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ドヴォルザーク:交響曲第9番 ホ短調 作品95 「新世界より」

ジョージ・セル指揮 クリーブランド管弦楽団 1959年3月20日~21日録音




望郷の歌

ドヴォルザークが、ニューヨーク国民音楽院院長としてアメリカ滞在中に作曲した作品で、「新世界より」の副題がドヴォルザーク自身によって添えられています。

この作品はその副題が示すように、新世界、つまりアメリカから彼のふるさとであるボヘミアにあてて書かれた「望郷の歌」です。

この作品についてドヴォルザークは次のように語っています。
「もしアメリカを訪ねなかったとしたら、こうした作品は書けなかっただろう。」
「この曲はボヘミヤの郷愁を歌った音楽であると同時にアメリカの息吹に触れることによってのみ生まれた作品である」

その言葉に通りに、ボヘミヤ国民楽派としてのドヴォルザークとアメリカ的な語法が結びついて一体化したところにこの作品の一番の魅力があるといえます。
さらに、過去の2作がかなりロマン派的な傾向を強めていたのに対して、この9番は古典的できっちりとしたたたずまいを見せていることも、分かりやすさと親しみやすさを増しているようです。

初演は1883年、ドヴォルザークのアメリカでの第一作として広範な注目を集め、アントン・ザイドル指揮のニューヨーク・フィルの演奏で空前の大成功を収めました。

完璧なまでの合奏による凄味


セルはドヴォルザークの新世界を3回録音しています。

チェコ・フィル 1937年10月30日録音
クリーブランド管弦楽団 1952年1月18日録音
クリーブランド管弦楽団 1959年3月20~21日録音

そして、この年明けにこれらをまとめて聞き直してみました。
それは、昨年の暮れからlinuxの上で動く「MPD(Music Player Daemon)」というシステムで音楽を聴くようになり、今までとは随分雰囲気が変わって聞こえるようになったからです。

興味ある方はこちら→ 最強の再生システム「MPD」//CD評価の難しさ

前回はリスニングルームを新しくしたことによる「変化」でしたが、今回もそれに匹敵するぐらいの「変化」がありました。

ここはオーディオ関係のことを云々する場所ではないので深入りは避けますが、このあたりに「録音」という媒介物を通して演奏を評価することの難しさがあります。

そして、この「変化」によって一番印象が変わったのが、今回アップしたステレオ録音による演奏です。

52年のモノラル録音を評して

「このモノラル録音では、あのあまりにも有名な第2楽章のメロディが、この上もなく深い情緒に満たされていることに驚かされます。
技術的な完璧さやオケの響きの緻密さという点ではステレオ録音に軍配が上がるでしょうが、この曰く言い難い風情というか情緒はこのモノラル録音でしか感じ取ることが出来ません。」

等と書いたのですが、じっくり聞き込んでみると、一見素っ気なく見えるステレオ録音の第2楽章も実に細かいニュアンスで彩られていることに気づかされます。
そして、何よりも圧倒的なのは、音楽が大きく盛り上がる部分での完璧なまでの合奏による凄味です。ここは、今まではそれぞれの楽器のセパレーションが良くなかったので「凄味」までは感じ取れなかったのですが、今度の新しいステムで聞くと、まさに圧倒的な迫力であり、実に熱い演奏であったことに気づかされます。

セルというと、理知的で冷たいという印象があるのですが、こうして16ビット/44.1KhzというCD規格の中におさめられている情報を極限まで絞り出して聞いてみると、セルもまた50~60年代のアメリカの黄金時代を背景とした音楽だったのかと思うようになってきました。
音楽を精緻にして豪快に鳴らし切ったときの生理的爽快感は、つまらぬ精神性に彩られた曲線的な演奏などを跳ねとばしてしまうほどの魅力があります。そして、この時代のアメリカは疑いもなくそのような音楽を欲していました。
たとえ、有名な音楽評論家から「猫ほどの知性もない」と酷評されても、多くの聴衆はホロヴィッツの音楽に喝采を送ったのです。それは、ハイフェッツやルービンシュタインにしても事情はそれほど変わるはずはありません。そして、ライナーやセルもまた然りだったように思います。そう言う意味では、ここにあるのはフルトヴェングラーの対極にある音楽たちです。

最終楽章の熱狂的な盛り上がりが一糸乱れぬ鬼のアンサンブルでばく進するとき、当時のアメリカの聴衆は拍手喝采を送ったはずです。
そう言う意味では、セルの演奏もまたこの時代のアメリカの時代精神を色濃く反映した音楽だったと言えそうです。


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2016-03-06:emanon


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