クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|クーセヴィツキー(Serge Koussevitzky)|ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調, Op.93

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調, Op.93

セルゲイ・クーセヴィツキー指揮 ボストン交響楽団 1936年12月30日録音



Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93 [1.Allegro Vivace E Con Brio]

Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93 [2.Allegretto Scherzando]

Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93 [3.Tempo Di Menuetto]

Beethoven:Symphony No.8 in F major , Op.93 [4.Allegro Vivace]


谷間に咲く花、なんて言わないでください。

初期の1番・2番をのぞけば、もっとも影が薄いのがこの8番の交響曲です。どうも大曲にはさまれると分が悪いようで、4番の交響曲にもにたようなことがいえます。
しかし、4番の方は、カルロス・クライバーによるすばらしい演奏によって、その真価が多くの人に知られるようになりました。それだけが原因とは思いませんが、最近ではけっこうな人気曲になっています。

たしかに、第一楽章の瞑想的な序奏部分から、第1主題が一気にはじけ出すところなど、もっと早くから人気が出ても不思議でない華やかな要素をもっています。
それに比べると、8番は地味なだけにますます影の薄さが目立ちます。

おまけに、交響曲の世界で8番という数字は、大曲、人気曲が多い数字です。

マーラーの8番は「千人の交響曲」というとんでもない大編成の曲です。
ブルックナーの8番についてはなんの説明もいりません。
シューベルトやドヴォルザークの8番は、ともに大変な人気曲です。

8番という数字は野球にたとえれば、3番、4番バッターに匹敵するようなスター選手が並んでいます。そんな中で、ベートーベンの8番はその番号通りの8番バッターです。これで守備位置がライトだったら最低です。

しかし、私の見るところ、彼は「8番、ライト」ではなく、守備の要であるショートかセカンドを守っているようです。



確かに、野球チーム「ベートーベン」を代表するスター選手ではありませんが、玄人をうならせる渋いプレーを確実にこなす「いぶし銀」の選手であることは間違いありません。

急に話がシビアになりますが、この作品の真価は、リズム動機による交響曲の構築という命題に対する、もう一つの解答だと言う点にあります。
もちろん、第1の解答は7番の交響曲ですが、この8番もそれに劣らぬすばらしい解答となっています。ただし、7番がこの上もなく華やかな解答だったのに対して、8番は分かる人にしか分からないと言う玄人好みの作品になっているところに、両者の違いがあります。

そして、「スター指揮者」と呼ばれるような人よりは、いわゆる「玄人好みの指揮者」の方が、この曲ですばらしい演奏を聞かせてくれると言うのも興味深い事実です。


バランスの取れた造形

すでに紹介してある1945年録音のエロイカは実に外連味溢れる、けったいな演奏でした。そして、それ以後に紹介したブラームスの1番も劇場受けを狙ったような演奏で、ちょっとばかり困ったものだと思いながら、それ以後は何故かあれこれに紛れてクーセヴィツキーらしい演奏を紹介することもなく放置してしまっていました。

クーセヴィツキーと言えば「速めのイン・テンポ」が特徴と言われる人だったのですが、あのエロイカやブラームスにはそう言う雰囲気は極めて希薄でした。
しかし、最近になってあらためて彼のベートーベン演奏を幾つかまとめて聞き為してみれば、それらは全て直線的でスッキリした造形が極めて現代的ですら有り、今聞いても全く古さを感じさせない見事なものです。

聞き直してみたのは以下の3曲です。


  1. ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36:1938年12月3日&1939年4月12日録音

  2. ベートーベン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 作品67:ボストン交響楽団 1944年11月23,27日録音

  3. ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93:ボストン交響楽団 1936年12月30日録音



どれもこれも極めて古い録音であり、クーセヴィツキーのもう一つの魅力だと言われた「しなやかでエッジの効いた低声部を大切にし、それを土台として楽器の響きを積み重ねていく」美しさは残念ながら捉え切れていません。
時代の制約で、残念ながらやせ気味の響きで、おそらく実演で聞けばもっと魅力的だろうと思わせられるのですが仕方がありません。

しかし、この推進力に溢れた、極めてバランスの取れた造形はまさにトスカニーニを想起させます。
海の向こうの旧大陸ではフルトヴェングラー、海のこちら側の新大陸ではこういうベートーベンが演奏されていたと思えば、そこに一つの時代の断面を見るお思いがします。

しかし、こうしてクーセヴィツキーらしい真っ当な演奏を紹介できたので少しはホッとしています。
彼の録音ももう少し掘り下げてみなければと感じさせられました。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



5202 Rating: 5.3/10 (65 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント




【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-09-14]

フランク:天使の糧(Franck:Panis Angelicus)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 ロンドン新交響楽団 1961年録音(Rene Leibowitz:New Symphony Orchestra Of London Recorded 1961)

[2025-09-12]

ベートーベン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55「英雄」(Beethoven:Symphony No.3 in E flat major , Op.55 "Eroica")
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年3月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on March, 1961)

[2025-09-10]

ブラームス:弦楽四重奏曲 第1番 ハ短調(Brahms:String Quartet No.1 in C minor, Op.51 No.1)
アマデウス弦楽四重奏団 1951年録音(Amadeus String Quartet:Recorde in 1951)

[2025-09-08]

フォーレ:夜想曲第2番 ロ長調 作品33-2(Faure:Nocturne No.2 in B major, Op.33 No.2)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-09-06]

バッハ:小フーガ ト短調 BWV.578(Bach:Fugue in G minor, BWV 578)
(Organ)マリー=クレール・アラン:1959年11月2日~4日録音(Marie-Claire Alain:Recorded November 2-4, 1959)

[2025-09-04]

レスピーギ:ローマの噴水(Respighi:Fontane Di Roma)
ジョン・バルビローリ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団 1939年1月21日録音(John Barbirolli:Philharmonic-Symphony Of New York Recorded on January 21, 1939)

[2025-09-01]

フォーレ:夜想曲第1番 変ホ短調 作品33-1(Faure:Nocturne No.1 in E-flat minor, Op.33 No.1)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-08-30]

ベートーベン:交響曲第2番 ニ長調 作品36(Beethoven:Symphony No.2 in D major ,Op.36)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年4月20日録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on April 20, 1961)

[2025-08-28]

ラヴェル:舞踏詩「ラ・ヴァルス」(Ravel:La valse)
ルネ・レイボヴィッツ指揮 パリ・コンセール・サンフォニーク協会管弦楽団 1960年録音(Rene Leibowitz:Orcheste de la Societe des Concerts du Conservatoire Recorded on 1960)

[2025-08-26]

フランク:交響詩「呪われた狩人」(Franck:Le Chasseur maudit)
アルトゥール・ロジンスキー指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団 1954年6月27~7月11日録音(Artur Rodzinski:Wiener Staatsoper Orchester Recorded on June 27-July 11, 1954)