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リヒター=ハーザー(Hans Richter-Haaser) |ベートーベン:ピアノソナタ第28番 イ長調 Op.101(Beethoven:Piano Sonata No.28 in A major, Op.101)
ベートーベン:ピアノソナタ第28番 イ長調 Op.101(Beethoven:Piano Sonata No.28 in A major, Op.101)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1956年3月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on March, 1956) Beethoven:Piano Sonata No.28 in A major, Op.101 [1.Etwas lebhaft, und mit der innigsten Empfindung. Allegretto, ma non troppo]
Beethoven:Piano Sonata No.28 in A major, Op.101 [2.Lebhaft. Marschmasig. Vivace alla marcia]
Beethoven:Piano Sonata No.28 in A major, Op.101 [3.Langsam und sehnsuchtsvoll. Adagio, ma non troppo, con affetto]
Beethoven:Piano Sonata No.28 in A major, Op.101 [4.Geschwind, doch nicht zu sehr und mit Entschlossenheit. Allegro]
模索する実験の産物
ベートーベンに関する叙述を読んでいると、「傑作の森」とも言われる充実した中期の後にスランプに襲われるという記述に必ず出会います。そのスランプ期というのは一般的には1812年から1817年に至るおよそ5年程度の時期だとされていて、その背景には「不滅の恋人」との破局や甥カールの養育権をめぐる訴訟などが指摘されるのが一般的です。
しかし、そう言う私生活のあれこれが創造活動に影響を与えるのはいわゆる「凡人」どもであって、ベートーベンほどの才能がその様な「些事」で創作活動が左右されるという「考え」はそろそろ卒業した方がいいのかもしれません。
つまりは、ベートーベンが行き悩んだのはその様な私生活上の出来事ではなくて、あくまでも音楽の創作に関わる課題だったはずなのです。
それは、言葉をかえれば、中期のベートーベンに至る過程で探求してきた課題を、「全てやりきってしまった」ことこそが最大の課題だったのです。
彼は音楽におけるデュナーミクの拡大に取り組み、それによって彼はそれまでの誰もが考えもしなかったような力を音楽に与えたのでした。
しかし、その拡大路路線は行き着くところまで行き着いてしまった以上、彼はそれとは異なる新しい道を探さねばならなかったのです。この新しい道の模索というのは、ベートーベンほどの才能をもってしても、外からはスランプに陥ったと見られるほどの停滞を招いたのです。
実際、この5年間は大規模な作品はほとんど書いていません。
彼のもっとも得意な分野であるピアノ・ソナタでも作品90と101の小規模なソナタを2曲書いているだけなのです。
しかし、そんな中にあって、この作品101のイ長調ソナタは注目に値します。
何故ならば、そこには新しい道を模索するベートーベンの「実験」の後が刻み込まれているからです。
その事を教えてくれたのがローゼン先生でした。
ローゼン先生はこのピアノ・ソナタと作品102の1のチェロ・ソナタの類似性を指摘しています。
作品101のピアノ・ソナタは一般的には3楽章構成、作品102の1のチェロ・ソナタは2楽章構成と言うことになっているのですが、ローゼン先生はこの2作品はともにアタッカで演奏される4楽章構成の作品と解するべきだと述べています。
ピアノ・ソナタの方は第3楽章の序奏部分としての「Adagio,ma non troppo,con affetto」を第3楽章と見なして、それにトリルで連結される「Allegro」の本体部分だけを第4楽章と見なすのです。
チェロ・ソナタは第1楽章の「Andante」の部分を第1楽章、「Allegro vivace」の部分を第2楽章と見なし、続く第2楽章の「Adagio - d'Andante」の部分を第3楽章、「Allegro vivace」の部分を第4楽章と見なすのです。
そうするとこんな感じになります。
ピアノソナタ第28番 イ長調 作品101
第1楽章:Allegretto,ma non troppo
