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レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)|マーラー:交響曲第8番 「千人の交響曲」
マーラー:交響曲第8番 「千人の交響曲」
レナード・バーンスタイン指揮 ロンドン交響楽団&合唱団 リーズ音楽祭合唱団 他 1966年4月18日~20日録音
Mahler:Symphony No.8 in E-flat major "Symphony of a Thousand" [1.Veni, creator spiritus]
Mahler:Symphony No.8 in E-flat major "Symphony of a Thousand" [2-1.Schlussszene von Goethes Faust]
Mahler:Symphony No.8 in E-flat major "Symphony of a Thousand" [2-2.Schlussszene von Goethes Faust]
Mahler:Symphony No.8 in E-flat major "Symphony of a Thousand" [2-3.Schlussszene von Goethes Faust]
Mahler:Symphony No.8 in E-flat major "Symphony of a Thousand" [2-4.Schlussszene von Goethes Faust]
異形の作品

異形の作品です。
まずは、金管群がばりばりに増強された巨大オーケストラの編成が常識をこえた異形です。ちょと、煩わしいですが、マーラーが指定している編成紹介しておきます。
*弦五部
・第一ヴァイオリン・第二ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ・コントラバス(低いハ音付き)
*木管群(合唱の人数が多い場合は倍増される)
・フルート 4・ピッコロ 複数・オーボエ 4・イングリッシュホルン 1・ピコロクラリネット 複数・クラリネット 3・バスクラリネット 1・ファゴット 4・コントラファゴット 1
*金管群
・ホルン 8・トランペット 4・トロンボーン 4・チューバ 1(離れた場所で(^^;・・・トランペット 4・トロンボーン 3)
*打楽器群
・ティンパニ 3・バスドラム 1・シンバル 3・タムタム・トライアングル・鐘・鉄琴 1
*その他
・チェレスタ 1・ピアノ 1・ハルモニウム 1・ハープ 2・マンドリン 複数
ピアノをオケの編成の中に数え入れていいのかちょっと悩みますがまあいいでしょう。そして、驚くなかれ、ここにさらに
パイプオルガン 1
が追加されます。
これだけの楽器群が一斉に鳴り響く様を想像してください。まさに常軌を逸しています。
ところが、マーラーはこれだけではまだまだ納得がいかなかったようで、さらに人間の声をここに追加しようとします。
考えてみれば分かることですが、中途半端に合唱を追加したのでは巨大なオケの前では霞んでしまいますから、当然の事ながらこちらも巨大化せざるをえなくなります。
マーラーが求めたものは
、
二組の混声合唱と一組の児童合唱、そして8名のソリスト(ソプラノ 3・アルト 2・テノール 1・ バリトン 1・ バス 1)
でした。
そして、この常軌を逸した異形の編成にマーラーが求めたものは、メンゲルベルグに宛てた手紙の中で明確に述べられています。
「大宇宙が響き始める様子を想像してください。それは、もはや人間の声ではなく、太陽の運行する声です。」
たしかに、第2部の終結部に向かって静かに歌い始められた合唱が次第に高揚していき、やがてはなれた場所に配置された金管群がそれにこたえ、ついには全管弦楽とパイプオルガンが一斉に鳴り響いて最後のクライマックスを築き上げていく様は、心のどこかで「虚仮威しだ」と思いつつも、やはり感動させられずにはおられません。
次に、異形なのは作品の構成です。
はたしてこれを交響曲といっていいのでしょうか。
マーラーも、この作品を構成する単位を「楽章」ではなくて「第1部」「第2部」とよんでいますから、合唱とソリストを含んだ編成からいっても「オラトリオ」とよんだ方が相応しいように思われます。
それは、これに続く「大地の歌」が「オーケストラ伴奏付きの歌曲集」とよんだ方が相応しいのとよく似ています。
さらに、その二部構成のつながり具合もパッと見ただけでは意味不明です。困ったことに(^^;、じっくり考えてもよく分かりません。
どう考えても、木に竹をつないだような「ちぐはぐさ」を払拭し切れません。
第1部のテキストとして用いられているのは、賛歌「来たれ、創造主たる聖霊よ」です。これは、中世のエライお坊さんが作った有り難いポエムだそうです。
ところが、これに続く第2部はゲーテのファウストの最後の場面がテキストとして用いられています。
この二つのテキストが一つの作品のなかで、どのようにして有機的なつながりをもつのかがよく分からないのです。ある偉い先生のお説によると、両者はともに「永遠に女性的なるもの」が私たちを救済してくれて天国に導いてくれるというテーマで一貫している!!というのですが、私にはこじつけのようにしか聞こえません。
