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ミトロプーロス(Dimitris Mitropoulos)|フランク:交響曲 ニ短調(Franck:Symphony in D Minor)
フランク:交響曲 ニ短調(Franck:Symphony in D Minor)
ディミトリ・ミトロプーロス指揮 ミネアポリス交響楽団 1940年1月8日録音(Dimitris Mitropoulos:Minneapolis Symphony Orchestra Recorded on January 8, 1940)
Franck:Symphony in D Minor [1.Lento]
Franck:Symphony in D Minor [2.Allegretto]
Franck:Symphony in D Minor [3.Allegro non troppo]
偉大なるマイナー曲

この屈指の名曲を「マイナー曲」と言えばお叱りを受けそうですが、意外ときいていない人が多いのではないでしょうか?まあCDの棚に一枚か二枚程度は並んでいるのでしょうが、それほどに真剣に聞いたことはないと言う人も多いのではないでしょうか?
名曲というハンコはしっかり押されているにもかかわらず何故か人気はないと言う点で、「偉大なマイナー曲」と表現させてもらいました。
理由はいくつか考えられるでしょうが、まず第一に、フランクが交響曲という分野ではこれ一曲しか残さなかったことがあげられるでしょう。
交響曲作家というのは一般的に多作です。ベートーベンの9曲を代表として、少ない方ではブラームスやシューマンの4曲、多い方ではショスタコーヴィッチの15曲というあたりです。マーラー、ブルックナー、ドヴォルザーク、チャイコフスキー、シベリウスなどなど、誰を取り上げてもそれなりにまとまった数の交響曲を残しました。
それだけにたった1曲しか残さなかったフランクの交響曲は、何かの間違いで(^^;、ポット産み落とされたような雰囲気が漂って「あまり重要でない」ような雰囲気が漂ってしまうのがマイナー性を脱却できない一つの理由となっているようです。
ただ、これは彼の人生を振り返ってみると大きな誤解であることは明らかです。吉田秀和氏がどこかで書いていましたが、60歳をこえ、残りの人生が少なくなりつつある10年間に、それこそねらいを定めたように、一つのジャンルに一作ずつ素晴らしい作品を産み落としたのがフランクという人でした。
そして、交響曲という分野においてねらいを定めてたった一つ産み落とされたのがこの交響曲なのです。
何かの片手間でポッと一つだけ作曲されたのではなく、自分の人生の総決算として、まさにねらいを定めたように交響曲という分野でたった一つだけ生み出され作品がこのニ短調のシンフォニーなのです。
さらにマイナー性を脱却できない第二の理由は作品が持つ「暗さ」です。とりわけこの作品の決定盤として君臨してきたフルトヴェングラーの演奏がこの暗さを際だたせた演奏だっただけに、フランクの交響曲は「暗い」というイメージが定着してしまいました。
たしかに、第一楽章の冒頭を聞くと実に「暗い」事は事実です。しかし、聞き進んでいく内に、この作品の本質がそのような暗さにあるのではなく、じつは「暗」から「明」への転換にあることに気づかされます。
そう、辛抱して最後まで聞いてくれればこの作品の素晴らしさを実感してもらえるのに、多くの人は最初の部分だけで辟易して、聞くのをやめてしまうのです。(実はこれってかつてのユング君でした・・・)
最終楽章の燦然と輝く音楽を聴いたとき、このニ短調の交響曲というのはあちこちで言われるような晦渋な作品ではなく、実に分かりやすい作品であることが分かります。そして、いかにドイツ的な仮面をかぶっていても、この作品は本質的にはフランスの音楽であることも了解できるはずです。
オケの力をフルに発揮させる聞かせ上手
ギリシャ正教の司祭の家系で育った環境や、信じがたいほどの記憶力に恵まれていた数多くのエピソードはミトロプーロスにある種の神秘性を与えました。さらに、ピアニストがお手上げになって逃げ出したプロコフィエフの3番を、急遽ピアノと指揮を同時に引き受けて演奏したとか(今で言うところの弾き振り)、様々な超人的なエピソードに包まれた人物です。
ところが、そういうエピソードがなんだか人間離れしたイメージを自分の中で勝手につくり出してしまったようで、私から彼を遠ざけていたようです。
また、市場に出回っているのがアメリカ時代の古い録音が多かったことも遠ざかる要因だったかもしれません。
しかし、いつまでも食わず嫌いではいけないだろうと言うことで、彼の録音をポツポツと聞き始めました。まずは、SP盤時代の録音であっても非常に音質がいいことに驚かされました。おそらく、かつて聞いた彼の古い録音は正規の復刻盤ではなかったので、その本来の音質がスポイルされていた可能性がありますね。
さらに、あらためて驚いたのは神秘的なイメージどころか驚くほどの「エンターテイメント性」に溢れていたことです。最初に聞いたときに、こんな簡単なことに何故に気づかなかったのでしょうか。
彼の演奏を一言で言えば、驚くほどに聞かせ上手なのです。そして、それがショーソンやボロディン等という今でもかなりマイナーな部類に入る交響曲でも、歌わせるべきところは美しく歌わせ、盛りあげるべきところでは圧倒的な響きで聞き手を慶ばせます。
これが、メンデルスゾーンやシューマン等のそれなりにメジャーな作品になると比較対象が増えるので、ミトロプーロスの聞かせ上手な側面がはっきりと見えてきます。
フランクの交響曲なんてのはどこか避けたい雰囲気が漂うのですが、彼はそれを実にからりと楽しく聞かせてくれます。
聞くところによると、彼はオケに対して常に寛容であり、叱ると言うことをしなかったようです。
確かに、ミトロプーロスは聞かせ上手と言っても作品の構造はしっかりと把握していて、その大きな枠からはみ出すことは絶対にありません。彼のエンターテイメント性は確たる論拠に裏付けられています。
ですから、ミトロプーロスが求めるものはもっと上にあるかと思うのですが、それでもその大きな枠の中からはみ出さない限りは、時にははみ出してしまっていても「それでも仕方がないか」と受け入れている感じなのです。とにかく、オケに無理強いはしない指揮者だったようです。
そして、そう言う寛容な姿勢がオケのやる気と自発性がフルに発揮されて、結果として驚くほどのエンターテイメント性の高い音楽が出来上がっているようなのです。
アメリカを離れた晩年はヨーロッパに活動の場を移すのですが、そんなミトロプーロスがもっとも相性が良かったというのはウィーン・フィルでした。
こういう昔の録音を聞くと、さもありなんと納得した次第です。
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