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フランツ・シュミット:ピアノ五重奏曲(Schmidt:Piano Quintet in G major)

バリリ四重奏団:(P)イエルク・デムス 1952年録音(Barylli Quartet:(P)Jorg Demus Recorded on 1952)

Schmidt:Piano Quintet in G major [1.Lebhaft, doch nicht schnell]

Schmidt:Piano Quintet in G major [2.Adagio]

Schmidt:Piano Quintet in G major [3.Sehr ruhig]

Schmidt:Piano Quintet in G major [4.Sehr lebhaft]


左手ピアノのための音楽

フランツ・シュミットはオーストリアの後期ロマン派を代表する作曲で、ブラームスやブルックナーの流れを汲む保守的な美学を追求しつつ、独自の抒情性と構成力を備えた人物でした。
ウィーン・フィルのチェリストとしてマーラーの指揮下で演奏していた経験もあり、ウィーン音楽界の重鎮として活躍しました。

同時代に活動していたシェーンベルクらが無調音楽へと向かう中、シュミットは頑なに「調性」を維持しました。
また、第一次世界大戦で右腕を失ったピアニスト、パウル・ヴィトゲンシュタイン(哲学者ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタインの兄)との関係も見逃せません。
シュミットが遺した主要なピアノ五重奏曲は2曲あり、いずれも「左手ピアノ、2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ」という編成で書かれています。


  1. ピアノ五重奏曲 ト長調 (1926年)
    ヴィトゲンシュタインの委嘱により書かれた最初の五重奏曲です。
    ブラームスの伝統を感じさせる古典的な4楽章構成ですが、シュミット特有の流麗な転調と、どこか懐かしさを覚えるウィーン風の抒情性が横溢しています。
    第3楽章のスケルツォに見られる軽やかなリズムと、終楽章の瑞々しい躍動感です。左手だけとは思えないほどの音の厚みと、弦楽器との親密な対話が楽しめます。

  2. ピアノ五重奏曲 変ロ長調 (1932年)
    シュミットが円熟期に差し掛かった頃の作品で、より深い内省と複雑な美しさを湛えています。
    ト長調に比べて、より半音階的な動きが強まり、シュミット独自の「浮遊するような響き」が際立ちます。
    5つの楽章からなり、中心に置かれた緩徐楽章の深い精神性は、後の交響曲第4番にも通じるものがあります。



ピアノ五重奏曲 ト長調


ブラームスの伝統を受け継ぐ「堅牢な構造」と、シュミット独自の「浮遊するような転調」が最も幸福な形で融合した傑作です。

  1. 第1楽章:Allegro con fuoco(ト長調
    「火のように、快活に」と指示された、力強くも優雅なソナタ形式の楽章です。
    冒頭、ピアノと弦楽器が一体となって提示する第1主題は、上行するアルペジオを基調とした非常にポジティブなエネルギーに満ちています。
    左手ピアノ(オリジナル版)であることを感じさせないほど、音域が広く使われています。
    特に低音の力強い支えが、曲全体にシンフォニックな厚みを与えています。シュミット特有の、絶え間なく移り変わる色彩的なハーモニーが特徴です。
    ト長調という明るい調性にありながら、時折見せる翳りがウィーン的な哀愁を感じさせます。

  2. 第2楽章:Adagio(変ホ長調)
    この五重奏曲の精神的な中心であり、「祈り」のような静謐さに満ちた緩徐楽章です。
    弦楽器が奏でる長い息のメロディは、どこかブルックナーのアダージョを思わせる崇高さを湛えています。
    ピアノは旋律を支えるだけでなく、繊細な分散和音や装飾音を散りばめ、夜想曲のような幻想的な雰囲気を演出します。
    ヴァイオリンやチェロのソロとピアノが対話する場面が多く、室内楽の親密な醍醐味が最も味わえる楽章です。

  3. 第3楽章:Scherzo: Vivace(ニ長調)
    軽快で遊び心に溢れた、ウィーンの洒脱さを象徴する楽章です。跳ねるようなスタッカートと、3拍子の軽妙なリズムが支配的です。
    中間部では一転して、少し落ち着いた抒情的なメロディが現れます。この対比が、ウィーンの社交場のような華やかさを描き出しています。
    ピアノの左手が鍵盤上を縦横無尽に駆け巡る、ヴィトゲンシュタインの超絶技巧が最も際立つセクションでもあります。

