信を持ってイエスとは言えないユング君です。


怪物的な演奏

ホロヴィッツはこの作品を最もたくさん録音しているピアニストだそうです。そのなかでも、この録音はもっとも若いときの演奏なのですが、いやはやその凄まじさは言語に絶するものがあります。(さらに言えば、この作品の録音としてもこれが世界初のもだそうです。一番最初の録音がこれでは、後のピアニストは怖くて録音なんかできなかったでしょうね。)
おそらくこの作品にもっとも相応しい演奏はこのようなものなでしょう。ここには小難しい理屈などは入り込む余地はまったくありません。鋼鉄のタッチがうなりをあげて驀進する様はピアノの芸の極致を見せつけてくれます。
彼は51年にもライナーとのコンビですぐれた演奏を聞かせてくれています。録音のことも考えればそちらの方がベストなのでしょうが、この30年盤で聞くことができた人間離れした名人芸は後退していて、どちらといえば叙情性が前面にでた演奏になっています。
そういう意味において、この怪物的な演奏は音質的にはかなり苦しいものがあるのですが、なおその歴史的価値は減じていないといえます。

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