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チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」 作品71


アンセルメ指揮 スイス・ロマンド管弦楽団 1959年6月録音


メルヘンとファンタジーの世界

チャイコフスキーの三大バレー曲の中では最もまとまりがよく、また音楽的にも充実しているのがこの「くるみ割り人形」です。
物語はクリスマスイブにおける少女の一夜の夢です。全体の構成は以下の通りです。

序曲

冒頭のの音楽はまるでおもちゃのシンフォニーを思わせるような雰囲気で始まります。まさに、クリスマス・シーズンに相応しいメルヘンの世界の始まりです。

<第1幕・第1場>
第1曲 情景 <クリスマスツリー>
市会議長のスタールパウム夫妻が召使いとともにクリスマスツリーの飾り付けをしているシーンです。やがて、ティンパニーの強打とともに子どもたちが登場して行進曲へと引き継がれていきます。

第2曲 行進曲
とても有名なメロディで子どもたちが嬉しそうにクリスマスツリーのまわりを飛び跳ねます。

第3曲 子供たちの小ギャロップと両親の登場 (Petit galop des enfants et entrée des parents)
子どもたちの踊りはさらに楽しさを増していきギャロップのリズムにのって踊りまわります。やがて、音楽がメヌエットに変わると仮装した親たちが登場します。

第4曲 踊りの情景 <ドロッセルマイヤーの贈り物>
音楽が突然やむとロッセルマイヤー老人が登場します。この時のヴィオラとトロンボーンによる音楽はとても印象的です。はじめ老人はプレゼントとしてパイとキャベツを渡すので子どもたちはがっかりしてしまいます。しかし、兵隊人形のアルカンと女の子の人形コロンビーヌを取り出すと、この2つの人形はパ・ド・ドゥを踊り出し他ので子どもたちの喜びが一気に爆発して最後は陽気なプレストで音楽が終わります。

第5曲 情景と祖父の踊り
子どもたちの眠る時間がきたことを暗めのワルツが暗示します。
人形を寝室に持っていこうとする事を親に注意されたことに不満を持つ子どもたちに、老人はポケットからくるみ割り人形を取り出して二人に渡します。
ところが、二人はたちまち人形の奪い合いをはじめクララの人形はフリッツにこわされてしまいます。勝ち誇ったフリッツは友達と馬鹿騒ぎを始めるのですが、親たちはそれを静めるために「グロースファーター」の踊り(パーティーの終曲)を始めます。

第6曲 情景 <招待客の帰宅、そして夜>
招待客は全て家路につきクララも寝室に戻るが、やがてくるみ割り人形を取りに部屋にやってきます。この時のクララの不安な気持ちを表す音楽はクラリネットとファゴットで見事に描写されています。
そして、突然フクロウ時計が12時を告げるとネズミが現れて駆け回り、クリスマスツリーはみるみる巨木へと変身し、お菓子からは兵隊人形があらわれて部屋中を歩き回ります。
ここからが見よい代ファンタジーの世界の始まりです。

第7曲 情景 くるみ割り人形とねずみの王様の戦い>
見張りの兵隊はネズミをとがめたことで兵隊人形とネズミの大群が戦闘を開始します。やがて、くるみ割り人形が起き上がって兵隊を指揮すると、ネズミの方も王様が現れて二人は一騎打ちを開始します。やがて形勢はネズミの王様に有利となり人形が危ういと見たクララは思わずスリッパをネズミの王様に投げつけてしまいます。その事でネズミの王様は倒れネズミの大群は逃げ去ります。
やがて音楽は優美なものへと変わると、くるみ割り人形は凛々しい王子様に姿を変えています。そして、彼は命を助けてもらったお礼にお菓子の国へ招待することをクララに申し出ます。もちろんクララは大喜びで、やがて二人は手を取り合って旅立っていきます。

<第1幕・第2場>
第8曲 情景 <松林の踊り>
クララと王子様は互い手を取り合ってお菓子の国を目指します。二人が夜の松林にさしかかると、雪の精が松明を手に二人を出迎えます。
第9曲 雪片のワルツ
雪の精の王様と女王が華麗なワルツを踊ります。やがて吹雪の隙間から月明かりがもれてきて、全編中最も幻想的な場面を描き出します。そして、クララと王子様はボーイ・ソプラノの天井的な響きにのって粉雪が舞う中を魔法のお菓子の国へと旅立っていって第1幕の幕がおります。

<第2幕>
第10曲 情景 <お菓子の国の魔法の城>
魔法の城があらわれ、二人がオア菓子の国に到着したことを暗示します。

第11曲 情景 <クララと王子の登場>
クララと王子様はバラ色の氷の川を金の船に乗ってお菓子の国へ到着します。すると、女王様を先頭に多くの人々が二人を出迎えます。
やがて、王子はクララが命の恩人であることを女王に話し、ネズミの王様との戦闘が回想されます。

第12曲 ディヴェルティスマン [登場人物たちの踊り]
ここからが、このバレエの一番の見せ所で、様々なお菓子の精がクララを歓迎するために踊りを披露します。

 1. チョコレート<スペインの踊り> [ボレロ]
 2. コーヒー <アラビアの踊り> [コモード]
 3. お茶 <中国の踊り>
 4. トレパック <ロシアの踊り>
 5. 葦笛 <葦笛の踊り>
 6. ジゴーニュ小母さんと道化たち