  4. 第4楽章:Finale: Vivace(ト長調)
    全曲を締めくくる、輝かしくも技巧的な終楽章です。
    ロンド的な要素とソナタ形式の要素を併せ持っています。シュミットが得意とした対位法(複数の旋律が独立して絡み合う手法)が随所に見られ、密度が高く知的な構成になっています。
    最後に向かってエネルギーが蓄積され、ト長調の明るい響きの中で圧倒的な充足感とともに幕を閉じます。




ウェストミンスターは本当に素晴らしい録音を残してくれました

ウェストミンスターに残されたバリリ四重奏団やウィーン・コンツェルトハウス四重奏団の録音を聞いてみると、今風の演奏比べれば縦の線なんかはかなりいい加減です。さらに、アンダンテやアダージョの楽章なんかになると、いかにもおらが町の音楽はこうなんだ!と言うような土着性(媚び?)を感じさせてくれるます。
言葉をかえれば、ハイドンやモーツァルト、ベートーベン、シューベルト等々の「おらが町」の音楽家の音楽を「おらが風」に演奏してきた伝統を強く感じさせます。
もちろん、「おらが町」ではないシューマンやブラームスであっても、さらにはそれよりも遠い地のドヴォルザークにヤナーチェクに、さらにはレスピーギであっても「ウィーン風」に演奏してしまうのです。

しかし、こういう音楽の形に安易に「ウィーン風」という形容詞を冠するには注意が必要です。

何故ならば、ウィーンにおける戦前の演奏を聴いてみると意外なほどに端正な演奏をしていることが多くて、いわゆるこういう「ウィーン風」の演奏には出会わないという事実があるからです。
そして、私たちが一般的にイメージする「ウィーン風」の演奏というイメージの少なくない部分が、アメリカのウェストミンスターというレーベルによって作られたのかもしれないという「疑惑」が否定しきれないのです。

ウェストミンスターというレーベルがヨーロッパに乗り込んできたのは40年代の終わり頃でした。
第2次世界大戦の傷手は至る所に残っていて、クラシック音楽の世界と言っても未だに立ち直るには時間と金がいる状況だったのです。そして、そう言う危機的な状況だったが故に、ウェストミンスターという新興レーベルがウィーンの音楽界に食い込むことができたのです。

そして、そう言うレーベルから録音の依頼があったときにウィーンの音楽家連中は考えたはずです。
海の向こうのアメリカでは鬼のような即物主義が音楽界を席巻しているらしい、…それならばそれと同じスタイルで勝負するのはどう考えても得策ではない、…当然のことながら、レーベルの方にしても、そんなスタイルの演奏は望んでもいないだろう、…それならば、アメリカとは異なった自分たちのスタイルを前面に押し出すことこそが世界市場で売り出していくための武器だ…(私の妄想ですが^^;)」と考えたはずです。

そして生まれたのが、いわゆる「ウィーン風」の演奏だったのです。(言い切っちゃいます!!)

その「ウィーン風の演奏」とは、今まであまり意識もしていなかった自分たちの独特な演奏スタイルを意識化したものでした。
そして、世界市場で売り出していくための武器として、その意識化した自らの演奏スタイルをよりデフォルメされた形で昇華した演奏スタイルものが「ウィーン風」だったのです。
ですから、私たちが伝統的スタイルと信じてきた「ウィーン風の演奏」とは、マーラーが毛嫌いした「怠惰の別名」としての伝統ではなく、新しく再構築された演奏スタイルにつけられた「戦略的ブランド名」だったのです。

そして、おそらくこの戦略は、その後の歴史を見れば大成功であったことは疑う余地はありません。
ウィーンという町は言うまでもなくハプスブルグ帝国の都として栄えてきた町です。まさに都市の中の都市であり、それ故に、そこに住まう連中は骨の髄までの都市の人間なのです。

そして、本当の意味での「都市の人間」というのは実にこすっからい存在なのです。
白洲正子は京都の人間を「千年のすれっからし」と呼びました。
そして、いわゆる「ウィーン風」の演奏は、そう言うこすっからい連中でなければ表現できない味があることを忘れてはいけません。

バリリ四重奏団やウィーン・コンツェルトハウス四重奏団のメンバーは流石の都会人なのです。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



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