Home |
クレンペラー(Otto Klemperer) |ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 op.56a
ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 op.56a
クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1954年10月9日録音 Brahms:ハイドンの主題による変奏曲 変ロ長調 op.56a
変奏曲という形式にける最高傑作の一つ
これが、オーケストラによる変奏曲と括りを小さくすれば、間違いなくこの作品が最高傑作です。
「One of The Best」ではなく「The Best」であることに異論を差しはさむ人は少ないでしょう。
あまり知られていませんが、この変奏曲には「オーケストラ版」以外に「2台のピアノによる版」もあります。最初にピアノ版が作曲され、その後にオーケストラ版が作られたのだろうと思いますが、時期的にはほとんど同時に作曲されています。(ブラームスの作品は交響曲でもピアノのスコアが透けて見えるといわれるほどですから・・・)
しかし、ピアノ版が評判となって、その後にオーケストラ版が作られた、という「よくあるケース」とは違います。作品番号も、オーケストラ版が「Op.56a」で、ピアノ版が「Op.56b」ですから、ほとんど一体のものとして作曲されたと言えます。
この作品が作曲されたのはブラームスが40歳を迎えた1873年です。
この前年にウィーン楽友協会の芸術監督に就任したブラームスは、付属している図書館の司書から興味深いハイドンの楽譜を見せられます。野外での合奏用に書かれた音楽で「賛美歌(コラール)聖アントニー」と言う作品です。
この作品の主題がすっかり気に入ったブラームスは夏の休暇を使って一気に書き上げたと言われています。
しかし、最近の研究では、この旋律はハイドン自身が作曲したのではなく、おそらくは古くからある賛美歌の主題を引用したのだろうと言われています。
それが事実だとすると、、この旋律はハイドン、ブラームスと二人の偉大な音楽家を魅了したわけです。
確かに、この冒頭の主題はいつ聞いても魅力的で、一度聞けば絶対に忘れられません。
参考までに全体の構成を紹介しておきます。
主題 アンダンテ
第1変奏 ポコ・ピウ・アニマート
第2変奏 ピウ・ヴィヴァーチェ
第3変奏 コン・モート
第4変奏 アンダンテ・コン・モート
第5変奏 ヴィヴァーチェ
第6変奏 ヴィヴァーチェ
第7変奏 グラツィオーソ
第8変奏 プレスト・ノン・トロッポ
終曲 アンダンテ
冒頭の魅力的な主題が様々な試練を経て(?)、最後に堂々たる姿で回帰して大団円を迎えると言う形式はまさに変奏曲のお手本とも言うべき見事さです。
気力充実したクレンペラーによる小品演奏
ブラームスの交響曲全集と言えば、必ずお約束のように、「悲劇的序曲」「大学祝典序曲」、そして「ハイドンの主題による変奏曲 」がカップリングされています。クレンペラーの場合はこれに後年録音した「アルト・ラプソディ」も収録されてリリースされています。
さて、これら小品(ハイドン・ヴァリエーションを小品というのはいささか気がひけますが・・・)の出来はいかに?と聞いてみると、これが実に立派な演奏に仕上がっています。単なる「接続曲」と低く見下されることの多い「大学祝典序曲」も、彼の手にかかるとなんだか立派な音楽に聞こえてきます。
クレンペラーと言えばその狷介な人間性が云々されるのですが、こんな接続曲と揶揄されるような作品でも全力で取り組んでいるのを聞かされると、本質的には「真面目な」(ただし音楽に対してのみ)男だったんだと思います。弦楽器がうねるように雄大な音楽を奏しているのを聞いて、そう確信しました。
ですから、これが「悲劇的序曲」となると、まさにクレンペラーにもってこいの作品です。冒頭の緊張感溢れる音楽作りを聞くだけで、彼が全身全霊でこの作品に取り組んでいるのが分かります。実に立派な演奏です。
この二つに関しては、今まで古い録音しかアップできていなかったので、ここで初期のものとはいえステレオ録音がアップできてホッとしています。
最後に、小品とは言いかねる「ハイドン・ヴァリエーション」ですが、これだけ録音年代が古くてモノラル録音です。しかし、モントリオール空港での事故(1951年)のケガも癒えて、気力充実してヨーロッパでの演奏活動を再開した1954年のものですから、なかなかに気力に満ちた演奏に仕上がっています。
ただ、個人的には、一つ一つの変奏を念を押すように丁寧に確認していくような雰囲気が漂うのが、今ひとつ好きになれません。これと似たようなテイストを交響曲第4番の終楽章でも感じましたから、もしかしたらこれがクレンペラーが変奏曲を演奏するときのスタイルなのかもしれません。
この演奏を評価してください。
よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
1179 Rating: 4.8 /10 (165 votes cast)
よせられたコメント
【最近の更新(10件)】
[2025-10-13]
ワーグナー;神々の黄昏 第2幕(Wagner:Gotterdammerung Act2)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)
[2025-10-12]
ワーグナー;神々の黄昏 第1幕(Wagner:Gotterdammerung Act1)
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)
[2025-10-11]
ワーグナー;神々の黄昏 プロローグ(Wagner:Gotterdammerung Prologue )
ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 (S)ビルギット・ニルソン (T)ヴォルフガング・ヴィントガッセン他 ウィーン国立歌劇場合唱団 1964年5月、6月、10月、11月録音(Georg Solti:The Vienna Philharmonic Orchestra(S)Birgit Nilsson (T)Wolfgang Windgassen April May October November, 1964)
[2025-10-08]
ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67(Beethoven:Symphony No.5 in C minor, Op.67)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年8月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on August, 1961)
[2025-10-06]
エルガー:交響的習作「フォルスタッフ」, Op.68(Elgar:Falstaff Symphonic Study, Op.66)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1964年6月1日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on June 1, 1964)
[2025-10-04]
ブラームス:弦楽四重奏曲 第3番 変ロ長調 Op.67(Brahms:String Quartet No.3 in B-flat major, Op.67)
アマデウス弦楽四重奏団 1957年4月11日録音(Amadeus String Quartet:Recorde in April 11, 1957)
[2025-10-02]
J.S.バッハ:幻想曲 ハ短調 BWV.562(Bach:Fantasia and Fugue in C minor, BWV 562)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)
[2025-09-30]
ベートーベン:合唱幻想曲 ハ短調 Op.80(Beethoven:Fantasia in C minor for Piano, Chorus and Orchestra, Op.80)
(P)ハンス・リヒター=ハーザー カール・ベーム指揮 ウィーン交響楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (S)テレサ・シュティヒ=ランダル (A)ヒルデ・レッセル=マイダン (T)アントン・デルモータ (Br)パウル・シェフラ 1957年6月録音(Hans Richter-Haaser:(Con)Karl Bohm Wiener Wiener Symphoniker Staatsopernchor (S)Teresa Stich-Randall (A)Hilde Rossel-Majdan (T)Anton Dermota (Br)Paul Schoffler Recorded on June, 1957)
[2025-09-28]
エルガー:コケイン序曲 Op.40(Elgar:Cockaigne Overture, Op.40)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1962年5月9日&8月27日録音(Sir John Barbirolli:The Philharmonia Orchestra Recorded on May 9&August 27, 1962)
[2025-09-26]
ベートーベン:交響曲第4番 変ロ長調 作品60(Beethoven:Symphony No.4 in Bflat major ,Op.60)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1962年1月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on January, 1962)