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ブダペスト弦楽四重奏団(Budapest String Quartet) |ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調 Op.76−6
ハイドン:弦楽四重奏曲 変ホ長調 Op.76−6
ブダペスト弦楽四重奏団:1954年5月3〜14日録音
Haydn:弦楽四重奏曲 変ホ長調 Op.76?6 「第1楽章」
Haydn:弦楽四重奏曲 変ホ長調 Op.76?6 「第2楽章」
Haydn:弦楽四重奏曲 変ホ長調 Op.76?6 「第3楽章」
Haydn:弦楽四重奏曲 変ホ長調 Op.76?6 「第4楽章」
弦楽四重奏曲という分野におけるハイドンの集大成
「ハイドンの83」という言葉があります。ハイドンの弦楽四重奏曲を表現する言葉として長く使われてきたものです。しかし、初期の作品のいくつかが偽作として認定されて、現在ではハイドンのオリジナルは最後の未完成の作品も含めて「68」というのが定説となっています。
専門的な詳細に関しては不案内ですが、要は、「ずいぶんたくさんの作品を書いた」(^^;、と言うことです。
そんな数ある弦楽四重奏曲の中で、「エルデーディ四重奏曲」と呼ばれる6曲は最もポピュラリティのある作品となっています。「5度」「皇帝」「日の出」「ラルゴ」のような標題が後世の人によってつけられたことにも、それがあらわれています。
ハイドンの弦楽四重奏曲というのは、後のベートーベンのような精緻な知的構築物ではありません。「賢者の対話」と言うよりは、もっと寛いだ、「楽しいおしゃべり」のような雰囲気が漂います。まず何よりも、音楽から肩の力は抜けていますし、メロディラインもとっても綺麗なものが多いです。ベートーベンの後期のカルテットを続けて2曲も聞けば、精神的なダメージ(?)はかなり大きいですが、ハイドンの場合は次から次へと聞いていってもあまり「しんどさ」は感じません。
ただし、「楽しいおしゃべり」のような作品をたくさん書いたと言うと、何だか「同工異曲」のような特徴のない音楽を大量生産したような誤解が生じるかもしれません。当然のことですが、音楽職人ハイドンがそんな「手抜き仕事」をするはずがありません。
特に、この作品番号76の6曲は、一つ一つの作品が実にユニークで個性的です。
1.弦楽四重奏曲 ト長調 Op.76−1
主調がト長調なのに、最終楽章が突然ト短調で始まるので、一瞬ドキッとさせられます。あだ名はついていませんが、作品の完成度はあだ名付きに劣るものではありません。
2.弦楽四重奏曲 ニ短調 Op.76−2 「5度」
「5度」というあだ名は冒頭の第1主題にあらわれる5度下降する動機に由来します。この動機はこの後もなんども用いられるので、なかなか的を射たネーミングといえます。第2楽章は、そのどこか悲愴な雰囲気が一転して柔らかくも美しいメロディが次々と変奏されていき、実にチャーミングです。
3.弦楽四重奏曲 ハ長調 Op.76−3 「皇帝」
「皇帝」というネーミングは第2楽章にハイドン作曲のオーストリア国歌「皇帝賛歌」が使われていることによります。ただし、その変奏はあまり手がこんでいないので、ちょっとこの時期のハイドン作品にしても物足りなさを感じるかもしれません。
4.弦楽四重奏曲 変ロ長調 Op.76−4 「日の出」
「日の出」というタイトルは、冒頭の第1主題が地平線から太陽が上ってくるイメージを喚起すると言うことでつけられました。「日の出」と言えばツァラトゥストラを思い出しますが、ハイドンの時代はこれだけで地平線から上ってくる太陽をイメージできたのです。
また、最終楽章のコーダでは、1声によるpで始まり、そこへ次々と他の楽器が参加してきて音量もアップしていき、もちろんテンポもどんどんあがって最後はffで砕け散ります。まるでベートーベン!!
5.弦楽四重奏曲 ニ長調 Op.76−5 「ラルゴ」
「ラルゴ」というネーミングはそれほど一般的ではありませんが、由来は言うまでもなく第2楽章の「ラルゴ」です。確かに、この長大な楽章のイメージは圧倒的で、この作品全体のイメージを決定づけます。専門家筋では、雰囲気に寄りかかりすぎて構成が「弱い」と言われるのですが、この「ラルゴ」楽章の魅力はなかなかものだと思います。
6.弦楽四重奏曲 変ホ長調 Op.76−6
これもまた「タイトル」なしですが、もしもつけるとしたら「ファンタジア」でしょうか。第2楽章において、主題が様々な調に転調され自由な形式が取られているのでその名前がつけられているからです。でも、第5曲の「ラルゴ」ほどの支配力は持たないのでちょっと無理筋でしょうか。
剛毅さだけでない「ブダペスト弦楽四重奏団」を感じ取れる録音
ブダペスト弦楽四重奏団と言えば、新即物主義の旗手として評価されるのが一般的です。50年代初頭に彼らが録音したベートーベンの全集は虚飾を排した毅然としたスタイルで貫かれていました。さらに、全ての楽器が対等な立場で自己を主張しながら緊密なアンサンブルを崩さないその演奏は、今日の耳で聞いても全く古さを感じさせません。
でも、このハイドンの録音を聞いて、彼らが決して「剛毅」一本槍ではなかったことに気づかされました。
もちろん、ハイドンだからと言って雰囲気によりかった「緩い」演奏をしているわけではありません。そうではなくて、例えばメヌエット楽章でのユーモアとか、アダージョやラルゴ楽章の伸びやかな歌いまわしなどはベートーベンの時にはあまり感じなかったので、なるほどこういう演奏もするんだ、と感じた次第です。
今となってはほとんど忘れ去られた録音ですが、ベートーベンと違って、ハイドンの場合は録音が選り取り見取りとはいきませんから、今でも十分に存在価値を主張できるのではないでしょうか。
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