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ミルシテイン(Nathan Milstein)|タルティーニ:ヴァイオリンソナタ ト短調(悪魔のトリル)
タルティーニ:ヴァイオリンソナタ ト短調(悪魔のトリル)
(Vn)ミルシテイン(P)ポンマー 1959年1月27日録音
Tartini:ヴァイオリンソナタ ト短調(悪魔のトリル) 「第1楽章」
Tartini:ヴァイオリンソナタ ト短調(悪魔のトリル) 「第2楽章」
Tartini:ヴァイオリンソナタ ト短調(悪魔のトリル) 「第3楽章」
夢の中で悪魔が演奏していた・・・・とか

その夜、タルティーニは夢の中で悪魔がヴァイオリンを弾く夢を見ました。
ところが、その音楽のあまりの美しさに驚いて彼は飛び起きます。そして、夢の中で聞いた音楽を必死で書きとめてできあがったのがこの悪魔のトリルだと言われています。(正式には「ヴァイオリン・ソナタ ト短調」です。)
夢の中で悪魔が弾いていたのは曲の最後の方に出てくる超難度の連続したトリル(楽譜を見ると真っ黒!!)だと言われていますが、真偽のほどはクエスチョンです。
何か物足りない
50?60年代のミルシテインの録音を少しばかりまとめて聴いてみました。
少し前に、モノラル録音によるバッハの無伴奏をアップしたのですが、その時は「モノラルという録音のせいもあるのでしょうが、ガツン!!という感じの強靱なヴァイオリンの響きでグイグイとラインを描いていくような雰囲気が印象的で、晩年の美音を主体としたロマンティックな風情とはずいぶんと様子が異なります。」なんて書いていました。
今回聞いたのは、そこから数年しかたってないような時期の録音なのですが、明らかに「美音を主体としたロマンティックな風情」に雰囲気が変わっていることに驚かされました。
たとえば、ベートーベンのヴァイオリンソナタの5番「春」などは、弱音部はまさに「嫋々」という感じの歌い回しで、ロマンティックにテンポを揺らしながら演奏しています。あの、タルティーニの「悪魔のトリル」なんかも全く同様のアプローチで、何となくロマン派の小品を聞いているような錯覚に陥ります。
モーツァルトのヴァイオリンソナタも基本は同じで、あの有名なホ短調のソナタなんかも実にロマンティックに仕上がっています。
おそらく、この弱音部は徹底的に音量を抑えて、さらに細かい表情づけをしていくのがこの時期のミルシテインの特徴のようです。そして、こういうやり方は、ヴァイオリンソナタみたいな音楽では、結構プラスにはたいているように見えます。もっとも、「聴いてる最中はものすごくうまいと思うし、音色も非常に美しく感心することしきりなのだが、聴いてしばらく経つと、もうその感銘が残っていない。」という意見もあって、それはそれで十分納得がいくという演奏です。
つまりは、何というか、「腰が弱い」のです。
その「腰の弱さ」、言葉をかえれば「ナヨッとした雰囲気」が好きか嫌いかで、ずいぶん感想は変わってくるだろうなと思います。
しかし、これがベートーベンやチャイコフスキーなどの協奏曲になると、感想はがらっと変わってしまいます。明らかに、そのような大作になると、「腰の弱さ」は「好き嫌い」という範疇を越えて、明らかに「物足りない」という領域に踏み込んでしまいます。
そう言えば、その昔ハイフェッツが自分自身の役で映画に出演してメンコンを演奏するシーンがありました。
音はきわめて貧弱なものだったのですが、それはそれは、すさまじいまでの迫力に満ちたもので、ハイフェッツとは何者だったのかをはっきりと教えてくれるものでした。
まさに、こういう演奏こそが「腰が強い」と言える代物であって、音の悪さなんかおかまないなしに演奏する人の気迫が聞き手にグイグイと伝わってきます。もう、聞き終わったあとはノックダウン状態で、その感銘はいつまでも心の中に残り続けます。
そう考えると、音楽というのは恐ろしいものです。
テクニック的にも万全で、音色もこの上もなく美しいのに、作品によっては「何か物足りない」ものを感じてしまうのです。聞き手というのは、ホントに贅沢なものです。
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