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ベートーヴェン:劇音楽「エグモント」序曲, Op.84(Beethoven:Egmont, Op.84)

アルトゥーロ・トスカニーニ指揮 NBC交響楽団 1939年11月18日録音(Arturo Toscanini:NBC Symphony Orchestra Recorded on November 18, 1939)

Beethoven:Egmont, Op.84


尊敬するゲーテから依頼された音楽

この序曲はゲーテの戯曲「エグモント」のために作曲されたものなのですが、今日ではこの序曲だけがよく演奏されます。
音楽全体は序曲と9曲の付随音楽からなり、通して演奏すると40分程度になル、規模の大きな音楽です。


  1. 歌曲: Vivace
    第1幕第3場の民家の場面で、クレールヒェンが糸を巻きながら得意の「兵隊さんの歌」を歌う。

  2. 幕間の音楽1: Andante
    失恋したブラッケンブルグが自殺してしまおうと悩んで幕が下りると演奏される幕間の音楽。

  3. 幕間の音楽2: Larghetto
    エグモントの独白の後に第2幕の幕が下りると演奏される幕間の音楽

  4. 歌曲:Andante con moto
    第3幕第2場でエグモントを待つクレールヒェンが母に向かって歌う歌曲

  5. 幕間の音楽3: Allegro - Marcia
    第3幕の幕が下りると演奏される幕間の音楽で、エグモントからの愛の言葉を喜ぶクレールヘェンの心の余韻を伝える。

  6. 幕間の音楽4: Poco sostenuto e risoluto
    第4幕のエグモントの台詞が終わらないうちに演奏される幕間の音楽。音楽が力なく終了するとそのまま第5幕に進んでいく。

  7. クレールヒェンの死: Clarchens Tod
    第5幕第3場でクレールヒェンが毒をあおって自殺した後に流れる音楽。オーボエが哀しみの旋律を美しく歌い上げる。

  8. メロドラマ:Poco sostenuto
    第5幕の獄中の場で、エグモントのモノローグとともに演奏される音楽

  9. 勝利のシンフォニア: Allegro con brio
    エグモントの最後の台詞「最愛のものを救うために、喜んで命を捨てること、わがごとくあれ」の後に幕が下り始めると演奏される音楽。序曲のコーダと同一の楽曲であるが、こちらが先に完成されたと言われている。



この戯曲に音楽をつけるように依頼したのはゲーテ本人であり、いろいろあっても彼のことを深く尊敬していたベートーベンは喜んでその仕事を引き受けたのです。
ただし、残念ながら戯曲の方はそれほど成功を収めませんでした。その事もあって、今日では序曲だけが演奏される機会が多いと言うことなのでしょう。


強力な斧で真っ二つ

気づいてみると、ベートーベンの一連の序曲をあまりアップしていないことに気づきました。もっとも、序曲ならば一通り紹介しておいてもらえればそれで十分だという人も少なくないでしょう。しかし、マルケヴィチとラムルー管弦楽団による録音を聞きなおして紹介してみると、指揮者とオケによってずいぶん特徴があることに改めて気づかされ、そして、セルやトスカニーニのようなビッグ・ネームの録音を一つも取り上げていないことにも気づくと、やはりもう少し同曲異演の録音を紹介しなければ納得がいかないという気持ちになりました。
もちろん、そんな気持ちになってもらわなくてもいいですという人いるでしょうが、管理人がそう思った以上は少しは我慢しておつきあいください。(^^;

さて、まず最初はトスカニーニです。オケは言うまでもなくNBC交響楽団です。マルケヴィチとラムルー管弦楽団による録音を聞いたときは「思い切り踏み込んでのフルスイング」というイメージがわいたのですが、トスカニーニの場合は「鶏を割くに焉んぞ牛刀を用いん」という言葉が浮かびました。
しかし、まてよ、いかに序曲とはいえベートーベンの音楽を鶏扱いはないだろうということで、これは却下、次に浮かんだのが「強力な斧を用いて巨大な丸太を真っ二つ」というイメージです。
うん、イメージとしてはこちらのほうがぴったりかもしれません。

おそらく、両者の違いは相対しているオケの違いでしょう。
ラムルー管弦楽団の場合は必死でマルケヴィッチの棒についていっています。まさに必死であり、そこから感じ取れるるのはほとばしる汗のにおいです。ただし、高校野球ならばその汗のにおいもドラマの一コマなのでしょうが、プロのエンターテイメントとしてはNGです。聞き手に汗のにおいを感じ取らせてはエンターテイメントとは言えません。
ですから、マルケヴィッチはそこからさらに鞭を入れて「思い切り踏み込んでのフルスイング」というレベルになるまで搾り上げています。
しかし、オケがNBC交響楽団となると、そこからはひとかけらの汗のにおいを感じることはなく、ひたすらその「凄み」のようなものが聞き手に迫ってきます。まさに巨大な丸太をいともたやすく真っ二つに断ち割られるのを聞き手は眼前で見せつけられるのです。

さらに言えば、おそらくは悪名高き8Hスタジオでの録音のせいなのでしょうが、フレーズの最後が短く切り上げられているように聞こえる部分があちこちで見受けられます。それがトスカニーの意図だったのか、もしくは残響に乏しい8Hスタジオのせいなのか判断に苦しみますが、最初は多少の違和感は感じても次第にその切り上げが音楽にとてつもない推進力と凄みを与えているかもしれないなどと感じてきてしまいます。

やはり、ベートーベンの音楽です。指揮者とオケの違いによってその相貌が変わるほどの器の大きさを持っているのです。
ということで、間隔はあけますが少しずつあれこれの序曲の録音を紹介していきますので、まあ、辛抱しておつきあいください。

それから、自明のことであるかのように「悪名高き8Hスタジオ」と書いたのですが、わかる人はわかっても何のことじゃという人も少なくないでしょうから簡単に捕捉をしておきます。
この「8Hスタジオ」というのは、当時のニューヨークのRCAビル内に作られたNBC放送の巨大スタジオのことです。このスタジオ、驚くなかれ、オーケストラが演奏できるスペースがあっただけでなく、1200名を超える聴衆も同時に収容できました。しかし、基本がラジオ放送用に設計されていたため残響が非常に短く、クラシックの演奏会場としては異質な空間でした。
ですからその響きは酷評されることが多かったのですが、なぜかトスカニーニはそのスタジオに文句をつけることもなく、逆にその残響の短い響きを好んだとも言われています。おそらく、トスカニーニはその残響の短さゆえに細かい部分がごまかしなしに響くことを好んだのでしょう。

そして、最近になって、それまで流通していた録音は実際の音よりもさらにデッドになっていたことが分かってきて、本来の音により近い復刻版が出てくることでかつてほどは酷評はされなくなってきています。

この演奏を評価してください。

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