第13曲 花のワルツ
全曲中最も有名な音楽です。
金平糖の精の二女たち24人が華麗に踊りを披露します。

第14曲 パ・ド・ドゥ <金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ>
ここが全編中の最高のクライマックスとも言うべきシーンです。そのファンタジックな雰囲気と言い音楽の美しさ、踊りの見事さ、どれをとっても最高の場面です。
原作では金平糖の精とコクリーシュ王子が踊るようになっているが、最近では金平糖の精とくるみ割り人形の王子が踊ったり、またはクララとくるみ割り人形の王子が踊ったりといくつかのバリエーションが出てきています。
しかし、最近の流行は「クララとくるみ割り人形の王子が踊る」パターンのようです。
 1. アダージュ
 2. ヴァリアシオン 1
 3. ヴァリアシオン 2
 4. コーダ

第15曲 終幕のワルツとアポテオーズ
全員が明るく踊り場はいっそう盛り上がるが、やがて第10曲の情景のメロディが流れてきて終曲へと向かいます。王冠をかぶったクララは幸福感に酔いしれる中をチェレスタの神秘的な響きの中で全曲は幕を閉じます。

いやぁ、こうして解説文を書きながらでも、そのあまりの「臭さ」に驚きますね。どんな夢見る夢子ちゃんでも裸足で逃げていきそうなほどの「恥ずかしさ」に満ちています。
「音楽は優美なものへと変わると、くるみ割り人形は凛々しい王子様に姿を変えています。」「彼は命を助けてもらったお礼にお菓子の国へ招待することをクララに申し出ます。もちろんクララは大喜びで、やがて二人は手を取り合って旅立っていきます。」「クララと王子様はバラ色の氷の川を金の船に乗ってお菓子の国へ到着します。」
さらに、最近ではクライマックスのパ・ド・ドゥは王子様とクララが踊るのが定番になりつつあるようですから、もう恥ずかしさのあまりに裸足で逃げ出したくなります。
ところが、不思議なことに、ここにチャイコフスキーの音楽が被さると、ものの見事なメルヘンとファンタジーの世界に変身するのです。いやはや、その音楽の力には驚きを通り越して尊敬の念すら抱いてしまいます。

なお、最後にどうでもいいことですが、ホフマンによる原作「くるみ割り人形とネズミの王様」と比べると根本的な部分で相違があります。
原作では、人形の国からクララ(原作ではマリー)が帰ってくるところまでは同じですが、それを夢の話としては終わらせていません。
クララが話す人形の国について両親は全く信じようとしないのですが、やがて王子が彼女を迎えに来て人形の国へ旅立つというラストシーンになっています。

バレーの台本はマリウス・プティパによって書かれたものですが、彼はこの最後の場面をバッサリとカットして、人形の国シーンで物語を終わらせています。ただし、それではいかにもおさまりが悪いので、その後ワイノーネンの振付によって改訂され、クララが夢から醒めた場面で終わらせることによってこの物語をクリスマスイブの一夜の物語として設定することが一般的になりました。


夢を夢として終わらせない原作と、そこの部分をわざとぼかした原作では大きな相違がありますし、ましてや、夢はしょせん夢だとして終わらせる改訂版とでは根本的に違った作品になっていると言わざるを得ません。

当然の事ながら、プティバもワイノーネフもホフマンの原作を知っていたでしょうから、なにゆえにその様な改訂を行ったのかは興味のあるところです。(最近は原作回帰の動きもあるようです。)

語り口の巧さに脱帽


これで、アンセルメ&スイス・ロマンド管弦楽団によるチャイコフスキーの三大バレエ音楽を全てアップすることができました。いずれも、50年代後半の録音なのですが、デッカの優れた技術力と志の高さのおかげで、そのどれもが素晴らしい音質で楽しむことができます。
そして、こうして3つのバレエ音楽を聴いてみると、アンセルメの職人芸とも言うべき「巧さ」に脱帽です。
おそらく、これよりもはるかに洗練されたスタイリッシュな表現の録音はいくらでもあると思います。さらに言えば、昨今はこれをコンサートレパートリーとしてとらえて、はるかに緻密で華麗な響きで演奏した録音などはいくらでも挙げることができます。

たとえばプレヴィン&ロイヤルフィル(確かにこれは素晴らしい!!)、デュトワ&モントリオール(華麗!!)、ティルソン・トーマス&フィルハーモニア(スタイリッシュ!!)、そしてフェドセーエフ&モスクワ放送(まるでコンサート音楽、これじゃ踊れない!!)などなど・・・。
それらと比べれば、アンセルメの演奏は派手さもなければ、響きの華麗さもなく、淡々と音楽が進行していきます。
しかし、そう言う幾多の名録音の中にあって、アンセルメ盤が主張できる強みは、その語り口の巧さです。まさに、懇切丁寧にお名無しの展開を分かりやすく、しかし決して無味乾燥になることも固くなることもなく、まさに一流の話芸の達人のようにくるみ割り人形のメルヘンとファンタジーの世界を語ってくれます。
おそらく、実際の舞台を一度は見たことがある人ならば、このアンセルメの演奏を聴けば、一つ一つの舞台のシーンがまざまざと甦ってくるはずです。そして、そう言う語り口の巧さというのは、オケの響きを磨いて華麗に響かせたり、スタイリッシュに構築したりすることよりもはるかに難しいのです。
やはり、バレエ音楽というのは、音楽だけで成り立つ芸ではありません。それにくわえて、舞台装置や衣装、そして何よりもダンサーたちの踊りが主役として存在することによってその魅力を発揮する芸術です。ですから、これをまるでコンサート・レパートリーのように、バレエ音楽としての前提を放棄した形で演奏するのはやはり異論があります。実際、その手の録音の中には、これでは踊れないだろう!とつっこみを入れたくなるようなものもあります。

おそらく、このアンセルメの録音なら、ダンサーたちは安心して踊りに専念できるでしょう。そして、それこそがバレエ音楽としての「くるみ割り人形」の本来の形だと言えます。
おそらく、これに肩を並べられるのはプレヴィンさんくらいではないでしょうか。

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