クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|アラウ(Claudio Arrau)|チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23

P:アラウ ガリエラ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1960年4月録音



Tchaikovsky:ピアノ協奏曲第1番 変ロ長調 作品23 「第1楽章」

Tchaikovsky:ピアノ協奏曲第1番 変ロ長調 作品23 「第2楽章」

Tchaikovsky:ピアノ協奏曲第1番 変ロ長調 作品23 「第3楽章」


ピアノ協奏曲の代名詞

ピアノ協奏曲の代名詞とも言える作品です。
おそらく、クラシック音楽などには全く興味のない人でもこの冒頭のメロディは知っているでしょう。普通の人が「ピアノ協奏曲」と聞いてイメージするのは、おそらくはこのチャイコフスキーかグリーグ、そしてベートーベンの皇帝あたりでしょうか。

それほどの有名曲でありながら、その生い立ちはよく知られているように不幸なものでした。

1874年、チャイコフスキーが自信を持って書き上げたこの作品をモスクワ音楽院初代校長であり、偉大なピアニストでもあったニコライ・ルービンシュタインに捧げようとしました。
ところがルービンシュタインは、「まったく無価値で、訂正不可能なほど拙劣な作品」と評価されてしまいます。深く尊敬していた先輩からの言葉だっただけに、この出来事はチャイコフスキーの心を深く傷つけました。

ヴァイオリン協奏曲と言い、このピアノ協奏曲と言い、実に不幸な作品です。

しかし、彼はこの作品をドイツの名指揮者ハンス・フォン・ビューローに捧げることを決心します。ビューローもこの曲を高く評価し、1875年10月にボストンで初演を行い大成功をおさめます。
この大成功の模様は電報ですぐさまチャイコフキーに伝えられ、それをきっかけとしてロシアでも急速に普及していきました。

第1楽章冒頭の長大な序奏部分が有名ですが、ロシア的叙情に溢れた第2楽章、激しい力感に溢れたロンド形式の第3楽章と聴き所満載の作品です。


雪の女王が住まう氷の宮殿

チャイコフスキーのピアノ協奏曲はあまり好きではないという人は意外と多いようです。その理由は、曲の冒頭はこの上もなく有名で華やかなのに、その後はわけの分からない音楽が延々と続くのであきてしまう・・・というものらしいです。口さがない連中に言わせると、R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはこう語った」と並んで、「つかみは満点、その後わけ分かんない」音楽の両横綱としてノミネートされるそうです。
確かに、この作品の冒頭は、クラシック音楽などに全く興味がない人でも一度は耳にしたことがあるでしょう。それだけに、その後に40分近くも延々と音楽が続くというのは、「ツァラトゥストラはこう語った」と瓜二つです。

しかし、もう少しよく考えてみると、この「あきてしまう」というのは、作品の責任と言うよりは演奏する側の責任が大きいのではないかとも思ってしまいます。
チャイコフスキーのコンチェルトなんて所詮は通俗名曲でしょ・・・と言うスタンスで、べたべたと甘ったるく演奏している人が多すぎやしませんか、と言うことです。

実は、そんなことをあらためて強く意識させられるほどに、このアラウのピアノは立派だったのです。そして、このような演奏で聞かされれば「長すぎてあきてしまう」という人はよほど数は少なくなるのではないかと思ってしまいます。

まず何よりもピアノの響きが立派です。まるで水晶のような硬質でクリスタルな響きです。そして、その響きでもって構築されていく音楽は「雪の女王が住まう氷の宮殿」を思わせます。
そこには、砂糖菓子のようなベタベタとした甘ったるさなどはどこを探しても見つかりません。
そして、何よりも、晩年のアラウが失ってしまったパワーがここでは満ちあふれています。

さらにつけ加えれば、グリーグのコンチェルトでは「よほど体調が悪かったのか虫の居所が悪かったのでしょうか」と書いたガリエラの指揮が実に見事です。おそらく、録音のクオリティが大幅に改善していることもそう思わせる原因かとは思うのですが、やはりそれだけではなくて、オケの鳴らしっぷりも申し分ありませんし、何よりもピアノとのバランスの取り方が絶妙です。
このあたりのバランス感覚は、少し前にアップしたルービンシュタインとクリップスなども同じで、基本的には指揮者がソリストを立てながら、それでもオケが主役を務める部分ではしっかりと自己主張するというものです。いわゆる「巨匠」と呼ばれる人はソリストを押しのけても自分が主役になろうとしますし(それはそれで両者の喧嘩ぶりは見物、聞き物ではあるのですが)、逆に凡庸なだけの指揮者ではひたすら「伴奏」で終わってしまいます。
それだけに、こういうガリエラのような指揮者は貴重な存在だと思いますし、そう言うガリエラの美質が非常上手く発揮された録音だとも言えます。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



1657 Rating: 5.3/10 (155 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2012-06-23:ヨシ様





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-04-30]

ショパン:ノクターン Op.37&Op.48(Chopin:Nocturnes for piano, Op.37&Op.48)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)

[2025-04-27]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第6番 ヘ長調(Rossini;Quatuor No.6 in F major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)

[2025-04-25]

ブラームス:交響曲第2番 ニ長調, 作品73(Brahms:Symphony No.2 in D major, Op.73)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1962年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1962)

[2025-04-22]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第5番 ニ長調(Rossini;Quatuor No.5 in D major )
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)

[2025-04-19]

ブラームス:交響曲 第1番 ハ短調, Op.68(Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op.68)
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 ベルリン・フィルハーモニ管弦楽団 1951年録音(Joseph Keilberth:Berlin Philharmonic Orchestra Recorded on 1951)

[2025-04-16]

モーツァルト:弦楽四重奏曲第23番 ヘ長調 K.590(プロシャ王第3番)(Mozart:String Quartet No.23 in F major, K.590 "Prussian No.3")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2025-04-12]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第4番 変ロ長調(Rossini;Quatuor No.4 in B flat major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)

[2025-04-09]

ラフマニノフ:交響曲第2番ホ短調 作品27(Rachmaninoff:Symphony No.2 in E minor, Op.27)
アルトゥール・ロジンスキ指揮:ニューヨーク・フィルハーモニック 1945年1月15日録音(Artur Rodzinski:New York Philharmonic Recorded on January 15, 1945)

[2025-04-06]

ロッシーニ:管楽四重奏曲第1番 ヘ長調(Rossini;Quatuor No.1 in F major)
(fl)ジャン- ピエール・ランパル (cl)ジャック・ランスロ (hrn)ジルベール・クルシエ (basson)ポール・オンニュ 1963年初出((fl)Jean-Pierre Rampal (cl)Jacques Lancelotelot (basson)Paul Hongne (hrn)Gilbert Coursier Release on 1963)

[2025-04-02]

モーツァルト:セレナーデ第13番ト長調, K.575 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(Mozart:Serenade in G Major, K.525 "Eine kleine Nachtmusik")
ヨーゼフ・カイルベルト指揮 バンベルク交響楽団 1959年録音(Joseph Keilberth:Bamberg Symphony Recorded on 1959)