クラシック音楽へのおさそい~Blue Sky Label~




Home|カミッロ・ヴァナウゼク(Camillo Wanausek)|ハイドン:フルート四重奏曲 ニ長調 Op.5, No.1, Hob.II:D9

ハイドン:フルート四重奏曲 ニ長調 Op.5, No.1, Hob.II:D9

(Fl)カミッロ・ヴァナウゼク:ヨーロッパ四重奏団のメンバー 1965年発行



Haydn:Flute Quartet in D Major, Op.5, No.1, Hob.II:D9 [1.Presto assai]

Haydn:Flute Quartet in D Major, Op.5, No.1, Hob.II:D9 [2.Adagio]

Haydn:Flute Quartet in D Major, Op.5, No.1, Hob.II:D9 [3.Menuetto]

Haydn:Flute Quartet in D Major, Op.5, No.1, Hob.II:D9 [4.Presto]


「室内楽的ソナタ」への方向性が垣間見える

ネットで中古レコードを物色しているときに思わず目を止めたのがこの作品です。何故かと言えば「ええーっ!ハイドンにフルート四重奏曲なんてあったの?」だったからです。
そこで、手もとのハイドン関係の書籍にあたってみたのですが全く記述はなく、ネットで検索してみると、その投稿主がレコード屋さんで「ハイドンのフルート四重奏曲ありますか」と尋ねると、店員さんに「「ええーっ!ハイドンにフルート四重奏曲なんてありましたか」と言われたという話が紹介されていて、思わず笑ってみました。

まあ、それだけマイナーな作品だと言うことです。
ただし、このフルート四重奏曲は作品6として6曲がワンセットで出版されています。ホーボーケン番号では「Hob.II」を与えられているので、ディヴェルティメントに分類されているようです。そして、No.1とNo.2派偽作の可能性が高い作品として分類されているようです。
「国際楽譜ライブラリー」では以下のように記述されています。

  1. Divertimento in D major, Hob.II:D9

  2. Divertimento in G major, Hob.II:G4

  3. Divertimento in D major, Hob.II:D10

  4. Divertimento in G major, Hob.II:1 (arr.)

  5. Divertimento in D major, Hob.II:D11

  6. Divertimento in C major, Hob.II:11 (arr.)


しかし、聞いてみれば実に優しく暖かく、ハイドンらしい親しみやすい音楽です。
基本的には第1楽章は整然としたソナタ風の音楽で、それに続く第2楽章はどれもが優美な緩徐楽章です。聞き手としては、この美しさが一番魅力的に思えます。
そして、第3楽章はメヌエットで、終楽章は舞曲風という定番スタイルです。この終楽章を軽快に終わらせるのは演奏効果という点でも大きな役割をはたしています。

そして、この作品は彼が仕えていたエステルハージ家のために書かれたものではなくて、どうやらフルート愛好家のアマチュアからの要望で書かれたものらしいのです。
一般的に、宮廷の音楽家というのは宮廷の仕事に集中すべきもので、そう言う「兼業」を行うことは禁止されていたようで、それはまたハイドンも例外ではありませんでした。しかし、ハイドンの作品があちこちで出版され、また筆写譜という形でヨーロッパ各地に広がるにつれ、ハイドンの音楽家としての名声は高まっていきました。
そうなると、ハイドンへの大きな讃辞は、それは同時に彼の雇い主である侯爵自身の権威の向上にも繋がる事に気づいたらしくて、侯爵はハイドンに対して宮廷以外の仕事を行うことを認めるという「特別扱い」をするようになります。

おそらく、このフルート四重奏曲もそういう「特越扱い」の中で生み出された作品なのでしょう。
アマチュアのフルート愛好家が仲間内で演奏して拍手を浴びるように配慮されていて、この作品からは宮廷的な雰囲気は希薄で、その後の時代に繋がる「室内楽的ソナタ」への方向性が垣間見えます。

おそらく、この作品を依頼した人物は大得意でこの作品を演奏したことでしょう。
フルート四重奏曲と言えばまずはモーツァルトを思い浮かべるのが普通なのですが、ハイドンにもこういう優れた作品があったのです。


全く分からない団体です

この録音は独奏フルートに「カミッロ・ヴァナウゼク」、弦楽には「ヨーロッパ四重奏団のメンバー(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ)」と記されているのですが、困ったことにこの両者の正体が全く不明です。かろうじて「カミッロ・ヴァナウゼク」はオーストリア生まれでウィーンなどを中心に活躍した人物らしいことは分かったのですが、録音はほとんど残っていないようです。

「ヨーロッパ四重奏団」に関しては、その大層な名前に反して全く持って正体不明です。Googleで検索してもかすりもしません。もしかしたら、覆面オーケストラならぬ覆面カルテットなのかもしれません。

