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ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」

ジョージ・セル指揮 チェコ・フィル1937年10月30日録音




望郷の歌

ドヴォルザークが、ニューヨーク国民音楽院院長としてアメリカ滞在中に作曲した作品で、「新世界より」の副題がドヴォルザーク自身によって添えられています。

この作品はその副題が示すように、新世界、つまりアメリカから彼のふるさとであるボヘミアにあてて書かれた「望郷の歌」です。

この作品についてドヴォルザークは次のように語っています。
「もしアメリカを訪ねなかったとしたら、こうした作品は書けなかっただろう。」
「この曲はボヘミヤの郷愁を歌った音楽であると同時にアメリカの息吹に触れることによってのみ生まれた作品である」

その言葉に通りに、ボヘミヤ国民楽派としてのドヴォルザークとアメリカ的な語法が結びついて一体化したところにこの作品の一番の魅力があるといえます。
さらに、過去の2作がかなりロマン派的な傾向を強めていたのに対して、この9番は古典的できっちりとしたたたずまいを見せていることも、分かりやすさと親しみやすさを増しているようです。

初演は1883年、ドヴォルザークのアメリカでの第一作として広範な注目を集め、アントン・ザイドル指揮のニューヨーク・フィルの演奏で空前の大成功を収めました。

若き日のセル バランスのセルと言われていたそうです・・・(^^)


セルの棒でドヴォルザークの交響曲を聴くと、実に立派なもので惚れ惚れしてしまいます。その思いは、このチェコフィルと組んで録音した若き日の録音でも変わりません。
 いわゆる民族性を前面に押し出したような演奏とは対極にあるものですが、しかしこれを客観的な演奏と言うにはためらいを覚えます。
 というのは、そもそもドヴォルザークの音楽というのは「こんなに立派だったのだろうか・・・・?」という疑問を払拭しきれないからです。
 それでも、長年にわたって私はセルの録音でドヴォルザークを聞くことが好きでしたし、実際いろんな場面で彼の録音を聞いてきました。

 しかし、近ごろ、その座をテンシュテットに奪われかけています。(もちろん、ライブ録音のほうです)

 私はドヴォルザークには、その美しいメロディの背後に言いしれぬ「暗さ」みたいなものを感じていました。ある方はそれを「果たされなかった思い」と表現していましたが、とにかく言いしれぬ「暗さ」を常に感じていました。
 テンシュテットの演奏は、何となく感じていた「暗さ」をイヤと言うほど私の前に呈示してくれました。第2楽章は果てしなく下へ下へと引きずり込んでいってくれて、「やっぱり、ドヴォルザークは仮面の下にこんな素顔を忍ばせていたんだ」と納得させてくれます。

 でも、考えてみれば、セルが示してくれる立派な交響的構築も、テンシュテットの情念の爆発も、共に彼らの主観的解釈の賜物だということに気づかされます。客観的解釈等というものは言葉としても矛盾していますし、あるはずのないものです。(その、あるはずのないものが大手を振ってまかり通っている不思議!!)
 大事なのは、その主観にどれだけ説得力があり、その思いをどれだけ素晴らしい技術によって「形」にしてくれているかという事です。
 そう思えば、「ドヴォルザークってこんなに立派だったのかな・・・?」等と問うことは愚かなことだと悟らされます。

 それにしても、37年のこの録音を聞くと、セルという人は死ぬまで、全く同じスタンスでドヴォルザークを解釈し続けたんだなと変なところで感心させられます。それほど、後のクリーブランドとのスタジオ録音と比べても遜色がないほどに立派なドヴォルザークを呈示してくれています。大したものです。


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