Home|
シューリヒト(Carl Schuricht)|ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調
カール・シューリヒト指揮 北ドイツ放送交響楽団 1954年10月4日録音
Bruckner:交響曲第7番ホ長調 「第1楽章」
Bruckner:交響曲第7番ホ長調 「第2楽章」
Bruckner:交響曲第7番ホ長調 「第3楽章」
Bruckner:交響曲第7番ホ長調 「第4楽章」
はじめての成功

一部では熱烈な信奉者を持っていたようですが、作品を発表するたびに惨めな失敗を繰り返してきたのがブルックナーという人でした。
そんなブルックナーにとってはじめての成功をもたらしたのがこの第7番でした。
実はこの成功に尽力をしたのがフランツ・シャルクです。今となっては師の作品を勝手に改鼠したとして至って評判は悪いのですが、この第7番の成功に寄与した彼の努力を振り返ってみれば、改鼠版に込められた彼の真意も見えてきます。
この第7番が作曲されている頃のウィーンはブルックナーに対して好意的とは言えない状況でした。作品が完成されても演奏の機会は容易に巡ってこないと見たシャルクは動き出します。
まず、作品が未だ完成していない83年2月に第1楽章と3楽章をピアノ連弾で紹介します。そして翌年の2月27日に、今度は全曲をレーヴェとともにピアノ連弾による演奏会を行います。しかし、ウィーンではこれ以上の進展はないと見た彼はライプツッヒに向かい、指揮者のニキッシュにこの作品を紹介します。(共にピアノによる連弾も行ったようです。)
これがきっかけでニキッシュはブルックナー本人と手紙のやりとりを行うようになり、ついに1884年12月30日、ニキッシュの指揮によってライプツィッヒで初演が行われます。そしてこの演奏会はブルックナーにとって始めての成功をもたらすことになるのです。
ブルックナーは友人に宛てた手紙の中で「演奏終了後15分間も拍手が続きました!」とその喜びを綴っています。
まさに「1884年12月30日はブルックナーの世界的名声の誕生日」となったのです。
そのことに思いをいたせば、シャルクやレーヴェの業績に対してもう少し正当な評価が与えられてもいいのではないかと思います。
荒々しく豪快なライブ録音
シューリヒトのブルックナーと言えば、まずは最晩年のウィーンフィルとの8番と9番の録音が思い起こされます。さらに、もう少し詳しい人ならばハーグフィルとの「墨絵のような」と形容された7番の録音を想起されるかもしれません。この両者に共通するのは、巨大性を排したスタイリッシュなブルックナーです。
それは、ひたすら音楽を巨大化させていくクナとは対極にありながら、ブルックナー演奏の一つの典型として高く評価されてきました。
しかし、最近になってシューリヒトのライブ録音が広く流通するようになってきて、彼のスタジオ録音とライブ録音ではかなりスタンスが違うことが指摘されるようになってきました。それは一言では言えば、熱いライブと取り澄ましたスタジオ録音となります。「サラサラ流れていく」と称されることの多いシューリヒトとは別人のような音楽作りがライブからは聞こえてきます。
まず、すぐに分かるのは金管楽器の強奏であり、弦楽器群の分厚い響きです。さらに、テンポの方もサラサラ流れていくどころか、至る所で大胆なギアチェンジが施されています。その結果として聞こえてくる音楽は豪快かつ熱気に満ちたものとなっています。それも、いくつかのライブ録音でその様な「意外な姿」を見せるのではなくて、彼のブルックナーのライブ録音はほとんどその様な熱い音楽になっているのですから、逆にウィーンフィルとのスタジオ録音はいったい何だったんだ?と言う疑問がおこってくるほどです。
ただし、荒々しく豪快な演奏というのは、言葉をかえれば荒っぽい演奏という見方もできます。そして、シューリヒトのライブ録音もシビアに見れば、荒々しさが時に荒っぽさにまでいたっている場面が多々見受けられます。例えば、管楽器の不安定な音程は至る所に散見されます。テンポの急変に追いつけずにオケが必死で追いかける場面も見受けられます。
おそらく、シューリヒトという人は実演ではあまり細かいことを言わなかった人なのでしょう。
ウィーン・フィルのメンバーが、シューリヒトの事を「偉大な老紳士」と呼んだのは、彼の音楽的才能に対する尊敬があったことは言うまでもないでしょうが、そう言う穏やかな人間性に対する親しみもあったのではないでしょうか。とにかく、彼のライブ録音からはオケをコントロールしようという強い意志を感じ取ることは出来ません。ですから、オケのメンバーはシューリヒトが提供する音楽的な霊感に共感しながらもかなり好き勝手に音楽を楽しんでいるような風情が感じ取れます。
一期一会のライブ録音ならば、それはそれで感動的なコンサートになったでしょう。
そう言えば、彼は基本的に客演が主で、最後まできちんとしたオケのシェフにはおさまりませんでした。彼の才能を考えれば不思議な話でありますが、こういう一連のライブ録音を聞くと、なるほど彼にはオーケストラビルドは不向きだったんだと納得せざるを得ません。
<追記>
最近集中してシューリヒトの50年代のライブ録音を聞いてみました。
その中で、この7番が一番丁寧に演奏されているように聞こえます。4番がもっとも荒々しくて、8番も熱気に満ちた演奏になっていますから、人によってはこの7番のおとなしさに物足りなさを感じる人も多いようです。しかし、4番は荒々しさが時に荒っぽさの領域に入り込んでいる部分が多いですし、8番もややその傾向ありですから、この7番の丁寧さは悪くないと思います。
それに次第しだいに感情が盛り上がり、こみ上げてくるような第2楽章はクナにも負けないスケール感を感じます。これで、あちこちでひっくり返る管楽器さえなければと思いますが、まあご愛嬌と言うことで目をつむりましょう
この演奏を評価してください。
- よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
- いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
- まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
- なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
- 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10
941 Rating: 4.9/10 (184 votes cast)
よせられたコメント
2009-09-17:うすかげよういちろう
- どこかの部分がゆるくなることのないきっちりとした演奏だと思います。
この曲の演奏に慣れているのか、それとも、全曲を見通したものすごい集中力なのか・・・
渋い演奏ですが、私は、こういうやり方が大好きです。
極小規模の飲食店を営業していますが、ブルックナーの7番はこの演奏をBGMとして流すことにしました。BGMにしたらファンにしかられるでしょうが。
【最近の更新(10件)】
[2025-02-05]