そうではなくて、おそらくこの作品においても、世界がもっているあるがままの諸相をあるがまに描きとっていくというマーラーの手法が使われていると思った方がいいのでしょう。ですから、一貫したテーマのもとに音楽を構築していると考えて、木に竹をつないだような二つの世界を無理に一つのテーマに括り込むのではなくて、「木は木、竹は竹」ととらえて、「木もあれば竹もあるのがこの世というものよ!」と開き直った方がいいのかもしれません。
とはいえ、その様な音楽のあり方というのは、ベートーベン以降の交響曲の歴史の中においてみると、やはり「異形の存在」と言わざるを得ません。
さらに、この作品はマーラーが生きた同時代において、圧倒的な成功をおさめました。
「やがて、私の時代がくる」と歯がみしながら作品を作り続けたマーラーの生涯を振り返れば、その意味においても「異形」の存在だったといえます。
どれだけ将来に向かって確信を持っていたとしても、「現実の成功」はうれしいものです。「これまでの私の交響曲は、すべてこの曲の序曲に過ぎなかった。」とマーラー自身が述べているのも、その意味では割り引いて受け取る必要があるのかもしれません。
なお、蛇足ながら、この交響曲につけられた「千人の交響曲」というのは、マーラー自身がつけたものではありません。それは、初演の際に演奏者の数が千人を超えたことに注目した興行主が宣伝用のためにひねり出したキャッチコピーでした。マーラー自身はこのネーミングはあまりお気に召していなかったようですが、残念ながら今ではすっかりこの作品の副題として定着してしまいました。
現在では、この作品を演奏するために千人も要したのではとんでもない大赤字になってしまいますから、せいぜい三百~四百人程度で演奏されるのが一般的なようです。
すっきりとした佇まい
ネット上を散見していますと、この録音と演奏を「かなり個性的な解釈」と評価し、それに対して70年代のウィーンフィルとの録音の方を「より真っ当で、はじめて本当のマーラーの姿が明らかとなった」と結論づけておられる方が少なくないようです。
70年代の録音というのは、バーンスタインがドイツ・グラモフォンで再度挑戦したマーラー全集の欠番を埋めるために収録されたザルツブルグ音楽祭のライブ録音のことです。
この70年代の録音は聞いたことがないので何とも言いようがないのですが、60年代の録音が言われるような「個性的な解釈」だとは思えません。聞いてもらえば分かるように、この66年にロンドンで録音された「千人の交響曲」は実にすっきりとした佇まいを見せています。マーラーというのは「粘る」ものであり、それ故に80年代のバーンスタインのような超スローテンポによる「自己陶酔的」なまでの「粘り」こそが「マーラーの本当の姿」なんだと思えば、確かに「個性的な解釈」と言えるかもしれません。
しかし、もしもその様な文脈においてこの録音を「個性的」だと感じたのならば、それは価値判断の基準点がずれていると言わざるを得ません。
確かに、全体としてみればいささか速すぎるテンポ設定かもしれません。とりわけ、最後のクライマックスに上りつめていく「神秘の合唱」はいささか早すぎると思わないわけではありません。しかし、全体としてみれば、これこそが至極「真っ当」な音楽の姿ではないかと私などは思う次第です。とは言え、その辺りの価値判断は人ぞれぞれ、他人がとやかく言う筋合いではないでしょう。
なお、チェックしてみると、この作品は貧弱な録音によるストコフスキーの演奏しかアップしていませんでした。なお、そのストコフスキーの演奏もまた非常にすっきりとした演奏であり悪くはないのですが、この手の作品で1950年のモノラル録音というのはいかにも分が悪すぎます。
もちろん、この1966年のバーンスタインの録音もまたそれほどの優秀録音というわけではありませんが、このオーケストラマジックの極限とも言える世界を始めて世に知らしめたというレベルのクオリティは持っています。
なお、合唱団、およびソリストは以下の通りです。
ロンドン交響楽団&合唱団
リーズ音楽祭合唱団
オービントン・ジュニア・シンガーズ
ハイゲート・スクール少年合唱団
フィンチレー児童音楽グループ
(S)エレナ・スポーレンベルク
(S)グィネス・ジョーンズ
(S)ゲニス・アンニアー
(Aアンナ・レイノルズ
(Aノーマ・プロクター
(T)ジョン・ミッチンソン
(Br)ウラディミール・ルジャーク
(Bs)ドナルド・マッキンタイア
<追記>
第2部は単独で演奏時間が50分を超える巨大さなので、以下のように4分割しています。この第2部は一般的に3つの部分に分かれるのですが、そのまま分割すると切れ目の部分があまりスムーズではないので弱音部で受け渡しができるようにしています。
- 序奏
- 「森の梢揺らぎて靡き寄り(聖なる隠者達の合唱と木霊)」~「いわば蛹のこのかたを(昇天した少年達)」
- 触れることのかなわぬ貴方にも(合唱)
- うつろいゆくものはなべてこれ比喩なるものにすぎず(神秘の合唱)
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