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ベートーベン:ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 Op.37(Beethoven:Piano Concerto No.3 in C minor, Op.37 [1.Allegro con brio])

(P)マルグリット・ロン フェリックス・ワインガルトナー指揮 パリ音楽院管弦楽団 1939年6月9日~10日録音((P)Marguerite Long:(con)Felix Weingartner Paris Conservatory Concert Society Orchestra Recorded on June 9-10, 1939)

Beethoven:Piano Concerto No. 3 in C minor, Op. 37 [1.Allegro con brio]

Beethoven:Piano Concerto No. 3 in C minor, Op. 37 [2.Largo]

Beethoven:Piano Concerto No. 3 in C minor, Op. 37 [3.Rondo. Allegro]


新しい世界への開拓

1805年に第3番の協奏曲を完成させたベートーベンは、このパセティックな作品とは全く異なる明るくて幸福感に満ちた新しい第4番の協奏曲を書き始めます。そして、翌年の7月に一応の完成を見たものの多少の手なしが必要だったようで、最終的にはその年の暮れ頃に完成しただろうと言われています。

この作品はピアノソナタの作曲家と交響曲の作曲家が融合した作品だと言われ、特にこの時期のベートーベンのを特徴づける新しい世界への開拓精神があふれた作品だと言われてきました。
それは、第1楽章の冒頭においてピアノが第1主題を奏して音楽が始まるとか、第2楽章がフェルマータで終了してそのまま第3楽章に切れ目なく流れていくとか、そう言う形式的な面だけではなりません。もちろんそれも重要な要因ですが、それよりも重要なことは作品全体に漂う即興性と幻想的な性格にこそベートーベンの新しいチャレンジがあります。

その意味で、この作品に呼応するのが交響曲の第4番でしょう。
壮大で構築的な「エロイカ」を書いたベートーベンが次にチャレンジした第4番はガラリとその性格を変えて、何よりもファンタジックなものを交響曲という形式に持ち込もうとしました。それと同じ方向性がこの協奏曲の中にも流れています。
パセティックでアパショナータなベートーベンは姿を潜め、ロマンティックでファンタジックなベートーベンが姿をあらわしているのです。

とりわけ、第2楽章で聞くことの出来る「歌」の素晴らしさは、その様なベートーベンの新生面をはっきりと示しています。
「復讐の女神たちをやわらげるオルフェウス」とリストは語りましたし、ショパンのプレリュードにまでこの楽章の影響が及んでいることを指摘する人もいます。
そして、これを持ってベートーベンのピアノ協奏曲の最高傑作とする人もいます。ユング君も個人的には第5番の協奏曲よりもこちらの方を高く評価しています。(そんなことはどうでもいい!と言われそうですが・・・)


野暮な音楽なんて演奏したくない

マルグリット・ロンとベートーベンというのはいかにも相性が悪いように見えます。

マルグリット・ロンといえば「ハイ・フィンガー・テクニック」による「ジュー・ベルレ(真珠をころがすようなタッチ)」が持ち味です。
この「ハイ・フィンガー・テクニック」は昨今は至って評判の悪いテクニックであり、とあるピアニストなどは次のように述べています。

僕の育った世代では、その有効性を理解した上で、いわゆる「ハイフィンガー奏法」を教えている人もまだ多くいたようだが、指を器械体操のように上げ下げして音を出すこの奏法は、指を鍛えるという点においての効果はあるものの、実際の曲の中ではあまり使う奏法ではない。僕自身はそういう習い方も弾き方もしていないが、かつて日本でこの奏法がもてはやされていた頃に海外に留学したら、欧米の先生に基礎からやり直されたという話がよくあったように、あくまでも「指を訓練するためのもの」ととらえるべきだと思う。


この「基礎からやり直された」というのはおそらく中村紘子のことでしょう。
しかし、マルグリット・ロンにとって重要なことは「ジュー・ベルレ(真珠をころがすようなタッチ)」によって一音一音が真珠の一粒一粒のように並んでいるかのようなフレーズを作り出すことでした。
しかし、この美しい響きをもたらす演奏法はその見返りとして大きな音を出すには不向きだという弱点を持っています。
もちろん、微妙なタッチにも敏感に反応する昨今のピアノでは、真珠の響きどころかかえって音割れなどをもたらす弊害を克服するのが難しいというもっとわかりやすい問題もあります。しかし、それは個々の技量の問題です。基本的に指の力に頼るマルグリット・ロンの演奏法では大きな音を出すのは難しかったようです。

それに対して、ベートーベンの音楽の重要な肝の一つが「デュナーミクの拡大」でした。とはいえ、これだけでは何のことかわからないですよね。
ベートーベンの特徴は構成要素が執拗に反復、変形される過程で次々と楽器を追加していき、その頂点で未だかつて聞いたことがないような巨大なクライマックスを作りあげることでした。
結果として、ハイドンやモーツァルトの時代には考えられないような、未だかつてない大きさをもった音楽が聴衆の前に現れたのです。そして、その「大きさ」を実現しているのが「デュナーミクの拡大」だったのです。

はい、と言うことで、、このマダム・ロンによるベートーベンのコンチェルトは、聞いているうちに何だかモーツァルトのピアノ・コンチェルトを聞いているような錯覚に陥ります。ですから、こんなのベートーベンじゃない、という声が上がっても全く否定はしません。
しかし、そんなことは言われなくっても、マダム・ロン自身が百も承知のことです。

ベートーベンの音楽はそれ以前の音楽と比べれば「粋」ではないです。それに対して、モーツァルトの音楽は「粋」です。そして、その「粋」はそのままオーストリア帝国が持っていた「粋」そのものでした。
そういう「粋」な世界から見ればベートーベンは「野暮」です。
それは、おかしな例えですが、「江戸の粋」を最後まで理解できなかった「明治の野暮」を思い出させます。
そうなんです、マダム・ロンはその「ジュー・ベルレ」によってベートーベンの中にある野暮をきれいさっぱり洗い流して、オーストリア帝国の「粋」に仕立て直してしまったのです。

でも、それじゃもうベートーベンではなくなってしまうって?
マダム・ロンはきっと言うでしょう、「私は野暮な音楽なんて演奏したくない」って。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



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