ハイドン:弦楽四重奏曲第49番 ニ長調「蛙」, Op.50, No.6, Hob.3:49(Haydn:String Quartet No.49 in D major "Frog", Op.50, No.6, Hob.3:49)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1937年11月15日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on November 15, 1937)
[2025-02-03]

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲(Debussy:Prelude a l'apres-midi d'un faune)
グイド・カンテッリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1954年6月録音(Guido Cantelli:The Philharmonia Orchestra Recorded on June, 1954)
[2025-02-01]

ショパン:ノクターン Op.9(Chopin:Nocturnes for piano, Op.9)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)
[2025-01-29]

ダンディ:フランス山人の歌による交響曲, Op.25(D'Indy:Symphony on a French Mountain Air, Op.25)
シャルル・ミュンシュ指揮 (P)ロベール・カサドシュ ニューヨーク・フィルハーモニック 1948年12月20日録音(Charles Munch:(P)Robert Casadesus New York Philharmonic Recorded on Dcember 20, 1948)
[2025-01-26]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 ヘ短調, Op.57(Beethoven: Piano Sonata No.23 In F Minor, Op.57 "Appassionata")
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月4日~5日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 3-4, 1960)
[2025-01-24]

モーツァルト:弦楽四重奏曲 第20番 ニ長調 K499(ホフマイスター四重奏曲)(Mozart:String Quartet No.20 in D major, K.499 "Hoffmeister")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)
[2025-01-22]

ハイドン:弦楽四重奏曲第46番 変ホ長調, Op.50, No.3, Hob.3:46(Haydn:String Quartet No.38 in E flat major, Op.50, No.3, Hob.3:46)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1934年10月30日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on October 30, 1934)
[2025-01-20]

ドビュッシー:海~管弦楽のための3つの交響的素描(Debussy:La Mer, trois esquisses symphoniques)
グイド・カンテッリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1954年9月録音(Guido Cantelli:NBC Symphony Orchestra Recorded on September, 1954)
[2025-01-18]

シューベルト:4つの即興曲 D.935 No.4(Schubert:Four Impromptus, D935 [4.Allegro Scherzando, F Minor])
(P)クリフォード・カーゾン 1952年12月9日~11日録音(Clifford Curzon:Recorded on December 9-11, 1952)
[2025-01-17]

シューベルト:4つの即興曲 D.935 No.3(Schubert:Four Impromptus, D935 [3.Theme and Variations, B Flat Major])
(P)クリフォード・カーゾン 1952年12月9日~11日録音(Clifford Curzon:Recorded on December 9-11, 1952)