第2楽章:Vivace alla Marcia
第3楽章:Adagio,ma non troppo,con affetto
第4楽章:Allegro
チェロソナタ第4番 ハ長調 作品102-1
第1楽章:Andante
第2楽章:Allegro vivace
第3楽章:Adagio - d'Andante
第4楽章:Allegro vivace
こうすると両者は第1楽章が8分の6拍子の叙情的小品、第2楽章は付点リズムの行進曲、第3楽章は終楽章への導入の役割を果たすアダージョであり、終楽章は活気に溢れた4分の2拍子のアレグロになっているのです。
いささか煩わしい説明ではあるのですが、その様に指摘されてあらため「チェロソナタ第4番 ハ長調 作品102-1」を聞き直してみると、その類似性には驚かされるのです。
そして、この似通った構造が音楽の形式としては非常に変わったものであると言うことを考え合わせれば、ベートーベンはここで一つの実験を試みた事は間違いないのです。
そして、そう言う構造を使って彼が実現しようとしたのは力の発現としての音楽ではなくて、繊細さの描写を通して人間の内面を描き出す事だったはずなのです。
しかし、この道はそれほど容易いものではなかったようで、彼はもう一度作品106の巨大なソナタによって中期の自分を総括しなおすことで、ようやくにして作品109からの後期の世界に分け入っていくことができたのです。
それだけに、それら後期のソナタに通底しているある種の悲壮感を「不滅の恋人」との破局に結びつけるような「文学的解釈」とはいい加減に手を切った方がいいのです。
彼は「力」の発言で大いなるものを表現する道を開いた後に、「繊細」さを極めることで「人間の深い内面」を描きうる可能性を示したのです。
もしも、恋人との破局という「些事」が影響を与えたとしたら、それはその様して生み出した音楽が描きうる一つの対象としての意味は持ち得たかもしれません。
しかし、その様な「些事」が音楽の可能性を切り開く原動力となったというのは明らかに誤った解釈と心得るべきでしょう。
ファンタスティックな世界
こういう人の演奏を聴かされると本当に困ってしまいます。
オレがオレがと前に出てくるタイプではないので、「こう言うところがなかなかのものでしてね」という体で済ますわけにはいかないのです。
と言うか、そう言う文章を綴るための取っかかりがないのです。
だったら、それはつまらない演奏なのかと言われればそんな事はない。
かといって、「とっても立派なベートーベンなのです。終わり。」では子供の作文にもならない。
だから困ってしまうのです。
これが、彼のピアノ・ソナタを聞いたときの率直な感想でした。
例えば、合唱幻想曲のような外連味あふれる作品でもでも控えめな人だなと思ってしったものです。
残された録音の数が少ないこともあって、今となってはリヒター=ハーザーというピアニストを記憶にとどめている人は多くはないと思います。
調べてみると「チェルニーの孫弟子にあたるピアニストで、ベートーヴェン直系のドイツ・ピアノ音楽の厳粛なる伝道師」という位置づけになるらしいです。
さらに突っ込んで調べてみると、ピアニストのキャリアを積み上げようという時に戦争に巻き込まれ、防空兵として長期にわたってピアノにふれることのできない生活を強いられたようなのです。
戦争が終わったときには指は完全に錆び付いてしまっていたと本人は述懐しています。
ですから、戦後は指揮者やピアノ教師として活動を再開したようです。
しかし、ピアニストとしての活動を諦めたわけではなく、50年代にはいるとその錆び付いた指も少しずつ復活していったようです。
そして、53年に病気のソリストの代役としてバルトークのコンチェルト(2番)を演奏して復活への第一歩をつかみ取りました。
その後はベートーベンを中心としたレパートリーで評価を確立し、最初に紹介した「ベートーヴェン直系のドイツ・ピアノ音楽の厳粛なる伝道師」と呼ばれる地位を築き上げたのです。
しかし、リヒター=ハーザーのピアノはこの「ドイツ・ピアノ音楽の厳粛なる伝道師」」という言葉から連想される「ゴツゴツ」した「無骨さ」とは無縁です。
無縁であるどころか、逆に何とも言えない優雅でファンタスティックな世界が展開されます。
ただし、こういう立派さはぼんやり聞いているとなかなか気がつきにくい性質のものです。
もちろんバックハウスのようなベートーベンも立派なものですが、立派さにはいくつものバリエーションがあることを教えてくれる演奏です。
ただし、人によってはありふれた「スタンダード的な演奏」と判断する人もいるでしょう。それはそれで、決して間違った判断ではないと思います。
しかしながら、「スタンダード」だと思ってもらえるだけでも凄いことなので・・・。
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