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グラズノフ:バレエ組曲「ライモンダ」 op.57

ロヴロ・フォン・マタチッチ指揮 フィルハーモニア管弦楽団 1958年9月録音



Glazunov:Raymonda, Op.53 Suite Act 1

Glazunov:Raymonda, Op.53 Suite Act 2

Glazunov:Raymonda, Op.53 Suite Act 3


ライモンダの思いによって景色が変わる

「ライモンダ」というバレエ自体があまり上演されることがないので、そこからの「組曲」と言うことになるとさらにマイナー度が上がります。
さらに言えば、「組曲」と行ってもグラズノフ自身が仕立てたものではないので、指揮者によって自由に取捨選択されています。

まず最初に、簡単に全3幕からなる「ライモンダ」のあらすじを紹介しておきます。

第1幕


(第1場:ライモンダの祝宴 La fete de Raymonda)
舞台は十字軍時代のフランスのプロヴァンス地方です。主人公の「ライモンダ」は伯爵夫人の姪でその美貌は広く知れ渡っていました。そんななライモンダの誕生祝いのパーティーからお話しは始まります。
そんな美貌のライモンダには婚約者がいました。それが十字軍の遠征を控えたジャン・ド・ブリエンヌで、彼はしばしの別れを惜しみつつライモンダへスカーフを贈ります。
ライモンダは、十字軍に出征するジャンを見送りました。
(第2場:幻影 Visions)
ラ婚約者のジャンの事を思いながら、一人物思いにふけりながらリュートをひいていたライモンダはいつの間にか眠ってしまいます。
そこへ白い貴婦人が現れます。
(第3場:夜明け L'aurore)
白い貴婦人は眠ったライモンダを幻の世界へ連れていきます。
そこでライモンダは婚約者の幻をを見ます。その幻に彼との再会が近いことを感じとったライモンダは喜びを持って彼の幻と踊り始めます。ところが、その幻は突然に消え去り、それどころか、見知らぬ男が現れてライモンダに求愛したのです。
当然の事ながらライモンダは男の求愛を拒むのですが、そうすると白い貴婦人はたちまち消え去ります。
ライモンダは驚いて飛び起き、それは不吉な夢であったことに気づきます。

第2幕:愛の庭園 Cour d'amour


ライモンダが待ちに待ったていたジャンが遠征から帰ってくる火がやってきました。
城では彼の帰還を祝うパーティが開かれ、招かれた客がどんどんやってっくるのですが、肝心のジャンがなかなか到着しません。
すると、そこにサラセンの王子アブデラフマンが登場します。アブデラフマンはライモンダの美貌を聞きつけて、アラブの国からやってきたのでした。

ライモンダはその突然の訪問者を迎えたライモンダは驚いてしまいます。何故ならば、そのサラセンの王子は彼女が夢の中で出会った謎の男とそっくりだったからです。
ライモンダはこのサラセンの王子に不吉な影を感じ彼を追い払おうとするのですが、王子はライモンダに対して熱烈に迫ってきます。そんなところへようやくジャンが到着します。

ジャンは驚いてライモンダに迫るサラセンの王子に決闘を申し込みます。そして決闘の末、ジャンは勝利してサラセンの王子は死んでしまいます。

第3幕:結婚の祝典 Le festival des noces


ようやく結婚の準備が整った二人は結婚式を挙げ、若い二人多くの人に祝福され、物語が終了します。

それから、これはバレエなどではよくあることなのですが、使われる版によってストーリーが変わります。
一番の違いはサラセンの王子に対するライモンダのスタンスです。一般的には彼の求愛に微塵も心が揺るがないので、第3幕の結婚式でも晴れやかな姿でダンスをします。
しかし、その求愛に心が揺るぎ、彼を忘れかねて第3幕での踊りもどこかうつろに感じるという展開もあるそうです。

マタチッチはこのバレエ音楽から以下の曲を選び出して組曲としています。


  1. Act I Scene 1: Introduction - Premier tableau

  2. Act I Scene 1: Lento maestoso

  3. Act I Scene 1: La traditrice

  4. Act I Scene 1: Allegro agitato

  5. Act I Scene 1: Entr'acte

  6. Act I Scene 1: Andante

  7. Act I Scene 1: Prelude

  8. Act I Scene 1: La romanesca

  9. Act I Scene 1: Prelude

  10. Act I Scene 1: Entr'acte

  11. Act I Scene 2: Valse fantastique

  12. Act I Scene 2: Grand adagio

  13. Act I Scene 2: Variation 4

  14. Act I Scene 2: Dance of the Arab boys

  15. Act I Scene 2: Entree des Sarrazins

  16. Act III: Entr'acte




尊ぶべきものが何なのかを考えてみる

マタチッチは日本ではN響との結びつきもあって「ブルックナー指揮者」として高く評価されているのですが、ヨーロッパではほとんど無視されていたために、録音の数はそれほど多くはありません。
しかし、調べてみると、50年代を中心にEMIなどでそれなりの録音は行っています。

