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アンタル・ドラティ(Antal Dorati) |レスピーギ:鳥
レスピーギ:鳥
ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1957年7月7日、10日録音
Respighi:The Birds P.154 [1.Prelude]
Respighi:The Birds P.154 [2.The dove]
Respighi:The Birds P.154 [3.The hen]
Respighi:The Birds P.154 [4.The nightingale]
Respighi:The Birds P.154 [5.The cuckoo]
繊細な響きが魅力的な音楽
レスピーギは熱烈な古代ローマ帝国の賛美者というアナクロニズムの権化みたいな人だったようです。そして、その性行が歴史に埋もれつつあった17世のイタリア音楽の発掘という作業に向かわせたようです。
モンテヴェルディやヴィヴァルディの作品を校訂して出版なども行ったようです。
そして、そう言う作業の中で発掘してきた作品を下敷きにして、それらを現代的な装いにした管弦楽曲をたくさん生み出しました。
それらの作品はどれもが繊細な響きに彩られており、レスピーギ=ローマの松=ブッチャキサウンドと思っている人には、是非とも一度は聞いて欲しい音楽です。
「鳥」
1.前奏曲
アレグロ・モデラート、イ長調、4/4拍子。
2.鳩
アンダンテ・エスプレッシーヴォ、嬰ヘ短調、3/4拍子。
ドメニコ・ガロのクラブサン曲による。
3.牝鶏
アレグロ・ヴィヴァーチェ、イ短調、3/4拍子。
ジャン=フィリップ・ラモーのクラブサン曲『めんどり』による。
4.夜鶯
アンダンテ・モッソ、ハ長調、3/4拍子。
原曲の作曲者不詳。17世紀のヴァージナルのための楽曲による。
5.郭公
アレグロ、イ長調、4/4拍子。
ベルナルド・パスクィーニ(パスキーニ)のピアノ曲『かっこうの鳴き声をもつトッカータ』(Toccata collo schertzo cuccu )による。
オレはホントはこういう音楽をしたいんだよ
ドラティとマーキュリーレーベルといえば真っ先に思い浮かぶのが、チャイコフスキーの序曲「1812年」です。当時、世界中で200万枚売れたという超ベストセラーであり、このレーベルの録音の素晴らしさを世に知らしめた1枚です。陸軍士官学校のカノン砲がぶっ放され、72個の鐘が壮大に鳴り響くというのがこの録音の売りなのですが、確かにその迫力たるや尋常のものではありませんでした。
しかし、そういうカノン砲や鐘の音ばかりが話題になった録音なのですが、真面目に聴き直してみると意外なほどに演奏が素晴らしいことに驚かされたものです。これほどの高解像度の録音でもほとんど破綻を感じさせないオケの力量は、偉大なるオーケストラトレーナーだったドラティによる鍛錬のたまものでした。
そして、こういう大仕掛けのもとではともすれば緩みがちになり、粗っぽくもなってしまいがちな音楽をキリリと引き締めて、この冗談のような絵巻物を最後の最後まで大真面目に演じきっていました。
おそらくは、レーベルの側からは冗談みたいな音楽を要請されたのでしょうが、その冗談みたいな要請をこなしながらも、最低限の節度は保って音楽として成り立たせているあたりにドラティの良心を感じたものです。
そして、そう言う音楽家としての良心がこのレスピーギの一連の録音には如実に表れています。
オーディオが広く普及し、その「威力」を世に知らしめるためには、レスピーギの管弦楽曲は最適のアイテムでした。とりわけ、ローマの松は極限のピアニッシモから爆発するフォルティッシモまで含んでいますから、まさにオーディマニア御用達の音楽といえました。
ドラティもまた、モノラルの時代に一度、そしてステレオ録音になってからもう一度録音を行っています。
こういう事には聡いカラヤンも58年にはステレオでローマの松を録音しています。すべての楽器が力ずくではなく、しなやかに鳴りきって、その頂点で目も眩むような大爆発を演じて見せたフィルハーモニア管との演奏は実に見事なものでした。
ところが、ドラティの方は、その爆発する部分が意外と大人しいのです。
これを残念と見る向きも多く、そして私もその一人なのですが、どうやら、ドラティという人は最期の最後で「アホ」になることが出来ない人だったようです。当然、やろうと思えばやれたはずなのですが、それをやらないところにドラティという人の本質が潜んでいるように思います。
そして、その事を裏返すと、彼が「鳥」とか「教会のステンドグラス(これはかなりローマ三部作的な音楽ですが・・・))」、「ブラジルの印象」のような、他の人がほとんど取り上げない作品で素晴らしい演奏を聴かせてくれることにつがっています。その事は、ローマ三部作に続く彼の代表作である「リュートのための古風な舞曲とアリア」でも同様です。
レスピーギといえばローマの松に代表されるブッチャキ、スペクタクルサウンドが取り柄のように思われるのですが、そして実際そうでもあるのですが、それ以外にアッピア街道の松に聞ける繊細な響きこそが彼の本領であったように思います。
バロック時代のクラブサンやリュートの音楽を下敷きにした繊細な響きを、実に美しく響かせていくドラティを聞いていると、オレはホントはこういう音楽をしたいんだよ・・・という声が聞こえてきそうです。
自慢のオーディオシステムで爆音を轟かせるのもいいのですが、そういう繊細な響きを楽しむのも悪くない話です。とりわけ、聞く機会の少ない作品でもあるので、今もって貴重な録音だと言えます。
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よせられたコメント 2017-01-25:コタロー レスピーギといえば、膨大なオーケストラを用いた「ローマ三部作」が有名ですが、古楽を題材にした作品の方が清楚で好感が持てます。とりわけ、この「鳥」は可憐で素敵な作品だと思います。今年は酉年なのでもっと見直されていいのではないでしょうか。
ドラティの演奏は清潔感があってこの作品にふさわしいと感じます。
それにしても、ドラティはレスピーギの作品を手広く録音していますね(「ブラジルの印象」のような珍しい曲もあります)。そういえば、70年代にはロッシーニの晩年の小品を題材にしたバレエ音楽「風変わりな店」や「ロッシーニアーナ」を録音していました。
ドラティという指揮者は、レパートリーが大変広いのですが(ハイドンの交響曲全集といった労作もあります)、どの演奏も音楽家としての良心が感じられる水準の高いものです。その意味で得難い指揮者だと思います。
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