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ミシェル・オークレール(Michele Auclair)|ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調, Op.26(Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26)
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調, Op.26(Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26)
(Vn)ミッシェル・オークレール:ヴィルヘルム・ロイブナー指揮 オーストリア交響楽団 1952年1月26日~27日録音(Michele Auclair:(Con)Wilhelm Loibner Austrian Symphony Orchestra Recorded on 1952)
Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [1.Vorspiel: Allegro moderato]
Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [2.Adagio]
Bruch:Violin Concerto No.1 in G minor, Op.26 [3.Finale: Allegro energico]
ヴァイオリンのレッスンをはじめると必ずと言っていいほど取り上げられる協奏曲

今日ではヴァイオリン協奏曲とスコットランド幻想曲、そしてコル・ニドライぐらいしか演奏される機会のない人です。ただし、ヴァイオリニストにとってはこの協奏曲はある種の思い入れのある作品のようです。
と言うのは、ヴァイオリンのレッスンをはじめると必ずと言っていいほど取り上げるのがこの協奏曲であり、発表会などでは一度は演奏した経験を持っているからだそうです。ただし、プロのコンサートで演奏される機会は決して多くはありません。
しかし、ロマン派の協奏曲らしくメランコリックでありながら結構ゴージャスな雰囲気もただよい、メンデルスゾーンの協奏曲と比べてもそれほど遜色はないように思います。
第1楽章
序奏に続いて独奏ヴァイオリンの自由なカデンツァが始まるのですが、最低音Gから一気に駆け上がっていくので聴き応え満点、けれん味たっぷりのオープニングです。力強い第一主題と優美な第二主題が展開されながら音楽は進んでいき、いわゆる再現部にはいるところでそれは省略して経過的なフレーズで静かに第2楽章に入っていくという構成になっています。(・・・と、思います^^;)
第2楽章
ここが一番魅力的な楽章でしょう。主に3つの美しいメロディが組み合わされて音楽は展開していきます。息の長い優美なフレーズにいつまでも浸っていたいと思わせるような音楽です。
第3楽章
序奏に続いて,独奏ヴァイオリンが勇壮なメロディを聞かせてくれてこの楽章はスタートします。。前の楽章の対照的な出だしを持ってくるのは定番、そして、展開部・再現部と続いてプレストのコーダで壮麗に終わるというおきまりのエンディングですが良くできています。
若くして引退してしまったヴァイオリニスト
オークレールはパリ音楽院のブシューリのもとで学んだのですが、同門のヴァイオリニストとしてはジネット・ヌボーとローラ・ボベスコ等がいます。その後、1943年にロン=ティボー音楽コンクールで第一位を獲得してジャック・ティボーの知遇を得ます。ただし、この優勝はナチス占領下のパリではキャリアを広げる切っ掛けとはならず、戦後の45年のジュネーヴ国際音楽コンクールで第一位を獲得したことによってキャリアのスタートを切ります。
その後はアメリカツアー(1951年)もソ連ツアー(1958年)も大成功をさせて世界的な名声を獲得していくのですが、60年代にはいると「左手の故障」を原因として演奏活動から引退してしまいます。
この突然の引退に関しては様々な憶測が飛び交うのですが(ピアニスト、フランソワとの破局とそれに伴う有名な作家の次男との結婚等々)、真相は藪の中です。
そして、その結果として、「女ティボー」とまで言われた才能とキャリアを持ちながら、残された録音は本当に少ないのです。
51年のアメリカツアーに伴ってレミントン・レーベルで録音されたチャイコフスキーの協奏曲とブルッフの協奏曲第1番とコル・ニドライ、クライスラー・アンコールとタイトルが付いた小品集。
エラート・レーベルでのシューベルトのヴァイオリンとピアノのための作品集。
おそらく仏パテでのバッハのヴァイオリンソナタとドビュッシー、ラヴェルのソナタ。
そして、ソリストとしての最晩年(と言っても30代ですが)にフィリップスレーベルでモーツァルトの4番・5番のコンチェルト、チャイコフスキー、メンデルスゾーン、ブラームスの協奏曲。
後は、古い録音(43年録音)ですが、ティボー指揮によるハイドンのコンチェルトが残されています。(ベートーベンのヴァイオリン・ソナタ5番の録音もあるそうですが、未聴です)
これはもう、フェルメール級の少なさでしょうか。(^^;
そして、その演奏なのですが、これもまたこの偉大なヴァイオリニスト達に共通する聡明さに貫かれたものです。
フランス的というのはドイツ的というのと同じくらい、分かったような分からないような表現なので、パリッ子らしい音楽と言い換えた方がより正確なのかもしれません。
フランス人はよく「彼(彼女)はパリの人だから」という言い方をします。それは、パリという街の気質とフランス全体の気質とは随分と異なっている事への皮肉であるようです。
ですから、繊細で楚々とした風情の中に、生粋のパリっ子らしい気の強さみたいなものも時々顔を出すのがオークレールの面白さです。
そして、さらに言葉を足せば、その聡明さはオークレール個人の気質に依拠すると言うよりは、彼女が育ったパリの文化的な厚みがはぐくんだものと言えそうなのです。
ですから、ヌボーのような突き抜けたような強烈な個性は持っていません。
ヌボーの凄さは、そう言う文化的な厚みの中で育ちながらその厚みを突き抜けていったところにあったことを、逆にこのオークレールが教えてくれるような気がします。
だったら、そう言う「お約束事」の中に収まっているオークレールの演奏は物足りなさがあるのかと言われれば、それは一面では「イエス」であり反面では明らかに「ノー」です。
もしも、オークレールにヌボーのような凄みを求めるなら答えは「イエス」なのですが、そんな事はオイストラフを持ってきても答えは「イエス」になってしまうのです。
ですから、普通はきっぱりと「ノー」と言えるのですが、その事はパリという街が持っている文化的な厚みの半端なさを証明します。
彼女が30代半ばでソリストとして引退したのは、そう言う文化的厚みの具現化としてやるべき事はやり尽くしたという思いがあったのかもしれません。そして、それをやり尽くしたならば、次にやるべき事はその文化的厚みを後世に伝えることだったのかもしれません。
そう思えば、引退後はパリ音楽院で後進の指導に人生を捧げたのも納得できます。
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