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アンチェル(Karel Ancerl) |リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲, Op.34(Rimsky-Korsakov:Capriccio espagnol in A major, Op.34)
リムスキー=コルサコフ:スペイン奇想曲, Op.34(Rimsky-Korsakov:Capriccio espagnol in A major, Op.34)
カレル・アンチェル指揮:チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1964年12月録音(Karel Ancerl:The Czech Philharmonic Orchestra Recorded on December, 1964) R_Korsakov:Capriccio espagnol in A major, Op.34
古今東西の数ある管弦楽曲の中の最高傑作の一つ
もともとはヴァイオリンのコンチェルト風の音楽として着想された作品ですが、最終的にはヴァイオリン独奏をふんだんに盛り込んだ輝かしいオーケストラ曲として完成されました。構成上は5楽章からなるんですが、連続して演奏されるために単一の管弦楽曲のように聞こえます。ただ、それぞれの楽章はホセ・インセンガなる人の手になるスペイン民謡集から主題が借用されていて(手を加えることもなく、そっくりそのまま!!)、その主題をコルサコフが自由に展開して仕上げる形をとっていますので、5楽章というのはそれなりに意味を持っていると言えます。
第1楽章:アルポラーダ(朝のセレナード)::スペインの輝かしい朝を思わせる派手な音楽です。
第2楽章:変奏曲(夕べの踊り)::第1楽章とは対照的な夕べの穏やかな雰囲気がただよう音楽です。
第3楽章:アルボラーダ::第1楽章と同じ主題ですが、半音高い変ロ長調で演奏され、オーケストレーションも変えられています。(ヴァイオリンとクラリネットが入れ替わっている・・・等)
第4楽章:ジプシーの歌::小太鼓の連打にヴァイオリンの技巧的な独奏とジプシー情緒満点の音楽です。
第5楽章:ファンダンゴ::カスタネットやタンブリンの打楽器のリズムに乗って情熱的な踊りが展開されます。フィナーレはまさに血管ブチ切れの迫力です。
おそらく、古今東西の数ある管弦楽曲の中の最高傑作の一つでしょう。この曲の初演に当たって、練習中の楽団員からたびたび拍手がわき起こってなかなか練習が進まなかったというエピソードも残っているほどです。
チャイコフスキーもこの作品を取り上げて「作曲者自身が現代一流の音楽家であると自認して良いほどの素晴らしい管弦楽法を見せる」と絶賛しています。
こういう作品を前にすると「精神性云々・・・」という言葉は虚しく聞こえるほどです。クラシック音楽を聞く楽しみの一つがこういう作品にもあることをマニアックなクラシック音楽ファンも確認する必要があるでしょう。
クリスタルのごとき
人の日常というのは変わらないものです。私の場合、オーディオのシステムをスイッチ・オンにして音楽を聞くのは殆ど朝のあれこれの作業(洗顔、風呂掃除、朝食、洗濯ものを干す、朝刊を読む・・・等など(^^;)が終わってからお昼過ぎまでの間です。
現役で働いているときはそう言う贅沢な時間は取れるはずもないので、帰宅してあれこれの家事を妻と一緒に片付けて、その後に例え30分でも時間が取れれば幸せだったものです。もしも、1時間程度の時間が取れればそれはもう最高に幸せでした。しかし、幸せと言うのは満たされない部分が多いから感じるもののようで、逆に幸せであるべきはずの時間が潤沢にあると、逆にその幸せ感は薄くなっていくようです。
ホントに、人とは不思議な生き物です。
そして、その不思議故に、さて今日は何を聞こうかと悩むことがおくあります。これも贅沢と言えば贅沢な話なのですが、その選択がもたらす幸せ感は日々薄くなっていきます・・・等と、どうでもいいことをたらたら書いているのですが、そう言う退職後のおじさんによくありがちな日々の中で、ふとアンチェルの録音が目にとまりました。
そう言えば、最近彼の演奏はあまり聞いていないなと言うことで、何気なくシベリウスの一番を聞き、ついでにチャイコフスキーの「白鳥の湖」とか「くるみ割り人形」なんかをアップしました。
ちなみに、私のシステムはPCオーディオなのでプレーヤーはアナログのみです。デジタルの録音はリッピングしたファイルを選んで再生用のパソコンにアップロードするので、感覚的に「セット」ではなくて「アップ」なのです。
まずはシベリウスから聞き始めたのですが、すぐに我が駄耳であってもその演奏に釘付けになりました。
一言で言えば、その透明感溢れる音色と引き締まった構築感は、ちょっと他には思い当たらないものです。シベリウスの一番は彼の交響曲の中ではもっともチャイコフスキーの影響を強く受けているものだと思うのですが、アンチェルの演奏はそう言う音楽の中からもっともシベリウス的なものを結晶化させて、まるでクリスタルの像のようにしあげているのです。
そこにはチャイコフスキー的な甘さのようなものはきれいに払拭されていて、かといって即物的な硬直感とも無縁です。
これは凄いなと思うにつれて、日頃は希薄な幸福感が一気に広がっていきました。
そして、それならばとついでにセットしたリムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」とか「スペイン奇想曲」も聞いてみたれば、これもまた同じような結晶化したクリスタル像です。
そして、「あー、ここにあるのはアンチェルという男の過酷極まる人生が結晶化したものだ」と気づきました。
もちろん、さすがにこれはあまりにも愛想がなさ過ぎるという人もいるでしょう。確かに、シェエラザードが思わず修行僧のように思えるときがありますから。
しかし、アンチェルにとってはこういうエンターテイメント性が前面に出てくる作品でもこのようにしか音楽にすることが出来なかったのでしょう。
アンチェルにとって音楽をすると言うことは、自分だけが生き延びてしまったという自責の念に対するある種の償いだったのかもしれません。もちろん、音楽にその様な文学的要素を持ち込むのは邪道だと言うことは心得ていますが、年を重ねればそう言う戯言も少しは許されるでしょうか。
もちろん、どんな綺麗事をいっても人は食って生きていかねばなりませんから、そこに商業主義的なものが紛れ込んでくることは仕方のないことです。
しかし、今やその大部分が商業主義的なものに染まりきった中で、かつてはその様なものとはほとんど(本当は「全く」と言いたいのですがそこはやや遠慮して)縁のない世界で音楽が成り立っている芸術があったことをこの上もなく明瞭に示してくれるアンチェルの音楽はとても貴重なもののように思えるのです。
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