しかし、演奏は悪くはありません。
フルートのカミッロ・ヴァナウゼクは実に素直な音色で伸び伸びと歌っていて、ランパルの様などこか癖のあるような歌わせ方とは少し異なります。おそらく、こういうアマチュア向けに作曲された作品だと、この様な素直な歌い回しの方が好ましく思えます。
そして、弦楽は作品そのものがフルートを引き立てるようになっていますからあまり表にはしゃしゃり出ないのですが、歌うべき部分では実に優美に美しい響きを聞かせてくれます。
これもまた、実にもって悪くはありません。

買い込んだ中古レコードの盤質も良く、なかなかにいい買い物をしたものだとひとり自己満足しています。

この演奏を評価してください。

  1. よくないねー!(≧ヘ≦)ムス~>>>1~2
  2. いまいちだね。( ̄ー ̄)ニヤリ>>>3~4
  3. まあ。こんなもんでしょう。ハイヨ ( ^ - ^")/>>>5~6
  4. なかなかいいですねo(*^^*)oわくわく>>>7~8
  5. 最高、これぞ歴史的名演(ξ^∇^ξ) ホホホホホホホホホ>>>9~10



5134 Rating: 5.0/10 (114 votes cast)

  1. 件名は変更しないでください。
  2. お寄せいただいたご意見や感想は基本的に紹介させていただきますが、管理人の判断で紹介しないときもありますのでご理解ください
名前*
メールアドレス
件名
メッセージ*
サイト内での紹介

 

よせられたコメント

2022-10-29:yk


2022-10-29:万物流転





【リスニングルームの更新履歴】

【最近の更新(10件)】



[2025-11-30]

チャイコフスキー:マンフレッド交響曲 ロ短調 作品58(Tchaikovsky:Manfred Symphony in B minor, Op.58)
コンスタンティン・シルヴェストリ指揮 フランス国立放送管弦楽団 1957年11月13日~16日&21日録音(Constantin Silvestri:French National Radio Orchestra Recorded on November 13-16&21, 1959)

[2025-11-28]

ベートーベン:交響曲第8番 ヘ長調 作品93(Beethoven:Symphony No.8 in F major ,Op.93)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1961年5月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on May, 1961)

[2025-11-26]

ショパン: ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21(Chopin:Piano Concerto No.2 in F minor, Op.21)
(P)ジーナ・バッカウアー:アンタル・ドラティ指揮 ロンドン交響楽団 1964年6月録音(Gina Bachauer:(Con)Antal Dorati London Symphony Orchestra Recorded on June, 1964)

[2025-11-24]

ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第12番変ホ長調, Op.127(Beethoven:String Quartet No.12 in E Flat major Op.127)
ハリウッド弦楽四重奏団:1957年3月23日,31日&4月6日&20日録音(The Hollywood String Quartet:Recorded on March 23, 31 & April 6, 20, 1957)

[2025-11-21]

ハイドン:弦楽四重奏曲第31番 変ホ長調, Op.20, No1, Hob.3:31(Haydn]String Quartet No.31 in E flat major, Op.20, No1, Hob.3:31)
プロ・アルテ弦楽四重奏団:1938年6月5日録音(Pro Arte String Quartet:Recorded on June l5, 1938)

[2025-11-19]

ベートーベン:ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」 ハ長調 Op.53(eethoven:Piano Sonata No.21 in C major, Op.53 "Waldstein")
(P)ハンス・リヒター=ハーザー 1956年3月録音(Hans Richter-Haaser:Recorded on March, 1956)

[2025-11-17]

フォーレ:夜想曲第6番 変ニ長調 作品63(Faure:Nocturne No.6 in D-flat major, Op.63)
(P)エリック・ハイドシェック:1960年10月21~22日録音(Eric Heidsieck:Recorded 0n October 21-22, 1960)

[2025-11-15]

エドワード・ジャーマン:「ネル・グウィン」(German:Nell Gwyn)
サー・ジョン・バルビローリ指揮 ハレ管弦楽団 1954年3月3日録音(Sir John Barbirolli:Halle Orchestra Recorded on May 3, 1957)

[2025-11-13]

ベートーベン:交響曲第7番 イ長調 作品92(Beethoven:Symphony No.7 in A major , Op.92)
ジョルジュ・ジョルジェスク指揮 ブカレスト・ジョルジェ・エネスク・フィルハーモニー管弦楽団 1962年1月録音(George Georgescu:Bucharest George Enescu Philharmonic Orchestra Recorded on January, 1962)

[2025-11-11]

ベートーヴェン:七重奏曲 変ホ長調, Op.20(Beethoven:Septet in E-Flat Major, Op.20)
バリリ弦楽アンサンブル&ウィーン・フィルハーモニー木管グループ:1954年録音(Barylli String Ensemble:Vienna Philharmonic Wind Group:Recorded on 1954)