ただし、それらの録音はほとんど顧みられることはなく、アナログからデジタルへの移行期においてもCD化されることはなかったようです。そして、それらの録音が少しずつ陽の目を見るようになったのは、それらがパブリック・ドメインになったおかげです。
そしてパブリック・ドメインとなった録音を聞いてみて、まず最初に気づいたのは日本では「偉大なブルックナー指揮者」と思われているのに、50年代のマタチッチが引き受けていた役割は「ロシア音楽」の指揮者だったと言うことです。

これはどう考えても扱いが低いです。
どのレーベルにしてもカタログの本線はベートーベンなどの独襖系の音楽であって、それ故に、そう言う作品にこそ人気と実力のある指揮者を投入します。EMIであれば、それはカラヤンであり、クレンペラーだったわけです。
それにたいして、チャイコフスキーやリムスキー=コルサオフ、グラズノフやバラキレフというロシア系の作品をあてがわれるマタチッチという指揮者の比重はそれほど大きくはないのです。

そして、そう言うライン上でも次第にお呼びがかからなくなった背景には、指示のはっきりしない彼の曖昧な指揮テクニックがあったのでしょう。
50年代後半のフィルハーモニア管と言えば、この時代のオーケストラとしては疑いもなくトップクラスの機能を誇ってたにもかかわらず、彼の指揮の下では何処かモッサリとした印象が拭いきれないものも少なくないのです。

やがて、時代はマタチッチを置き去りにしていき、何処のオーケストラからもお呼びがかからなくなっていきます。
真偽のほどはさだかではありませんが、全く指揮をする場が与えられないために、「ただでもいいから振らせてくれ」と頭を下げて頼みまわっていたという話も伝えられています。そして、これもまた真偽のほどは定かではありませんが、N響の事務局はそんなマタチッチの「ただでもいいから振らせてくれ」という願い(?)にこたえて、伝説となった84年の来日時には犯罪的とも言えるほどの低いギャラで招いたという噂も流布しています。

しかし、中島みゆきではないですが時代はめぐります。

私たちは、管弦楽法の大家たるリムスキー=コルサコフの絢爛豪華な響きを、この上もない精緻さで描き出した演奏と録音をすでに数多く持つようになりました。そして、それは「シェエラザード」だけに限った話ではないのですが、そう言う精緻な演奏を聞き続けている時にこのような田舎びた音楽に出会うと、そこに不思議なほどの好ましさを覚えてしまうのです。
そこには、同時代の指揮者であるショルティやマゼールのような棒による精緻きわまる音楽とは別世界であり、世の多くの人はそう言う音楽を求めたのです。

しかしながら、今という時代にこのような野太く豪快な佇まいでロシア音楽を聞かされると、それは思わぬ拾いものをしたような気にさせられます。そして、時代の大きな流れのなかで、その流れとは異質なものと出会うことは、それを受容するにしろ拒否するにしろ、人の心を大きく動かします。
とはいえ、グラズノフのバレエ音楽「ライモンダ」から何曲かを選び出して組曲にしながら「Grand pas espagnol」を入れていないなどと言うのは不思議な選曲です。
しかし、チャイコフスキーの「主題と変奏」などは滅多に聞けない作品だけに、こういう厚みのある表現で聞かされると惚れ惚れとさせられます。こういう表現の仕方というのは、結局はマタチッチという男の中にある音楽が大きくて分厚いものであることを起因していて、それが晩年のブルックナー演奏に於いて大きく花開いたと言うことなのでしょう。

ですから、こういう「辺境系の音楽」を演奏していた時代と晩年の「偉大なブルックナー指揮者」の時代はその根っこに於いて繋がっていたのです。

もちろん、それはただの年寄りの「懐古趣味」で終わるだけののかも知れません。

しかし、この世の中には「懐古」という言葉以外に「尚古」という言葉もあります。「懐古」と「尚古」は似ていながら全く違う概念です。
「懐古」とは「昔のことをなつかしく思うこと」にとどまりますが、「尚古」とはなつかしむだけでなく、「昔の文物や制度にあこがれ、これらを尊ぶこと」を意味します。
今という時代にあって、こういう演奏を懐かしむだけでなく、尊ぶべきものが何なのかを考えてみることは意味なきことではないのかも知れません。

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