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アンドレ・クリュイタンス(Andre Cluytens)|ラヴェル:バレエ「マ・メール・ロワ」(Ravel:Ma Mere l'Oye)
ラヴェル:バレエ「マ・メール・ロワ」(Ravel:Ma Mere l'Oye)
アンドレ・クリュイタンス指揮 フランス国立放送管弦楽団 1954年6月26日録音(Andre Cluytens:Orchestre National de l'ORTF Recorded on June 26, 1954)
Ravel:Ma Mere l'Oye [1.Pavane de la belle au bois dormant. Lent]
Ravel:Ma Mere l'Oye [2.Petit poucet. Tres modere]
Ravel:Ma Mere l'Oye [3.Laideronnette, imperatrice des pagodes. Mouvement de marche]
Ravel:Ma Mere l'Oye [4.Les entretiens de la belle et de la bete. Mouvement de Valse. Modere]
Ravel:Ma Mere l'Oye [5.Le jardin feerique. Lent et grave]
ミミとジャンのために作曲されたピアノ連弾曲

もともとは子供のためのピアノ連弾曲として、おとぎ話にもとづく5つの小品として作曲されました。
そして、その子供とは漠然とした対象ではなくて、友人のゴデブスキ夫妻の子供たちであり、さらにはマルグリット・ロンの生徒でもあったミミとジャンを想定してこの作品を作曲されたようです。
そのミミの話によると、ラヴェルがいつもひざの上に自分を乗せて、物語を語ってくれたと語っています。
人格破綻者の群れと言っていいほどの作曲家の世界において、ラヴェルは例外的と言えるほどのいい人だったと多くの人が口を揃えますから、これなどはそう言う「伝説」をさらに補強する証言となるでしょう。
そして、ラヴェルはこの作品を管弦楽曲として編曲していますし、さらには「前奏曲」と「間奏曲」などを付け加えてバレエ音楽ににも仕立て直しています。
バレエ音楽に仕立て直すときには、それら5つの話を一つのストーリーにつなげるための脚本まで書いて編曲をしたようですから大変な力の入れようでした。
もちろん、その背景には、そテアトル・デ・ザールの支配人、ジャック・ルーシェからの依頼があったからなのですが、子供達との楽への思い出が封じ込められている作品への強い愛着もあったのでしょう。
この作品のタイトルはシャルル・ペローの童話集「マ・メール・ロワ(マザー・グース)の物語」からとられています。
しかし、ラヴェルが選んだ物語は「マ・メール・ロワ(マザー・グース)の物語」だけでなく、マリー・カトリーヌ・ドーノワのおとぎ話「緑の蛇」やジャンヌ・マリー・ルプランス・ボーモンの物語集からも選ばれています。
- 第1曲 眠れる森の美女のパヴァーヌ;シャルル・ペローの童話集「マ・メール・ロワ(マザーグース)」から。
- 第2曲 親指小僧:シャルル・ペローの童話集「マ・メール・ロワ(マザーグース)」から。
- 第3曲 パゴダの女王レドロネット:マリー・カトリーヌの「緑の蛇」から。
- 第4曲 美女と野獣の対話:マリー・ルプランス・ド・ボーモン「子供の雑誌、道徳的な物語」から
- 第5曲 妖精の園
モノラル時代の録音があったとは・・・。
クリュイタンスのラヴェル録音と言えば61年から62年にかけてまとめて録音したものが思い浮かびます。あの録音は英コロンビアはが4枚セットの箱入りとして発売したのですが、この初期盤は音の素晴らしさもあって今ではとんでもない貴重品となっているようです。
しかし、あの録音には、今となってはいろいろとエクスキューズがつくようになっています。
そのエクスキューズとは何かと言えば、「オケが下手すぎる」に尽きます。
例えば、歴史的名演と言われる「ボレロ」などを聞けばすぐに気がつくのですが、管楽器があちこちで音を外しています。酷いのになると「酔ったオジチャンが、ろれつがまわっていない」という極めて的確な評価が下されていたりします。
そうなんです、昨今の演奏と録音になれてしまった耳からすればあまりにも緩いのです。
しかし、そこにはフランスのオケが持っているかけがえのない美質と、宿命的に背負わざる得ない弱点が表裏一体になっていました。
フランスのオケというのは、プレーヤー一人一人の腕は確かです。しかし、彼らはその腕を全体のために奉仕するという気はあまり持ち合わせていません。
ですから、リハーサルをしっかりと積み上げて縦のラインをキチンと揃えることにはあまり興味を持っていませんし、そもそもそう言うことに価値を感じないのです。さらに言えば、現在でもフランスのオケのプレーヤーは事前にスコアに目を通すような「面倒くさい」事はやらないようで、慣れていない曲をやるときは変なところで飛び出したりしてもあまり気にしないそうです。
素晴らしい響きで演奏してくれる対価としてアンサンブルの緩さが避けられないというこの二律背反の中にあって、絶妙なバランスでラヴェルを録音したのが件の4枚組セットであり、それはクリュイタンス以外には到底為し得ないわざだったのです。
クリュイタンスという人はそう言うオケの気質を知り尽くして、それをコントロールする術を身につけた人でした。
俺が俺がと前に出たがる管楽器奏者を自由に泳がせながら、それをギリギリのラインで一つにまとめていく腕と懐の深さを持っていました。
結果として、トンデモ演奏になる一歩手前で踏ん張りながら、そう言うフランスのオケならではの美質があふれた演奏を実現できました。
そんなクリュイタンスに、50年代前半にモノラルで録音したラヴェルがあったことに最近気づきとても驚かされました。
そして、その素晴らしさに驚くとともに、新しいものが出てくれば過去の古いものは捨てられてしまうと言うこの業界の罪深さを思わずにはおれませんでした。
モノラル録音で注目すべきは、オーケストラがコンセルヴァトワールのオケではなくて、フランス国立放送管弦楽団だということです。これは非常に大きな意味を持ちます。
それは、フランス国立放送管弦楽団がコンセルヴァトワールのように最初から合わせることに意義を見いださないというオケとはその性質を大きく違えていることです。
それはそうでしょう。
フランス国立放送管弦楽団はその名の通りフランスラジオ放送(RDF)専属のオーケストラとして創立された楽団で、幅広いレパートリーに挑戦する必要のあるオケでした。
ですから、最初から合わせることに意味を感じないというオケではありません。しかも、歴代の指揮者がフランス音楽を得意とした事もあって、フランスのオケならではの色気も色濃く持っています。
アンサンブル的に見れば、疑いもなく60年代のコンセルヴァトワールよりははるかに優れています。おそらく、難点はステレオではなくてモノラル録音だということくらいなのでしょうが、ラヴェルの管弦楽作品にってはその差は小さくありません。
しかし、モノラル録音としては申し分のないクオリティは持っています。そして、スイスの時計職人とよばれたラヴェルの精緻なオーケストレーションを味わうには不足はありません。何といっても、オケの響きそのものがコンセルヴァトワールよりははるかに精緻だからです。
いやはや、おそらく知っている人から見れば今さら何を言っているんだと言うところなのでしょうが、こういう埋もれた録音を発掘して紹介できるのはこういうサイト運営しているもにとっての一番の醍醐味です。
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