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クーセヴィツキー(Serge Koussevitzky)|ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
ブラームス:交響曲第1番 ハ短調 作品68
セルゲイ・クーセヴィツキー指揮 ボストン交響楽団 1945年2月17日録音
Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op. 68 [1.Un poco sostenuto - Allegro]
Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op. 68 [2.Andante sostenuto]
Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op. 68 [3.Un poco allegretto e grazioso]
Brahms:Symphony No.1 in C Minor, Op. 68 [4.Piu andante - Allegro non troppo, ma con brio - Piu allegro]
ベートーヴェンの影を乗り越えて
![](../Jacket_record/Serge_Koussevitzky/Serge_Koussevitzky.jpg)
ブラームスにとって交響曲を作曲するということは、ベートーヴェンの影を乗り越えることを意味していました。それだけに、この第1番の完成までには大変な時間を要しています。
彼がこの作品に着手してから完成までに要した20年の歳月は、言葉を変えればベートーヴェンの影がいかに大きかったかを示しています。そうして完成したこの第1交響曲は、古典的なたたずまいをみせながら、その内容においては疑いもなく新しい時代の音楽となっています。
の交響曲は、初演のときから第4楽章のテーマが、ベートーヴェンの第9と似通っていることが指摘されていました。それに対して、ブラームスは、「そんなことは、聞けば豚でも分かる!」と言って、きわめて不機嫌だったようです。
確かにこの作品には色濃くベートーヴェンの姿が影を落としています。最終楽章の音楽の流れなんかも第9とそっくりです。姿・形も古典派の交響曲によく似ています。
しかし、ここに聞ける音楽は疑いもなくロマン派の音楽そのものです。
彼がここで問題にしているのは一人の人間です。人類や神のような大きな問題ではなく、個人に属するレベルでの人間の問題です。
音楽はもはや神をたたるものでなく、人類の偉大さをたたえるものでもなく、一人の人間を見つめるものへと変化していった時代の交響曲です。
しかし、この作品好き嫌いが多いようですね。
嫌いだと言う人は、この異常に気合の入った、力みかえったような音楽が鬱陶しく感じるようです。
好きだと言う人は、この同じ音楽に、青春と言うものがもつ、ある種思いつめたような緊張感に魅力を感じるようです。
私は、若いときは大好きでした。
そして、もはや若いとはいえなくなった昨今は、正直言って少し鬱陶しく感じてきています。(^^;;
かつて、吉田秀和氏が、力みかえった青春の澱のようなものを感じると書いていて、大変な反発を感じたものですが、最近はこの言葉に幾ばくかの共感を感じます。
それだけ年をとったということでしょうか。
なんだか、リトマス試験紙みたいな音楽です。
豪快さだけでない音楽作り
これは第2次大戦末期であり、戦争の帰趨はすでに見え始めているものの未だに犠牲者の数も増えていくという中での演奏会です。優秀な録音エンジニアも払拭し、さらにはライブ録音と言うことで、そのクオリティはあまり芳しくありません。
有り体に言えば、ドア一枚を隔てて聞いているような雰囲気なのですが、それでも聞き進むうちにそう言うことは次第に耳が慣れてくるものです。ですから、多少の不満は感じつつも、この上もなく引き締まったクーセヴィツキーの棒によるブラームスを楽しむことは出来ます。
不思議だなと思うのは、こういう戦時下になると録音のクオリティは優秀なエンジニアがいなくなることで低下するのですが、演奏そのものクオリティはあまり変化がないことです。
どうやら、音楽家というのは戦時体制下では「優遇」されるようで、兵隊として駆り出されるよりは音楽を演奏する方がお国のためになると判断される存在だったようです。ですから、このような戦時下にあっても、オーケストラの機能はそれほど低下はしていないようです。
それともう一つ面白いと思うのは、エロイカの時にも感じたことなのですが、クーセヴィツキーは何故か前半の3楽章はザッハリヒカイトに徹して造形しておきながら、最終楽章にはいると結構あれこれと手練手管を使っていることです。ここでも最初はぐっとテンポを落とすのですが、あの有名なテーマが登場すると再びもとのテンポに戻ります。そして、その後はそのテンポを基本的には維持しながら快調に音楽を進めているのですが、よく聞いてみれば微妙にテンポを動かして、最後のクライマックスをより効果的なものにしようとしてしていることに気づかされます。
おそらくは、最後の楽章に力を投入すればもっとも演奏効果が高いという劇場的判断があったのでしょう。
そして、それが事前のリハーサルでどこまで指示されていたのかと言えば、それはかなり疑問です。おそらくは、本番の演奏中に思いついた部分の方が多かったと思うのですが、そう言う無茶なことが平気で出来てしまうのがクーセヴィツキーという男の立ち位置でした。
それにしても、ボストン響というのは、この後にシャルル・ミンシュを音楽監督に迎え入れるのですが、もしかして、どこかにマゾ的体質でもあったのでしょうか。(^^;
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