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カール・ミュンヒンガー(Karl Munchinger) |F.クープラン(バズレール編):コンセールのための5つの小品(Couperin:Pieces en Concert "Les Gouts Reunis")
F.クープラン(バズレール編):コンセールのための5つの小品(Couperin:Pieces en Concert "Les Gouts Reunis")
カール・ミュンヒンガー指揮 (Cello)ピエール・フルニエ シュトゥットガルト室内管弦楽団 1952年録音(Karl Munchinger:(Cello)Pierre Fournier Stuttgarter Kammerorchester Recorded on 1952) Couperin:Pieces en Concert "Les Gouts Reunis" [1.Prelude]
Couperin:Pieces en Concert "Les Gouts Reunis" [2.Sicilienne]
Couperin:Pieces en Concert "Les Gouts Reunis" [3.La Tromba]
Couperin:Pieces en Concert "Les Gouts Reunis" [4.Plainte]
Couperin:Pieces en Concert "Les Gouts Reunis" [5.Air De Diable]
性格の異なる楽曲を巧みに編纂・編曲
フランソワ・クープランの作品をポール・バズレール(Paul Bazelaire)がチェロとピアノ(または弦楽合奏)のために編曲した作品です。
この作品は、もともと独立した一つの組曲だったわけではなく、クープランが1724年に出版した「新しいコンセール(Les Gouts-reunis ou Nouveaux Concerts)」などから、バズレールが性格の異なる楽曲を巧みに編纂・編曲したものです。
前奏曲 (Prelude)原曲: 第9コンセール「愛の肖像」より
厳かな雰囲気の中に優雅な装飾音が散りばめられた、フランス・バロック様式の典型的な序曲です。チェロの低音域の豊かな響きが、高貴な導入部を演出します。
シシリエンヌ (Sicilienne)原曲: 第2コンセールより
8分の6拍子のゆったりとしたリズムが特徴的な、哀愁漂う美しい楽章です。イタリア起源の舞曲形式ですが、クープランらしい繊細な感情表現が、バズレールの編曲によってチェロの旋律美として際立っています。
記述的なラ・トンプ(La Tromba - 喇叭)原曲: 第10コンセールより
「トロンバ(トランペット)」というタイトルの通り、金管楽器のファンファーレを模した快活な楽曲です。跳躍する音程やリズミカルな動きが、チェロの技巧的な側面を引き出します。
嘆き (Plainte)原曲: 第10コンセールより
タイトルの通り、深く静かな悲しみを湛えた楽章です。半音階的な動きや、溜息をつくようなフレーズが特徴で、チェロの「歌う」能力が最も試される部分と言えるでしょう。
愉快 (Air de Diable - 悪魔の歌)原曲: 第10コンセールより
フィナーレにふさわしい、極めてエネルギッシュで急速な楽曲です。原曲のタイトル「Air de Diable」が示す通り、悪魔的な激しさと推進力を持っており、チェロの力強いボウイングと俊敏な左手の動きによって華やかに締めくくられます。
編曲者のポール・バズレールはフランスのチェリスト・作曲家であり、パリ音楽院で長く教鞭を執った人物です。
彼はクープランやラモーといったフランス・バロックの鍵盤・合奏音楽を、近代的なチェロの奏法に適合させる名手でした。
この「5つの小品」においても、単なる移調にとどまらず、チェロという楽器が持つ音色の対比や、バロック特有の「雅(みやび)」な表現を現代の聴衆に伝えるための優れた再構成が行われています。
ドイツ・バロック演奏の良心
カール・ミュンヒンガーと言えば、かつてはリヒターと並んでバロック音楽の権威と見なされていました。
しかしながら、リヒターがピリオド演奏という激流の中にあってもみくちゃにされながらも、再び評価されて大きな位置を占め続けているのに対して、ミュンヒンガーの方はその激流の中に没してしまったように見えます。
リヒターがミュンヘンの街で「私たちと新しい音楽をしませんか」と呼びかけるビラをまきながら、ミュンヘン・バッハ管弦楽団を創立したのは1953年の事でした。
しかし、ミュンヒンガーがシュトゥットガルトで室内管弦楽団を設立したのは戦争が終わった1945年のことでした。
シュトゥットガルトはドイツの工業の中心でした。そのために、連合国によって徹底的に空爆をされて瓦礫となった街でした。
そんな瓦礫の中で、弦楽器を主体とした10数名程度の団体だったとはいえ、戦争が終わると同時に音楽活動を始めたという事実には驚かされます。
そして、その活動は1948年にドイツを訪れた若きカルショーにも大きな感銘を与えたようです。
シュトゥットガルトで・・・もっとも強烈な印象を受けたのは、5月2日の日曜日の朝に崩れかけたホールで聴いた、カール・ミュンヒンガーと新編成のシュトゥットガルト室内管弦楽団の演奏会だった。ロンドンのボイド・ニールの合奏団のことは深く尊敬はしているけれども、シュトゥットガルトの音楽家たちはまるで別の種類の存在だと思われた。
そして、カルショーはヴィクター・オロフにすぐに録音契約を結ぶように電報を打つのですが、そんな提案は無視されたとも述べていました。
しかしながら、幸いだったのは、その1年後にはオロフによっても「発見」されるので、彼らはめでたく「Decca」と契約を結ぶようになるのです。
この時代の「バロック音楽」の盛り上がりはイムジチ合奏団による「四季」の録音がきっかけのように言われます。
しかし、その下地としてミュンヒンガーなどに代表されるような音楽活動があったようです。実際、「Decca」からリリースされた彼らのレコードは最初からよく売れたようです。
彼らは、当時のバッハ演奏の主流だった「大編成で厚塗りのロマン主義」に真っ向から異を唱えました。
「峻烈で宗教的情熱に満ちたリヒター」に対し、ミュンヒンガーは「知的で均整の取れた客観美」を代表する存在と見なされていました。
しかし、1970年代に入るとピリオド演奏という激流の中で「折衷的で時代遅れ」と批判されるようになった事は最初にふれたとおりです。
とはいえ、ミュンヒンガー達が「DECCAに残した数多くの録音の価をが減じるものではありませんでした。
ミュンヒンガーは、リヒターのような「一世を風靡したカリスマ」ではありませんでした。
しかし、「バロック演奏のスタンダードを数段階引き上げた開拓者」であったことは事実です。
そして、ピリオド演奏に原理主義に取りついた悪夢のような時代が過ぎてみれば、彼らの残した音楽は「モダン楽器によるもっとも洗練されたバロック音楽」としての普遍的な美しさを持っていたことに多くの人が気づいたのです。
劇的なデフォルメを避け、楽譜に誠実に、かつ音楽的な気品を保つスタイルは、ドイツ・バロック演奏の良心だったと言うべきなのかもしれません。
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