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Home|ナット(Yves Nat)|ショパン:舟歌 嬰へ長調 Op.60

ショパン:舟歌 嬰へ長調 Op.60

(P)ナット 1953年3月6日録音



Chopin:舟歌 嬰へ長調 Op.60


二つの舟歌

ほとんど同じ時代に生まれ、同じ時代を過ごし、そして同じ時代に若くして没した二人の音楽家。しかし、その人生は極端に違います。

 メンデルスゾーンは資産家の息子として生まれ、物質的にはこの上もなく恵まれた一生をすごしました。彼の音楽にはそのような幸せな雰囲気をいたるところで聞き取ることができます。もちろん、その内面においては、様々な苦悩はあったでしょうが、この時代の音楽家としては、例外的と言っていいほどの恵まれた一生を送りました。

 それに反して、ショパンの一生は波瀾と激動に満ちたものでした。エチュード「革命」に聞こえる祖国喪失の悲しみ、そして、ジョルジュ・サンドとの「愛と別れ」、そして結核にむしばまれての「のたれ死」同然の最後。
 まさに、悲劇の人生を送ることの多かったロマン派の音楽家の中でも、とりわけ痛苦に満ちた一生を送った人、それがショパンでした。

 この二つの舟歌を聴くと、そんな二人の男の人生が透けて見えてくるような気がします。

 それにしても、ショパンの舟歌のなんと素晴らしいこと!舟歌というのは聴いてもらえればすぐに分かるように、常に揺れ続けるような伴奏音型を持っているのだが、その上で歌い継がれる「歌」の何と美しいことか。
 ユング君はショパンのピアノ曲で一つだけ選べと言われれば、躊躇なくこの一曲を選びます。

 しかし、誤解のないように最後に一言。
 だからといって、メンデルスゾーンがショパンに劣ると言っているのではありません。

 歴史に埋もれていたバッハを再発見し、「マタイ受難曲」の復活をはたしたのは彼です。また、クレンペラー指揮、フィルハーモニア管による交響曲3番「スコットランド」の演奏を聴いてみてください。そのすぐ横に、あのブルックナーの壮大な音楽が佇んでいることがはっきりと分かるはずです。
 メンデルスゾーンの音楽には、そのような後の時代へとつながっていく系譜をしっかり感じ取ることができます。

 それに反して、ショパンは先駆者も持たず、後継者も持たなかった孤立した存在です。
 しかし、天才というものが、軽々しく模倣を許さないが故に後継者を持たないものであるなら、それも仕方のないことです。
 
 その意味で「天才」と呼べ事のできるのは、モーツァルトをのぞけば、あとはショパンただ一人。
 これは確かなことです。


演奏よりは教育に力を注いだ人だったようです。

ベートーベンのピアノソナタと言えばクラシック音楽界で「売れ筋」ですから、一頃は廉価版と言えばシュナーベルかこのナットのものぐらいでした。ですから、よくシュナーベルとナットではどちらが上か?みたいな今から思えば不毛な論議もよくあったような記憶があります。しかし、ソフトの媒体がLPからCDにうつるにつれて様々な廉価版が市場を賑わすようになり、気がつけばいつの間にかシュナーベルもナットも店頭ではあまり見かけなくなりました。しかし、昨年、ナットの没後50年という事もあってかまとまった録音がリリースされました。(だからパブリックドメインということは大切なのです。)

正直言ってナットという人はユング君にとってはそれほどなじみのあるピアニストではありません。ベートーベンのピアノソナタぐらいしか聴いたことがなかったのですが、その時は。華やかなテクニックや演奏効果を狙うのではなくて、一音一音をとても大切にした誠実な演奏をする人だという印象があったものです。その後、このナットという人は演奏活動よりは母校パリ音楽院での教育活動に全力を尽くした人だったことを知り、その様な印象を持ったことに納得したものでした。

このショパンの演奏も、ある意味では「不器用」と言えるほどに愚直に一音一音をガッチリと演奏しています。最初は違和感を感じるほどの「ゴッツイ」感じのする演奏なのですが、それこそがナットという人の音楽なのでしょう。スマートでスタイリッシュなショパン演奏が全盛の今にあって、これはこれでインパクトのあるショパン像です。

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