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ベートーベン:交響曲第1番 ハ長調 作品21


クリュイタンス指揮 ベルリンフィル 1958年12月19日録音


栴檀は双葉より芳し・・・?

ベートーベンの不滅の9曲と言われ交響曲の中では最も影の薄い存在です。その証拠に、このサイトにおいても2番から9番まではとっくの昔にいろいろな音源がアップされているのに、何故か1番だけはこの時期まで放置されていました。今回ようやくアップされたのも、ユング君の自発的意志ではなくて、リクエストを受けたためにようやくに重い腰を上げたという体たらくです。

でも、影は薄いとは言っても「不滅の9曲」の一曲です。もしその他の凡百の作曲家がその生涯に一つでもこれだけの作品を残すことができれば、疑いもなく彼の代表作となったはずです。問題は、彼のあとに続いた弟や妹があまりにも出来が良すぎたために長兄の影がすっかり薄くなってしまったと言うことです。

この作品は第1番という事なので若書きの作品のように思われますが、時期的には彼の前期を代表する6曲の弦楽四重奏曲やピアノ協奏曲の3番などが書かれた時期に重なります。つまり、ウィーンに出てきた若き無名の作曲家ではなくて、それなりに名前も売れて有名になってきた男の筆になるものです。モーツァルトが幼い頃から交響曲を書き始めたのとは対照的に、まさに満を持して世に送り出した作品だといえます。それは同時に、ウィーンにおける自らの地位をより確固としたものにしようと言う野心もあったはずです。

その意気込みは第1楽章の冒頭における和音の扱いにもあらわれていますし、、最終楽章の主題を探るように彷徨う序奏部などは聞き手の期待をいやがうえにも高めるような効果を持っていてけれん味満点です。第3楽章のメヌエット楽章なども優雅さよりは躍動感が前面にでてきて、より奔放なスケルツォ的な性格を持っています。
基本的な音楽の作りはハイドンやモーツァルトが到達した地点にしっかりと足はすえられていますが、至る所にそこから突き抜けようとするベートーベンの姿が垣間見られる作品だといえます。

感心と感動


クリュイタンス&ベルリンフィルによるベートーヴェンの交響曲全集も、今回の9番と8番でとりあえず一段落です。残りの6番と1、2番は隣接権が消滅するのが12年なのでしばらく間があきます。
今回、最後の9番と8番をアップする前に改めて聞いてみたのですが、最近彼について考え続けてきたことをあらためて「なるほどな!」と納得した次第です。そして、その納得したことを書くとクリュイタンスが大好きな人達から顰蹙を買いそうなのですが、やはり思ったことは正直に書くべきでしょう。(何と言う、持って回ったいい方^^;)

9番も8番も、どちらも明晰で造形のしっかりとした演奏です。
8番の、延々とフォルテの指示が続くような部分でも決して荒っぽくなることがなく整然と音楽が進行していきます。第3楽章中間部のホルンの響きも実に魅力的です。
わたしが大好きな9番の第3楽章も、辛口の清酒のようなシャッキとしたメランコリーに溢れていてとってもいい感じです。それに、最後の合唱もこの時代としては意外なほどにがっちりとしたアンサンブルで、クリュイタンスのイメージする第9の世界にぴったりなように思えます。

つまり、どこをとっても実に『感心』させられることばかりで、それはこれ以前にアップした3番から7番にもすべて共通することです。
しかし、このすっかり『感心』させられた演奏を聞き続けてきて、とっても贅沢だとは思いながら、1つの不満を抑えることができないのです。
クリュイタンスのベートーヴェンはずいぶん前に聞いた記憶はあるのですが、ほとんど私の視界からは消えていました。そんな演奏がふたたび視界のなかに入ってきたのは、それらがパブリックドメインの仲間入りをしたからです。ですから、彼の第7番の演奏を聞いたときはほとんど初めてのようなもので、そのインテンポの鬼もいうべき演奏スタイルが醸し出す不思議な迫力におおいに魅了されたものでした。
しかし、彼のベートーヴェンを次々と聞き続けていくと、「おそらく、次はこんな感じだろうな!」という想像がほぼ外れることがありませんでした。もちろん、どの演奏も高いレベルで安定していて、明晰で風通しのよいベートーヴェンでした。そして、どれもこれも『感心』させられるばかりでした。

しかし、そこには『感心』している自分はいても、『感動』している自分がいないことに気づかずにはおきませんでした。
『感心』と『感動』は、一字違いですが大きな違いがあります。
感心するためには、その対象に対する一定の知識が必要ですが、感動するにはそんな薀蓄は必要ありません。フルトヴェングラーのベートーヴェンを聞けば、音の悪さは脇におけば、その異常かつ、異様な迫力に聞き手の多くは圧倒され、深く『感動』するはずです。

おそらく、クリュイタンスって、とってもいい人だったんだと思います。彼の演奏からは、どれを聞いても高い知性とエレガントな人柄が伺われます。
そう言えば、シューベルティアンさんが言い得て妙のコメントをしてくれていました。
「嗜好の近い人でアンセルメの演奏はたいへんおもしろく聞いているんですが、彼の指揮も見た目には非常に上品で緻密だけれど、どこかに「悪の華」の匂いがするんです。」

そう、おそらくクリュイタンスという人はこの「悪の華」から一番遠い処にいる人のように思えます。
あまりにも常識的で健全な人間というものは、他人を感心させることはできても感動させることはできないようです。
健康的で活気にみちた明るいマリア・カラスやエディット・ピアフなんてわたしには想像することもできません。破滅的としかいいようのない彼女たちの人生を振り返るたびに、もう少し常識をわきまえていればもっと長くすばらしい歌を聞かせてくれたのにと思うのですが、もしも彼女たちがそういう常識をわきまえた人間ならば、決して彼女たちはカラスにもピアフにもならなかったのでしょう。

おそらく彼女たちは神に愛された存在だったのでしょうが、その代償はあまりにも大きかったのでしょう。
そして、健全な常識人が努力の末にたどり着ける到達点をクリュイタンスが示してくれたとすれば、その先の恐ろしい世界があることを、数々の偉大な芸術家達=人格破綻者の群が示してくれているという図式なのでしょう。

そう思えば、逆説的ではありますがクリュイタンスの偉大さが浮かび上がってくるような気がします。
かみに愛されなくても、ここまでこれるんだ・・・と。

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