クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|ビーチャム(Thomas Beecham)|モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」

モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」

ビーチャム指揮 ロンドンフィル 1940年録音



Mozart:交響曲第38番「プラハ」「第1楽章」

Mozart:交響曲第38番「プラハ」「第2楽章」

Mozart:交響曲第38番「プラハ」「第3楽章」


複雑さの極みに成立している音楽

1783年にわずか4日で「リンツ・シンフォニー」を仕上げたモーツァルトはその後3年にもわたってこのジャンルに取り組むことはありませんでした。40年にも満たないモーツァルトの人生において3年というのは決して短い時間ではありません。その様な長いブランクの後に生み出されたのが38番のシンフォニーで、通称「プラハ」と呼ばれる作品です。

前作のリンツが単純さのなかの清明さが特徴だとすれば、このプラハはそれとは全く正反対の性格を持っています。
冒頭部分はともに長大な序奏ではじまるところは同じですが、こちらの序奏部はまるで「ドン・ジョバンニ」を連想させるような緊張感に満ちています。そして、その様な暗い緊張感を突き抜けてアレグロの主部がはじまる部分はリンツと相似形ですが、その対照はより見事であり次元の違いを感じさせます。そして、それに続くしなやかな歌に満ちたメロディが胸を打ち、それに続いていくつもの声部が複雑に絡み合いながら展開されていく様はジュピターのフィナーレを思わせるものがあります。
つまり、こちらは複雑さの極みに成り立っている作品でありながら、モーツァルトの天才がその様な複雑さを聞き手に全く感じさせないと言う希有の作品だと言うことです。

第2楽章の素晴らしい歌に満ちた音楽も、最終楽章の胸のすくような音楽も、じっくりと聴いてみると全てこの上もない複雑さの上に成り立っていながら、全くその様な複雑さを感じさせません。プラハでの初演で聴衆が熱狂的にこの作品を受け入れたというのは宜なるかなです。
伝えられた話では、熱狂的な拍手の中から「フィガロから何か一曲を!」の声が挙がったそうです。それにこたえてモーツァルトはピアノに向かい「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」を即興で12の変奏曲に仕立てて見せたそうです。もちろん、音楽はその場限りのものとして消えてしまって楽譜は残っていません。チェリが聞けば泣いて喜びそうなエピソードです。


ビーチャムの紹介をしておきましょう。

彼は生涯アマチュアの音楽家であり続けました。何故かというと、世界的な製薬会社の御曹司として生まれたビーチャムは「大好きな音楽」でお金を儲ける必要などなかったからです。それどころか、父の財産を相続してからはビーチャム交響楽団を設立してしまったのですから、何ともうらやましい話です。
その後はロンドンフィルを設立して指揮者におさまったり、戦後もロイヤルフィルを組織して、亡くなるまでその指揮者をつとめました。

最近一部の人からデフォルメの大家のように言われていますが、実態はきわめて端正で純粋な音楽づくりをする人だといえます。もし、彼のことを誤った見方でとらえている人がいましたら、ぜひとも彼のモーツァルトやハイドンをお聞きください。
こういう演奏は誰にでも出来そうで出来ないですよ。おそらく音楽で喰っていく必要がなかったからこそなしえた演奏家もしれません。ホントに幸せな音楽を聴かせてくれる人です。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



63 Rating: 4.4/10 (167 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-02-05]

ハイドン:弦楽四重奏曲第49番 ニ長調「蛙」, Op.50, No.6, Hob.3:49(Haydn:String Quartet No.49 in D major "Frog", Op.50, No.6, Hob.3:49)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1937年11月15日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on November 15, 1937)

[2025-02-03]

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲(Debussy:Prelude a l'apres-midi d'un faune)
グイド・カンテッリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1954年6月録音(Guido Cantelli:The Philharmonia Orchestra Recorded on June, 1954)

[2025-02-01]

ショパン:ノクターン Op.9(Chopin:Nocturnes for piano, Op.9)
(P)ギオマール・ノヴァエス:1956年発行(Guiomar Novaes:Published in 1956)

[2025-01-29]

ダンディ:フランス山人の歌による交響曲, Op.25(D'Indy:Symphony on a French Mountain Air, Op.25)
シャルル・ミュンシュ指揮 (P)ロベール・カサドシュ ニューヨーク・フィルハーモニック 1948年12月20日録音(Charles Munch:(P)Robert Casadesus New York Philharmonic Recorded on Dcember 20, 1948)

[2025-01-26]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第23番「熱情」 ヘ短調, Op.57(Beethoven: Piano Sonata No.23 In F Minor, Op.57 "Appassionata")
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月4日~5日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 3-4, 1960)

[2025-01-24]

モーツァルト:弦楽四重奏曲 第20番 ニ長調 K499(ホフマイスター四重奏曲)(Mozart:String Quartet No.20 in D major, K.499 "Hoffmeister")
パスカル弦楽四重奏団:1952年録音(Pascal String Quartet:Recorded on 1952)

[2025-01-22]

ハイドン:弦楽四重奏曲第46番 変ホ長調, Op.50, No.3, Hob.3:46(Haydn:String Quartet No.38 in E flat major, Op.50, No.3, Hob.3:46)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1934年10月30日録音(Pro Arte String Quartet]Recorded on October 30, 1934)

[2025-01-20]

ドビュッシー:海~管弦楽のための3つの交響的素描(Debussy:La Mer, trois esquisses symphoniques)
グイド・カンテッリ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1954年9月録音(Guido Cantelli:NBC Symphony Orchestra Recorded on September, 1954)

[2025-01-18]

シューベルト:4つの即興曲 D.935 No.4(Schubert:Four Impromptus, D935 [4.Allegro Scherzando, F Minor])
(P)クリフォード・カーゾン 1952年12月9日~11日録音(Clifford Curzon:Recorded on December 9-11, 1952)

[2025-01-17]

シューベルト:4つの即興曲 D.935 No.3(Schubert:Four Impromptus, D935 [3.Theme and Variations, B Flat Major])
(P)クリフォード・カーゾン 1952年12月9日~11日録音(Clifford Curzon:Recorded on December 9-11, 1952)