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Home|セル(George Szell)|ジョージ・セル クリーヴランド管弦楽団 デビュー・コンサート

ジョージ・セル クリーヴランド管弦楽団 デビュー・コンサート

ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1944年11月2日録音



Smetana:The Bartered Bride [1.Overture]

Smetana:String Quartet No.1 in E minor"From My Life"(Arr.George Szell) [1.Allegro vivo appassionato]

Smetana:String Quartet No.1 in E minor"From My Life"(Arr.George Szell) [2.Allegro moderato a la Polka]

Smetana:String Quartet No.1 in E minor"From My Life"(Arr.George Szell) [3.III. Largo sostenuto]

Smetana:String Quartet No.1 in E minor"From My Life"(Arr.George Szell) [4.IV. Vivace]

Richard Strauss:Till Eulenspiegels lustige Streiche, Op.28


セルによるオケの性能試験

ニューヨーク・フィルへのデビュー・コンサートはオケによるセルという指揮者の品定めの場であったとすると、このクリーブランド管へのデビュー・コンサートはセルによるオーケストラの性能試験という雰囲気が漂います。
一般的には1945-46年のシーズンに客演した際に大好評だったから招聘されたといわれていますが、おそらくセルにしてみれば全くのゼロからスタートするような形で自分が理想とするオケを作りあげて率いていきたいという思いはあったはずです。

ですから、そう言う品定めという雰囲気がこのコンサートからは窺えます。
1944年11月2日に行われたそのコンサートのプログラムは以下の通りです。

  1. スメタナ:歌劇「売られた花嫁」より「序曲」

  2. スメタナ:弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」(セル編)

  3. リヒャルト・シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」 作品28


一日のコンサートとしてはあっさりしすぎている感じがするのですが、スメタナの序曲で肩慣らしをしてから、おそらくはぼ初見になるであろうセル編曲による「わが生涯より」にどれくらい対応できるかを見定め、最後にリヒャルト・シュトラウスの交響詩の華やかで精緻なオーケストレーションに何処まで対応できるか・・・と言う感じだったのでしょうか。



理想のオケづくりを求めて

セルはこの翌年のシーズンにも客演指揮を行ったようで、最終的には1946年に人事権も含めた全権を委任されることを条件に音楽監督に就任します。
まわりから見れば、ニューヨーク・フィルの定期演奏会への常連になりつつあったセルが、どうしてクリーブランドのような地方都市の田舎オーケストラの音楽監督を引き受けたのか訝しく思ったことでしょう。

しかし、音楽監督に就任したワン・シーズンで其の真意がはっきりと分かりました。それはよく知られていることですが、セルはそのワン・シーズンで楽団員の3分の2をクビにしてしまったのです。まさに、あのカルロス・ゴーンも真っ青になるような非情な措置でした。
つまりは、この1944年のコンサートのステージにいた楽団員のうち三人に二人が、1946年からのシーズンの間にオケを去ったのでした。
あるモノは、セルが要求する水準に達していないことを理由に解雇を言い渡され、またあるものは過酷をきわめるリハーサルに耐え切れず自主的にオケを去っていったのでした。

おそらく、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」で、その処刑場面で打楽器を担当していた楽員は間違いなくクビになったことでしょう。それ以外にも、管楽器奏者はミスがよく目立ちますから、「ああ、この人もクビになったんだろうな」などと不思議な感情にとらわれてしまう録音でもあります。
そして、弦楽器群にしても、セル編曲の「我が生涯より」などを聞くと、地方の田舎オケならば十分すぎるほどのレベルだと思うのですが、アメリカのトップオケに伍していくだけでなく、それを凌駕していこうとするセルの基準からすれば「望みなし」と判断されたメンバーも多かったことでしょう。

こんな言い方をするとおそらく顰蹙を買うと思うのですが、どうやらすぐれた音楽を生み出すためには「民主主義」はあわないようです。
しかし、独裁する指揮者はあっという間にオケから追い出され、ひたすらにこやかに交通整理するだけの指揮者だけが生き残る今という時代にあっては、セルとクリーブランド管、ライナーとシカゴ響、オーマンディとフィラデルフィア管、さらにはムラヴィンスキーとレニングラード管のような世界は二度と実現しないのでしょう。

それは、オケのメンバーにとっては幸せなことかもしれませんが、これからのクラシック音楽の世界を見すえたときに本当にそれでいいのかと言うことを考えざるを得ません。
とは言え、この後にオケを去った多くの人たちはその後どのような人生を送ったのか、気にならないと言えば嘘にはなるのですが・・・。

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